日本の犯罪史に名を残す“毒婦”と呼ばれる8人の女性を描く “蜘蛛みたいな人”のイメージがきっかけ

日本の犯罪史に名を残す“毒婦”と呼ばれる8人の女性を描く “蜘蛛みたいな人”のイメージがきっかけ

 俳優の仲 万美がプロデュース、劇団「柿喰う客」の中屋敷法仁が脚本・演出を務める「女郎蜘蛛」が2月19日より上演される。

 「全編オールフィメール」でお届けする本作は、高橋お伝、雷お新、花井お梅、白子屋お熊らといった日本の犯罪史・文学史に名を残す、妖しい魅力を持つ女性の重犯罪者“毒婦”と呼ばれる8人の女性たちによる物語。

 仲が主演を務め、蘭舞ゆう、太田夢莉、安川摩吏紗、西葉瑞希、なかねかな、岩佐美咲、永田紗茅らといった個性豊かなキャストが揃った。

 今回初タッグを組むこととなった仲 万美と中屋敷法仁に、タッグを組んだ経緯や毒婦に着目した理由、さらには本作の注目ポイントなどを伺った。

―――今回おふたりが初めてタッグを組むことになった経緯を教えていただけますか。

仲「最初に自分が舞台をプロデュースをしたいと話していた時に、『脚本家・演出家を誰にお願いするか』で悩んでいたところ、スタッフさんから『中屋敷さんはどう?』とご提案いただいて。ものすごくお忙しい方だけど、スケジュールを聞いてみたら、『お願いします』とお返事をいただきまして。中屋敷さんの舞台はよく観ていましたし、ずっと憧れの方だったので、決まった時は嬉しくてバタバタしちゃいました(笑)」

中屋敷「もちろん仲さんのことは知っていたんですけど、舞台を作られるということで、すごく興味があったので、お話をしながら構想を練ったという感じですね」

―――お互いお会いしてどんな印象でしたか?

中屋敷「本当に失礼になってしまうんですけど、仲さんは“蜘蛛みたいな人”だなと思っていました。人間を相手に使うのは良くない言葉かもしれないですけど、糸を張って、いろいろな人を巻き込む感じがあったんです。ご自身のスタイルもそうですし、お会いした際も『蜘蛛が好きだ』とおっしゃっていたので」

仲「自分、蜘蛛大好きなんです‼」

中屋敷「“どういうストーリーを”というよりは、仲さんというパフォーマーから出るイメージが糸を張り巡らせている感じで、そういうところを想像しながら作りました」

仲「蜘蛛みたいだと言われて、嬉しくて泣きそうです‼」

一同「(笑)」

―――他の方から「蜘蛛みたい」と言われたことはありますか?

仲「踊っている時に『蜘蛛みたいだね』とか、殺陣をやっていても『蜘蛛っぽい』とか言われることは、結構あるんですよ」

中屋敷「仲さんに対する蜘蛛のイメージがずっとあったので、『女郎蜘蛛』というど真ん中過ぎるタイトルを出したんですけど、仲さんがめちゃくちゃ怒っていたらどうしようと思って、ずっと『女郎蜘蛛(仮)』のまま、何度かラリーを重ねて、『そろそろいけるかも』と思って、“(仮)”を外すことが出来ました」

仲「最初に『女郎蜘蛛』というタイトルを見た時、めっちゃカッコいいと思っていたんですけど、なかなか(仮)が外れなくて、自分の中では『早く(仮)をなくして‼』って思っていました」

一同「(笑)」

―――仲さんのイメージを経て、今回作られたのが「女郎蜘蛛」となります。8人の毒婦による物語ですが、毒婦を取り上げようと思った理由を教えていただけますか。

仲「自分は“強い女性を演じたい”、“傷つくほど輝く女性を演じたい”という要望を中屋敷さんにお伝えして、考えてくださったのが“毒婦”というテーマでした」

中屋敷「僕がキャラクターを創作するというよりは、既に実在し、さらにいろいろな人や時代の手垢がついた方たちの物語を通して、女性というものがどう扱われてきたか。また女性というものがどういう強さを見せてきたかというのが表現できればいいなと思って作りました。仲さんから“傷つけば傷つくほど輝く女性を演じたい”と伺ったので、仲さんが縛られたり、捕まったり、首を落とされたりするイメージがすぐに思い浮かびました」

仲「首を落とされるって、傷どころじゃないですけどね(笑)。でも本当に想像の斜め上から来たのでビックリしました。まさか“毒婦”というワードが来るとは思っていなかったので」

―――ちなみに、仲さんはどんな役が来ると予想していましたか?

