初演の手応えが決め手で“幕末寝不足お宿コメディ”が再演 お客さんを楽しませることを大切に、俳優の面白さをより際立たせたい

 2024年11月に初めて上演され、前売りチケットが全公演完売となった『寝不足の高杉晋作』が待望の再演。長州藩の命運を賭けた幕長戦争の最中に、忽然と姿を消し、妾の”おうの”と宿でごろごろしている高杉晋作を戦場へと引き戻そうと、坂本龍馬や弟子などが説得を試みる“幕末寝不足お宿コメディ”。
 作・演出は佐藤慎哉が担当し、主人公の高杉晋作役には奥谷知弘が初演に続いて出演する。新キャストとして坂本龍馬を演じる畑中智行(演劇集団キャラメルボックス)、おうの役の太田奈緒、それに佐藤慎哉の3名に意気込みや注目ポイント、さらにはタイトルにちなんで睡眠にまつわるエピソードを聞いた。


―――2024年の初演から約1年3か月という短い間隔で再演となりますが、上演を決めた経緯を教えていただけますか。

佐藤「初演を終えて、強い手応えを感じました。劇場でお客さんの反応が良かったのと、自分的にも納得のいく作品ができたというのもありましたし、チケットが取れない人もいらっしゃったので、すぐ再演をやろうと決めました」

―――お客さんの反響はいかがでしたか。

佐藤「かなりありました。囲炉裏から俳優が出てくるシーンがあるんですけど、そこがこの作品の肝でもあって、狙った反応が出た時はすごく嬉しかったです」

―――“幕末寝不足お宿コメディ”という唯一無二のジャンルであろうこの作品を作ろうと思ったきっかけは?

佐藤「僕、もともと幕末が好きで、いつか書きたいと思っていました。かつ、高杉晋作の辞世の句である『面白きこともなき世を面白く』がすごく好きで、『面白くない世界を面白くしてやろうじゃないか』という高杉晋作の人生のテーマみたいなのも感じられて、その辞世の句を表現したくて作りました。
 井上ひさしさんの本が好きで、井上ひさしさんが年表を細かくバーッと書いて、空白があるからそこを物語にするという記事を読んで、高杉晋作の年表を見ると、結核が発覚してから数日間は空白になっていて、その期間は何をしていたんだろうと思いながら脚本を書いたんです」

―――新キャストとして出演される畑中さんと太田さんですが、出演の話が来た時の心境はいかがでしたか。

畑中「日本の劇団『十二人の怒れる男』という舞台で、アナログスイッチの秋本(雄基)くんと共演させていただいたんですけど、稽古中から秋本くんがめちゃくちゃ面白いんですよ。パフォーマンスも面白いし、人としても面白くて、みんなに愛されていました。アナログスイッチという劇団に所属しているということで、きっといい団体なんだろうなと思っていたら、公演が終わったあとに、秋本くんから『もしよかったら一緒にやりませんか』という連絡が来たので、ほぼ二つ返事で『ぜひお願いします!』ということで出演が決まりました。
 舞台を実際に観に行かせていただいたり、公演映像を拝見したりして、お客さんを楽しませるということが第一にあるというところや、お客さんへの向き合い方がキャラメルボックスと結構似ていると思ったんですよ。僕らも劇団では『役者であると同じくらいエンターテイナーであれ』とよく言われていて、アナログスイッチさんもそれをすごく体現している団体と作品だと思ったので、ものすごく楽しみです」

佐藤「本当にありがとうございます。僕らもお客さんを楽しませることを大切にしているので嬉しいです!」

畑中「どんな稽古をされているのか、すごく楽しみです。昭和のゴリゴリの稽古だったらどうしようかと」

一同「(笑)」

太田「初演の舞台映像を観させていただいて、私自身歴史がすごく苦手で、話に入れるのか不安でしたが、すごく笑いましたし、あっという間に過ぎました。“おうの”という実在した方がこのストーリーでどう描かれたのかなと思っていたので、先程佐藤さんが話された“空白の数日間”の中で考えられていたんだというのを聞いて、とてもワクワクして、これからどんな稽古になるんだろうという気持ちですごく楽しみです」

