ダンス・朗読・ピアノが三位一体となって織り上げる、宮沢賢治の世界 未完成だからこそ生まれる色気を存分に感じて欲しい

 ダンサー・プロデューサーとしてダンス表現の可能性を探り続ける西島数博は、様々な才能たちとジャンルを超えた作品を積極的に創り続けている。今年6月には、宮沢賢治の作品をモチーフに、西島のダンス、俳優 木戸邑弥の朗読、そしてピアニスト 斎藤圭土の演奏による『心言葉』を上演し、好評を得た。その再演となる来年1月の公演は、それを超えると西島は言う。

西島「バージョンアップです。僕は再演をあまりしないんですが、この作品でまだやりたいことが出てきて、膨らませたくなったんです」

 そもそも西島はなぜ宮沢賢治と向かい合ったのか。そして声を掛けられた木戸と斎藤は宮沢賢治をどう感じているのか。

西島「きっかけは東日本大震災後に行った被災地で、小学校の壁に残っていた宮沢賢治の言葉でした。僕はずっと身体表現で言葉にならないことを伝えるということを考えていましたが、言葉があることで表現をさらに拡げられると思い、興味が出てきたのです。宮沢賢治の言葉に『永久の未完成これ完成である』とあります。これはクリエイターにとって、とても興味深い言葉で、ずっと心に残っていました。決まった枠に囚われない自由な表現の可能性を試したいと考えたんです」

木戸「僕にとって宮沢賢治といえば『銀河鉄道の夜』です。改めて作品を読み返して、初めてファンタジーな印象を感じました」

斎藤「西島さんがピックアップする宮沢賢治の言葉はとてもポジティブなんです。抽象的だから聴く側にも考える時間を与えるんです。『心言葉』は言葉の力を、身体の表現、言葉そのもの、そして僕の音楽でうまく表現されていると思います」

 未完成だからこそ生まれる色気。3人はそれを探し、目指しているのだろう。

木戸「朗読・音楽・ダンスの異なるジャンルの3人が密になる舞台はなかなかありませんね。構えずに観てもらえますので、ぜひお越しください」

斎藤「色々な要素が詰まっている作品ですし、なにより僕自身が観客になりたいくらいです。前回もたくさんの方が涙してくださいました。心が豊かになる作品です」

西島「これまで色々な作品を創る中で『心言葉』は初めて朗読を入れた、自分にとって新たな1ページを刻む今回の作品は、故郷の日向、沖縄や京都でも上演します。『永久の未完成』という魅力溢れる美しさから新たなジャンルが生まれる瞬間を観ていただきたいです」

(取材・文:渡部晋也 撮影:平賀正明)

1/24~30は「全国学校給食週間」だそうです。あなたが好きだった給食のメニューを教えてください。

西島数博さん
「学校給食の思い出と言えば、小6の時に太ったのを気にして給食をあまり食べない時がありました(笑)。牛乳とご飯の組み合わせもちょっと苦手だったり……。シチューが美味しかったのを覚えています!」

木戸邑弥さん
「僕が給食で特に好きだったのは、“柿の葉寿司”です。僕の出身地、奈良県ならではの一品かと思いますが、年に1度か2度ほど出てきました。初めて給食で柿の葉寿司が出てきた時は、それまで食べたことがなかったので、普通のお寿司が良かったと感じましたが、一口食べてその美味しさに衝撃を受けました。それ以来、新幹線でのお供は柿の葉寿司となりました。給食で出会えたことに感謝しております」

斎藤圭土さん
「学校給食で好きだった給食のメニューは、うどんみたいな“ソフト麺”。様々な味のソースがあったと思いますが、ミートソースのようなトマトソースの味が好きだったのを覚えています。今食べたら美味しいと思うかわかりませんが、当時はうどんとは少し違うフワフワ食感が好きでした」

プロフィール

西島数博(にしじま・かずひろ)
宮崎県出身。フランスの国際バレエコンクール第1位受賞後、国内外で活動。ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』出演から多彩に活躍。様々な空間で企画・演出・振付を手掛けている。

木戸邑弥(きど・ゆうや)
奈良県出身。主な出演作に、舞台『ジョーカー・ゲーム』シリーズ 、unrato#9『Our Bad Magnet』、映画『コインランドリーカタルシス』、ドラマ『合理的にあり得ない』、『Family Village』など。

斎藤圭土(さいとう・けいと)
神奈川県出身。2002年、ピアニストの兄・斎藤守也とピアノデュオユニット「レ・フレール」を結成。2014年、ヴァイオリニストのヴァスコ・ヴァッシレフと、ピアノ× ヴァイオリンのユニット「Viano(ヴィアーノ)」を結成。ピアニスト・作曲家として多角的かつ精力的に活動を展開。

公演情報

心言葉 – 宮沢賢治へのオマージュ –

日:2026年1月23日(金)・24日(土)
場:BAROOM
料:11,000円(全席指定・1ドリンク付・税込)
HP:https://baroom.tokyo
問:BAROOM tel.03-6892-1577

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