仲「中屋敷さんが考えるものなので、いわゆる定番みたいなものは絶対ないだろうとは思っていました。ぶっ飛んでいるものは来るだろうという予想しかなかったんですけど、ただ「毒婦」は想像の斜め上すぎて、本当に笑いました。『毒婦キターー!』みたいな(笑)。でも自分がやりたいことをすごい考えてくださって、本当に大好きです!」

―――今回の台本を読まれてどのような感想を持たれましたか。

仲「毒婦8人が登場して、タイトルが『女郎蜘蛛』。どんな話になるのか、脚本が全く予想がつかなかったです。クライマックスはどうなるんだろうみたいな。でも読んでみて、笑いやおふざけもあり、遊び心がふんだんに盛り込まれた、すごく賑やかな印象で、シンプルに自分が関わっているとか関係なく、めちゃくちゃ面白いと思いました。『変なの!すごい変!』って。これ褒め言葉です(笑)。自分も含めて、みんながちゃんと役に入り切った時が本当に面白そうだなというゾクゾク感はありましたね」

―――毒婦と呼ばれる人の中からこの8人を選んだ理由は?

中屋敷「やっぱり手垢がついている人が前提ですね。既に物語・小説・歌舞伎・講談の題材になっている人、中でも実際はそうじゃなかったけど、創作されたものが一人歩きしているという、本人のイメージと現実の本人の像がかけ離れている人たちを選びました。あとは、名前がかっこいい人でしょうか。」

―――中屋敷さんは、毒婦を演じる8人のキャストに期待することはありますか?

中屋敷「僕は男性のパフォーマーでもあるんですけど、女性のパフォーマーというものにすごく憧れがあって、本当に私たちが出来ないことや、自分たちが届かない場所、自分たちが見られない世界を見せてくれるというのがあったので。お一人おひとりの個性がとても強いですけど、この個々が糸のように絡み合って、すごいものが生まれるといいなと思っています。取材日がちょうど顔合わせと本読みでしたが、今回ほぼ初共演の人たちばかりで、“仲良し8人組”じゃない緊張感はありました」

―――(取材日)前日は振付の稽古があったそうですね。

仲「はい、まんべんなくみんなと話しかける人もいれば、人見知りの子もいるので『まぁまぁ、それは頑張って糸を張りなさい』とハッパをかけました」

―――本作のキャストビジュアルですが、皆さんとても濃い化粧をしていて、ある意味病んでいるようなメイクが印象的です。

仲「できる限り顔色の悪いメイクをしてくれと言われて。このようなメイクをしない子たちばかりで、本人たちも『わーすごい!』と言ってました(笑)。本人たちも楽しめるし、ファンの方も『こんな姿見たことない』というドキドキ感で楽しめると思うし、やるからにはこれくらい攻めていかなきゃという気持ちですね」

―――「全編オールフィメール」だからこそ心がけていることはありますか?

中屋敷「非常に怖いなと思っています。女性のパフォーマーは1人でも引力があるので、8人が引っ張りあったらどうなるんだろうと。きっとすごいことになると思います。この8人は、いい意味で誰かに寄りかかろうとはしないでしょうし、“自分は自分”みたいな根性の持ち主が多いと思うので、本当に糸の引っ張り合いというか、綱引き状態になりそうです」

仲「自分も同感で、本当に綱引き状態だと思います。女性って実は負けず嫌いで、こんちくしょう精神を持っている人が多いという勝手な印象がありまして。何か言われたり、怒られてもめげずにやり返してやろうみたいな人が多いんじゃないでしょうか。なので中屋敷さんが言った通り、誰かに寄りかかることなく、それぞれが自立して役割を全うしてくれると思います」

―――歌唱シーンやダンスパフォーマンスは、本作の見どころでもあり、必見だと思いますが。

仲「キャスティングの時点で歌唱力が高い人を絶対揃えたかった。なので、皆さん上手です。その歌声で、中屋敷さんが書いた歌詞を歌うシーンは大きな見どころですし、自分が元ダンサーというのもあって、ダンスは徹底的にこだわってやりたかったんです。今回振付師に自分の10年以上の仲であるダンサーさんをお呼びしました。本気のダンスを見せます!」

中屋敷「歌も必見です! 本当に間違いなく。女性というのは歴史の中で虐げられてきていて、歴史に名の残る女性は2種類いて、“誰かの奥さん”、“誰かのお母さん”といった男性の親族。そして今回出てきたような大犯罪者ですね。現代でも、女性がピックアップされる時は、誰かの男性に付随するもの、もしくは本当の悪い女になりますが、この国の歴史を見ると、やっぱり非常にそこに魅力があって。この女性たちは、人間としてはダメな奴らと言いながらも、“その人の人生を見たい”という人間の好奇心をくすぐるのが女性ならではだなと思っていて、私たちが普段あまり感じられない魅力みたいなものを引き出したいなと思っています」