―――映像で初演をご覧になったということで、どんな感想を持たれましたか。

太田「さっき佐藤さんがおっしゃっていた、囲炉裏から出てくるところは本当にめちゃくちゃ面白かったですし、『高杉晋作の気持ちが少しでも傾いて欲しい』とみんなで知恵を絞るシーンは、人と愛の繋がりが見えてすごく好きでした」

畑中「普通の時代劇や幕末ものの作品では、主人公が行動して周りを巻き込んでいくストーリーが多いと思うんですけど、この作品は主人公は動かず周りが迎えに来るという逆のスタンスになっているのがまず面白いですね。
 それでちゃんと笑って感動できる仕組みになっているのは、もちろん物語の展開も素晴らしいですけど、芝居を構築している俳優陣のバトンの繋げ方がすごく良くて、誰が前に出るというわけでもなく、みんなで細かくバトンをしっかり回して、作品自体を盛り上げていく雰囲気が、俳優としてとても感動しました」

佐藤「三谷幸喜さんの『巌流島』という作品があって、役所広司さん演じる宮本武蔵が巌流島に行かなくて、佐々木小次郎が宿まで迎えに行くところから始まる物語ですけど、俳優の力ってすごいと思いました。今回の始まり部分は『巌流島』をちょっとオマージュしています」

畑中「いい作品にはいろいろ要素があると思うんですけど、見せ方と誰が演じているかというのはすごい大事だなと思って、演じる俳優やキャラクターに興味があると、お客さんはついてくるんですよね。僕が一番好きな要素がたくさん入っているのがこの作品でしたし、お客さんのニーズが高かったというのもすごく頷けるので、きっと再演もいっぱいになると思います」

―――先程、畑中さんが「アナログスイッチとキャラメルボックスは似ている」と話されていましたが、太田さんはアナログスイッチにどんな印象を持たれていますか。

太田「お客さんを楽しませるというところはとても印象に残りました。歴史が苦手な私でも、スッとお名前も入ってきて、すごく分かりやすく理解がしやすかったですし、加えてテンポがすごくて、あっという間にストーリーが入ってくるような展開の流れがとても面白かったです」

佐藤「お客さんを置いてけぼりにしないことは、私もすごく気をつけていることですし、特に今回は“高杉晋作”と名前は有名だけど何をしたかあまり知られていない人物なので、分かりやすかったと言っていただけたのは、とても嬉しいです」

―――再演ということで、具体的にこういうところをボリュームアップしていきたいというプランはありますか。

佐藤「美術は大きく変わる予定で、それに加えて畑中さんが話されていた“俳優のキャラクターの面白さ“はより際立たせたいなと思っています。物語だけじゃなくて、そこに俳優が目の前にいるという舞台の醍醐味として、『この俳優さんだから面白い』ということを今後の劇団の活動としても際立たせたいです」

―――畑中さんと太田さんは“初めてこの作品をご覧になる方”向け、佐藤さんには“初演をご覧になった方”向けに、それぞれ注目ポイントを教えていただけますか。

畑中「今いろいろなエンターテインメントやサブスクなどがたくさんあって、映画ですら映画館に行くのにパワーがいるという中で、お芝居に来ていただくことも結構なパワーが必要で、まだお芝居自体に触れたことがない方も非常に多いと思うんですよ。
 でも、ディズニーランドには皆さん行くんですよね(苦笑)。『朝早くから舞浜まで時間を割いてわざわざ移動するのは、それなりの楽しみがあるから行く』という意味でいうと、今回はエンターテインメント作品ですし、誰が観ても楽しめる作品だと思うので、お芝居というものをちょっと体験していただくには、すごく適した作品だなと思います。
 一度来ていただいて合わなかったら仕方がないんですけど、舞台を体験しに来ていただくにはすごく適している作品なので、お芝居を観たことない人にぜひ来ていただきたいです」

太田「私のような歴史上のお名前だけで身構えてしまうタイプの方にもぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。初演を観た時に、本当に一人ひとりのキャラクターが可愛くて、最後は愛おしく感じたので、私もそういう”おうの”を作れたらいいなと思いますし、映像で見る感動とはまた違う感動がきっと感じられると思います」

佐藤「前回観てもらって面白かった人は、その面白さはそのままに、それ以上の面白さを今回アップデートして届けられたらなと思っています。初演から続投のキャストは、より面白さを足してくると思いますし、新キャストの皆さんは力のある方ばかりで、キャラクターの面白さと、俳優自身の面白さを味わって欲しいです。
 コメディは俳優力が試されるので、簡単そうにふざけてるように見えて実はものすごい技術が要ります。それぞれの俳優さん自身の魅力も見て欲しいですね」

