佐々木三夏主宰 大和シティー・バレエ/ダンスが、やみ・あがりシアターの笠浦静花を脚本・演出に迎え、三島由紀夫の『近代能楽集』のダンス化に挑む。
笠浦「『近代能楽集』の中から、“夢”が出てくる3本を取り上げます。三島文学の耽美な香りを肉体で表現したらどうなるのか。夢と現実の狭間で、3本の結末が少しずつ違う。それをどういうニュアンスで解釈し、どんなムーブメントになるのか、そこが一番チャレンジングであり面白いところです」
笠浦が選んだのは『邯鄲』、『葵上』、『卒塔婆小町』の3作品。皆川まゆむ、櫛田祥光、竹内春美が振付を手掛ける。
皆川「脚本を読んだ一番の印象は、原作を凄く尊重して書かれているということ。自分が原作を読んだ時とはまた違う発見があって面白いですね」
竹内「私はまず、脚本を全部写経のように書き写しました。そうすると頭に入りやすいので。そこからのスタートです」
櫛田「脚本がしっかりしているので、それを踊りでどう見せるかが難しい。少しでも自分の色が出せたらと思っていて……」
個性を違える振付家三者が、笠浦の脚本をどうダンスに落とし込むのか、そこも見どころの1つだ。
皆川「戦後間もないあの時代を強く生きた三島ならではの、生きることへの執着や強さが1つのテーマになっている気がして。いかにそれを自分のダンス作品にできるか模索しています」
櫛田「僕は元々、芝居の養成所にいたので、芝居の要素が根底に入ってくる。エロ・グロ・バイオレンスがベースにあるので、苦手と言う人もいるのだけれど(笑)。“櫛田じゃなくてもよかった”と言われるのは嫌なので、脚本をもとに自分の作風も入れていけたらと思っています」
竹内「『卒塔婆小町』は、タイトルロールに武元賀寿子さんをお迎えします。皺だらけの老婆が、中身が本物ゆえに、美しく見えてしまう。そんなマジックに辿り着けたら。自分の爪痕もきちんと残しつつ、三島文学の一部
になれたらいいですね」
作中は“語り手”が登場し、3作品をダンスと台詞で繋ぐ。
笠浦「言葉に人が踊らされる。誰か1人だけ“夢”の言葉を代弁できる人間を入れようと考えました。『近代能楽集』は、読んだ人も舞台で観た人も多いはず。だからこそ、『近代能楽集』を知る人にとって“この手があったか! ”なんて作品になるといいなと思っています」
(取材・文:小野寺悦子 撮影:友澤綾乃)
竹内春美さん
「牛乳に混ぜる“ミルメーク”が出ると嬉しかったです。牛乳は嫌いではありませんでしたが、それが甘いドリンクになる日はテンションが上がりました」
皆川まゆむさん
「私が好きだった給食のメニューは、“わかめごはん”と“ラーメン”でした。白米を食べるのが苦手だったので、少し塩気のあるわかめが混ざったこのわかめごはんと、コーンやキャベツが入った優しい甘さの具沢山のスープの減りと等分したソフト麺のバランスを見ながら食べるラーメンが出る時は、いつもの給食よりテンションが上がっていた思い出があります。2つとも家庭ではなかなか出ない、給食ならではの特別なメニューだったので今も記憶にあるし、たまに食べたくなります」
笠浦静花さん
「“牛乳”です。小学生の頃は転勤族でよく転校したのですが、どこでも例外なく子どもは早飲み競争をしてました。パック型よりも瓶の方がずっと早く飲めるんですよね。結局は開口部の大きさがタイムのカギです。時は過ぎ、この間小学校で給食を食べさせてもらう機会があったのですが、誰一人早飲みをしてなくて、時代は変わったのかと驚きました」
櫛田祥光さん
「私が好きだった給食のメニューは“焼きそば”です。男子は残った焼きそばをジャンケンでおかわりしてました。色々な所で色々な焼きそばを食べましたが、給食で出る焼きそばが一番美味しかったです。今ではコンビニの焼きそばパンを食べております」
プロフィール
竹内春美(たけうち・はるみ)
2012年~ 2019年まで、ドイツ・レーゲンスブルク劇場ダンスカンパニーに所属。2023年より、大和シティー・ダンス(YCD)ディレクター兼常任振付家を務める。代表作は『宗達』、『いばら姫』など。
皆川まゆむ(みなかわ・まゆむ)
2013年、インバル・ピント&アブシャロム・ポラックダンスカンパニーに在籍。2023年、和太鼓集団 鼓童の中込健太・住吉佑太と共にユニット「ⅲZØ(ミゾウ)」を結成し、2024年9月に『HOMEostasis Transistasis』を発表。
笠浦静花(かさうら・しずか)
2012年、東京大学在学中にやみ・あがりシアターを旗揚げ。全作品の脚本・演出を務める他、2023年に上演のミュージカル『のだめカンタービレ』をはじめ、脚本提供を行っている。
櫛田祥光(くしだ・よしみつ)
2007年~ 2012年までNoismに所属。2013年、ダンスカンパニーLasta を創立し、2025年にロンドン・The CoronetTheater にて『奈落』を上演。
公演情報
大和シティー・バレエ/ダンス Winter Concert 2026『近代能楽集』
日:2026年1月31日(土)17:00開演(16:15開場)
場:大和市文化創造拠点シリウス やまと芸術文化ホール メインホール
料:+S席8,800円 S席6,600円 A席5,500円
B席4,400円(全席指定・税込)
HP:https://www.ycb-ballet.com/2026winter
問:大和シティー・バレエ
mail:mail@ycb-ballet.com