新体制のMONO、ベテラン2人が期待する新たな境地 平和な時代に取り残された忍者たちの姿を、笑いに振り切って見せていく「原点」の舞台

 現代社会を巧みに風刺しつつも、おかしな人間模様に笑ってしまうコメディを37年に渡って贈り続けている、京都の劇団「MONO」。31年間在籍していた劇団員・尾方宣久の退団後初となる新作『退屈忍者』は、仕事にあぶれた忍者たちを題材に、よりエンタメ色の強い舞台にするという。劇団主宰で作・演出の土田英生と、旗揚げメンバーの俳優・水沼健に話を聞いた。


土田「2014年に『のぞき穴、哀愁』という、他人の生活を覗き見する男たちの話をやったことがあったんです。自分が社会の真中からどんどん外れていく淋しさを描いた作品でしたけど、あれから10年ぐらい経って、開き直ってまた人生が楽しくなってきた。そこで『のぞき穴……』とは違う角度で、時代から取り残された人たちを書きたいと思いました」

 舞台は、江戸時代始めの小さな村。平和な時代となり、やることがなくなった忍者たちの今後をめぐる物語と、禁断の恋に落ちて結婚したものの、関係が上手くいかなくなった忍者の頭(かしら)と姫君の話が同時に描かれる。

土田「陰謀論のようなものに集団が動かされる様を描きますが、今回は社会に物申すというより、なるべく面白いコメディを作りたい。尾方君が抜けたことで、一瞬パワーダウンした所があるので、勢いのある作品をやった方がいいなと思いました」

水沼「昔メンバーが7人から5人に減った時があるんですけど、それが逆に劇団としてのカラーというか、集団の強さを獲得する機会になったんですよ。それと同じことが、今回も起こるんじゃないかと期待しています」

 俳優たちの軽快なアンサンブルが売りで、「最強のチームプレイ劇団」と称されるMONOだけに、メンバーが1人抜けるのは「非常に大きいこと」(土田)。しかし2018年に加入した4人の若手劇団員が、劇団を続けていく大きな力になったという。

土田「僕らベテランは『頃合いかな』という言葉がよぎったんですけど、若い人たちは『ちょっと待ってください。まだまだ頑張りましょう』ということを言ってくれたんです。もしベテランたちだけだったら、解散していたんじゃないかと。今回のお話も、今の劇団の人間関係が反映された役回りになってくると思います」

 そのベテラン勢の中でも、旗揚げ当初から在籍しているのが、劇作家や大学教授の顔も持つ水沼健。この機会に、2人のコラボが長年続いている理由も聞いてみた。

土田「変な言い方ですけど、水沼がMONOなんです。この人がいなかったら、僕個人の色が強くて、今のMONOという感じの世界にはなっていないと思います。だから『彼はどう考えているか?』みたいなことを、基準にしている所がありますね」

水沼「愉快なものを作ることへのこだわりと、責任感の強さみたいなものが、なかなか他にはお目にかかれない人材だと思います。それぞれの俳優に見せ場を作りつつ、シーンとしての最低限のクオリティを最後まで保つという書き方は、僕にはできない。大学で教える時も『お手本のような作家』と紹介しています(笑)」

 顔ぶれが変化したことで、新たなアンサンブルの芝居が始まるMONO。しかし不安よりも期待の方が大きいと、2人は声をそろえる。

水沼「同じ集団だけど、なんかフレッシュな感覚を得られるんじゃないかと。新しい僕たちの作品になると思います」

土田「今回は『原点に帰ろう』という気分。これが面白くなかったら失速する感じがするので、頑張りどころやなあと思っているし、その意気込みだけはすごくある(笑)。劇団の質が変わるかもしれないというのが、見どころになると思います」

(取材・文&撮影:吉永美和子)

プロフィール

土田英生(つちだ・ひでお)
1967年生まれ、愛知県出身。1989年に劇団「B級プラクティス」(現MONO)を結成。1990年以降全作品の作・演出を担当する。テンポの良い会話で笑いを生み出す群像会話劇を確立し、1999年に『その鉄塔に男たちはいるという』で第6回OMS戯曲賞 大賞、2001年に『崩れた石垣、のぼる鮭たち』(文学座)で第56回芸術祭賞 優秀賞を受賞。ドラマ『崖っぷちホテル!』、『斉藤さん』などの脚本も手掛ける。2020年には自身が監督・脚本を務めた映画『それぞれ、たまゆら』が公開された

水沼 健(みずぬま・たけし)
1967年生まれ、愛媛県出身。1989年に劇団「B級プラクティス」(現MONO)の旗揚げに参加。シリアスからコメディまで幅広い演技で、MONO以外の舞台にも多数招かれる人気俳優に。1998年に演劇ユニット「羊団」で演出家活動を開始し、2004年には作・演出を務める個人ユニット「壁ノ花団」を結成。第1回公演『壁ノ花団』で第12回OMS戯曲賞 大賞を受賞した。近年は演劇活動のかたわら、近畿大学文芸学部教授として後進たちを育成している。

公演情報

MONO 第53回公演『退屈忍者』

日:2026年2月27日(金)~3月8日(日)
  ※他、大阪・福岡公演あり
場:吉祥寺シアター
料:一般4,800円
  ※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
  (全席指定・税込)
HP:https://c-mono.com
問:キューカンバー tel.075-525-2195

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