創立70周年シーズンに向けて、要注目のプログラムが目白押し 家族を大切にする精神で素晴らしい音楽を届けたい

 今年6月に創立70周年を迎える日本フィルハーモニー交響楽団。芸術性と社会性を両輪とし、あらゆる世代と地域に開かれたオーケストラとして、日本のクラシック文化を支えてきた。2023年から首席指揮者を務めるカーチュン・ウォン氏は、その伝統を受け継ぎながら新しい表現の開拓に励む。

 今シーズン最後に指揮する3月の公演では、芥川也寸志「交響管絃楽のための音楽」、R・シュトラウス「ホルン協奏曲第1番」、ストラヴィンスキー「バレエ組曲《火の鳥》」(1945年版)を取り上げる。中でも、「日本のクラシック音楽が大好き」と公言するウォン氏にとって、芥川作品は思い入れが強い。

 「日本フィルのおかげで、多くの日本人作曲家の作品を取り上げることができました。私自身が学び、研究してきたものを実際に演奏できることは大きな喜びです。芥川の作品はクリーヴランド管弦楽団でも取り上げていますし、今後もさらに日本の作品をレパートリーに加えていきたいと考えています」

 同公演にソリストとして出演する若き首席ホルン奏者・信末碩才は「奏者という小さな存在ながら、ますます活発に私の価値観を表出させ、日本フィルの70周年、そしてその先を盛り上げていけたらと考えています」とコメントしており、見逃せない公演になりそうだ。

 そしてウォン氏は、4月の東京定期演奏会で記念すべき70周年シーズンの幕を開ける。取り上げるのは、日本フィルとウォン氏にとって特別な存在と言えるマーラーの編曲によるベートーヴェン「交響曲第9番《合唱》」。

 「世界各地でこの作品を演奏してまいりましたが、日本で第9を指揮するのは初めてです。新しい出発にふさわしい機会であり、マーラー編曲版を取り上げます。マーラーは決して独自色を押し付けるのではなく、ベートーヴェンの精神を大切にしています。木管を増やした編成など、かつての伝統的な演奏法を踏まえつつ、堂々たる響きを持つ編曲です」

 なお、6月の創立記念日とその前日には、サントリーホールでマーラーの「交響曲第8番《千人の交響曲》」を披露する特別演奏会を開催。もちろん、そこでもウォン氏がタクトを振る。それに向けてのマーラー編曲版「第9」は必見のプログラムと言っていいだろう。

 「日本フィルは6月22日に創立されましたので“かに座”です。かに座のように“家族を大切にする精神”を持ちながら、これからも素晴らしい音楽をお届けしてまいります」

(文・編集:西本 勲 撮影:山口 敦)

プロフィール

カーチュン・ウォン
1986年生まれ、シンガポール出身。ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学でオーケストラとオペラの指揮を学び、2014年に修士号を取得。2015年、シンガポール交響楽団の指揮でプロデビュー。2016年、グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールでアジア人として初優勝を飾る。以降、クリーヴランド管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニック、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団をはじめとする世界有数のオーケストラに客演。日本フィルハーモニー交響楽団とは2021年に初めて客演し、2023年に首席指揮者に就任。得意とするマーラーの交響曲のほか、日本人作曲家の作品にも力を注いでいる。

日本フィルハーモニー交響楽団『創立70周年記念演奏会』

『第261回芸劇シリーズ』
日:2026年3月8日(日) 
場:東京芸術劇場 コンサートホール
料:S席8,000円 A席6,500円
  ※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
  (全席指定・税込)

『第779回東京定期演奏会』
日:2026年4月10日(金)・11日(土) 
場:サントリーホール 大ホール
料:S席10,000円 A席8,500円
  ※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
  (全席指定・税込)

HP:https://japanphil.or.jp 
問:日本フィル・サービスセンター 
  tel.03-5378-5911(平日10:00~17:00)

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