―――本作で登場する8人の毒婦の中で、一番奇想天外な人生を送ったのはどなただと思いますか。

仲「自分は『夜桜お七』が、可愛いのにすごい狂気的というか、愛おしいだけで火をつけちゃうところがすごい怖いなと思っていて。そんなことで火をつけちゃうんだっていう。もちろんみんな理解できないんですけど、お七だけは『なぜ?』という疑問があります」

中屋敷「『夜桜お七』の物語は井原西鶴が書いたんですけど、ただの八百屋さんの娘さんがこんなに歴史に名を残すってすごいですし、令和の時代でも坂本冬美さんが紅白歌合戦で『夜桜お七』を歌うくらいですからね」

仲「曲になるほどインパクトを残しているし、お七にはすごい狂気を感じます。笑顔で『えーい!』って人を殺しそうじゃないですか。そう思ってしまうのも、きっと共感できるからですよね。『あ、ちょっとやっちゃうかも』みたいな感じで」

中屋敷「劇作家としての視点だと『花井お梅』です。自分が犯した殺人を芝居にして、上演してお金を稼いだ女性で、もしも現代だったらどうなっていたんだろうと考えると、興味深いですよね。実際に殺人犯が舞台に上がって、その殺人のシーンを自分でやるんですよ。『本人登場!』って(笑)」

仲「それ観たい!」

中屋敷「観たいですよね。『こいつが、本物の殺人犯だ』って。当時はウケていたでしょうね」

仲「怖っ‼」

中屋敷「怖いですよね。どんなバッシングを受けるかもわからないし、本番では何が起こるかわからないのに、芝居として上演していたというのが。きっと当時は受け入れる文化で見世物として成り立っていたんでしょう。それに花井お梅以外の他の7人は、誰かに脚色された人ですけど、花井だけ唯一主体的というか。出所した時には、既に自分の名前が新聞記事に載って有名人になっていて、『しょうがないから芝居を打ってやろう』という根性がすごいし、顔向けできないからこそ逆にむしろ有名人になったことを利用したというところが根性があるなと思いますし、改めて怖い毒婦ですね」

―――観劇する前に毒婦8人の生涯を調べておくと、毒婦8人の見方が変わるかもしれませんね。

中屋敷「現代の犯罪もそうですよね。事件を見て『あ、こいつ悪い奴だ』と思ったら、ちょっとの情報で『あ、でもこの人も大変だったんだ』とか『この人も仕事がなかったんだ』とか、苦労していたことがわかると、急にコロッと心変わりすることってあるじゃないですか」

仲「そういうところも人間らしいと言えば人間らしいですね」

中屋敷「ただ今回登場する毒婦8人には、そういう同情の余地はないです!」

仲「全力で同情の余地はないと言い切れます‼」

―――ありがとうございます。では最後にこのインタビューをご覧になられている方に向けて、メッセージをお願いします。

仲「今、この時代にこの作品をやることに意味があると思いますし、攻めたダンスと歌と脚本になっていて、多分めったに見られるものではないと思うので、目を凝らして観ていただきたいです。絶対後悔はさせません!」

中屋敷「可愛い女性や愛おしい女性などいますが、本来女性は女郎蜘蛛のように、いろいろなものをどんどん食べていくような恐ろしさを秘めた魅力があるものだと思うので、そういった部分を存分に引き出します。千穐楽が終わった頃には、これ以上出せないぐらいに糸を出し切ると思うので、ぜひこの糸に絡め取られに来てください」

(取材・文:冨岡弘行 撮影:平賀正明)

プロフィール

仲 万美(なか・ばんび)
1992年6月15日生まれ、熊本県出身。俳優。5 歳からダンスをはじめ、20年以上のキャリアを誇る。2015 年にはマドンナのバックダンサーとしてワールドツアーに同行。2019 年に映画『チワワちゃん』で俳優デビュー。主な出演作に、Rock Opera『R&J』、Juliet aria『DustBunnySHOW』、Netflixシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』など。

中屋敷法仁(なかやしき・のりひと)
1984年4月4日生まれ、青森県出身。演出家・脚本家・俳優、劇団「柿喰う客」代表。主な脚本・演出作品に、舞台『文豪ストレイドッグス』シリーズ、『ワールドトリガーthe S tage』シリーズ、『演劇【推しの子】2.5 次元舞台編』、舞台『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』など。

公演情報

女郎蜘蛛

日:2026年2月19日(木)〜23日(月・祝)
場:品川プリンスホテル クラブeX
料:8,500円(全席指定・税込)
HP:https://s-size.co.jp/stage-info/stage/jyorougumo/
問:Mitt tel.03-6265-3201(平日12:00~17:00)

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