―――本作のタイトルが『寝不足の高杉晋作』ということで、睡眠についていろいろ聞いてみたいと思います。ちなみに皆さんは普段何時間ぐらい睡眠を取られますか。

佐藤「パフォーマンスが落ちないように、睡眠時間だけは確保するようにしていて、なるべく8時間は寝るようにしています。作家の角田光代さんと以前飲んだ時に、『昔は睡眠時間を削って小説を書くのに憧れたけど、私たちには無理だね』ということで、ちゃんと寝ようという協定を結んでから、ちゃんと寝るようになりました」

畑中「僕はだいたい6時間ぐらいです。完全な夜型人間で、やることは全部夜にやっちゃいます。6時間は短いと思われるかもしれませんが、忙しいと楽なんですよ。暇な時間を作るのがあまり好きではなくて、考えなくていいことで不安になるタイプですし、忙しくしている方がすごくリズムがいいんです」

太田「私は7時間ぐらいがちょうど良いですね。今“謎解きゲーム”にハマっているんですけど、考えているとだんだん眠たくなります(苦笑)。それと趣味がランニングで、寝られない時は、次の日にランニングをしたらよく寝られます。」

―――何キロぐらい走られますか?

太田「10㎞ぐらい走ります」

佐藤「10㎞すごいな!!」

―――ちなみに畑中さんと佐藤さんは、寝られない時どうしていますか?

畑中「『寝られない時は寝ない方がいい』と池上彰さんが言っていたから、眠くなるまで待つようにしています。ストレスになるので」

佐藤「結婚してからサイクルが安定したこともあって、最近寝られないことがなくなったんですよ。寂しがり屋なので、独身時代は寂しさで寝られないことがよくあって(苦笑)。あっ、でも新聞を読んでいると眠くなりますね」

―――ありがとうございます。是非読者の方で睡眠不足だと感じている方は実践してみてください。最後にこのインタビューをご覧になっている方に向けてメッセージをお願いします。

畑中「お芝居は生で観るのが醍醐味だと思いますので、ぜひ劇場に遊びに来ていただけると嬉しいですし、再演はある程度“お芝居のクオリティ”が保証されていると思います。楽しんでいただける自信はあるので、ぜひ劇場に遊びに来てください」」

太田「絶対に観たら面白いと思えるストーリーなので、歴史の苦手な方もタイトルと関係なく、劇場に運んでいただけたらと思います」

佐藤「物語で笑ってみたい人、コントや漫才ではなく物語で笑うという別な笑いを好きな人、劇場を出た時に明るい気持ちで劇場を出たい人、幕末好きな人、高杉晋作の生き様を知らない人にぜひ来ていただきたいなと思います」

(取材・文&撮影:冨岡弘行)

プロフィール

畑中智行(はたなか・ともゆき)
1978年4月13日生まれ、奈良県出身。2000年に演劇集団キャラメルボックスに入団。主な出演作に、『クロノス』、ナイスコンプレックス『12人の怒れる男』、舞台『仮面山荘殺人事件』、『賢治島探検記 2026』など

太田奈緒(おおた・なお)
1994年12月5日生まれ、京都府出身。主な出演作に、舞台『十五少女漂流記』ブリトニー役、『魔法歌劇 アルマギア~Episode.0~』ティア・イクタル役、『ぼくらの七日間戦争2025』西脇由布子役など

佐藤慎哉(さとう・しんや)
1989年5月27日生まれ、新潟県出身。脚本家・演出家・劇団アナログスイッチ主宰。2012年1月のアナログスイッチ旗揚げ以降、すべての脚本・演出を務める。主な脚本・演出作に、『虹色とうがらし』(演出)、『インタクト』(作・演出)、『信長の野暮』(作・演出)など

公演情報

アナログスイッチ 23rd situation
『寝不足の高杉晋作』

日:2026年2月25日(水)~3月8日(日)
場:新宿シアタートップス
料:土日5,500円 平日5,000円
  平日前半割[2/26・27]4,500円
  U-25[25歳以下]3,500円(全席指定・税込)
HP:https://www.analog-switch.com/nebutaka/
問:アナログスイッチ
  mail:info@analog-switch.com

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