本作が“初舞台&初主演”の岡村直樹に経験者からの金言 不朽の名作RPG『幻想水滸伝Ⅰ』が初の舞台化

 圧倒的な世界観と重厚なストーリーで多くのファンに愛されてきた、KONAMIを代表する名作RPG「幻想水滸伝」シリーズの記念すべき第1作『幻想水滸伝Ⅰ』が、舞台「幻想水滸伝 -門の紋章戦争篇-」として上演される。
 本作は大将軍 テオ・マクドールの息子として育った主人公 リアン・マクドール(ぼっちゃん)が、圧政の広がる帝国と対峙する、“門の紋章戦争”が描かれる物語。脚本・演出は、舞台『文豪ストレイドッグス』シリーズや『ワールドトリガー the Stage』シリーズを手掛ける、劇団柿喰う客 主宰の中屋敷法仁が担当する。
 主人公のリアン(ぼっちゃん)には、本作が初舞台となる期待の若手俳優・岡村直樹、ぼっちゃんの世話役・グレミオには、舞台『刀剣乱舞』シリーズなどの人気作に出演するベテラン 和田琢磨がキャスティングされた。他にも長江崚行、山田ジェームス武、磯貝龍乎など、舞台を中心に活躍する面々が名を連ねる。本稽古開始直前に、岡村直樹と和田琢磨に話を聞いた。


―――まずは出演が決まった時、どのようなお気持ちでしたか。

岡村「いい意味で信じられなかったです。受かるぞという気持ちでオーディションに挑みましたが、まさか主人公を任せていただけるとは思ってなかったですし、本当に有難い気持ちで、もう必死でやるしかないなと思いました」

和田「原作は自分が小学生ぐらいの時に遊んでいたゲームタイトルで、当時はまだインターネットはなく、もちろん携帯も持ってなかったですし、ひたすら自分の頭を使って話を進めて、次の日に友達に『どこまで進んだ?』と話し合った記憶があります。自分の中ではただのゲームというより、一緒に冒険しているような感覚を持たせてくれたゲームだったので、とても思い出のある作品に出演できて嬉しい気持ちです」

―――岡村さんはオーディションで選ばれたということで、その時のエピソードなどありましたら教えて下さい。

岡村「オーディション会場に集合時間の1時間前に着いてしまって、やることがなくて近くの公園でアクションの練習をして、体を温めてからオーディションに臨みました。それが良かったのか、特技披露の時にバク転とバク宙をして、それが結構うまくいったかなって。下準備じゃないんですけど、やってよかったですし、良いパフォーマンスが出来たかなと思いました。
 オーディションのお話をいただき作品のことを調べていくうちに、僕が演じれる役はルックかなと思っていたんですよ。でもオーディションの結果、主人公と聞いて本当に驚きました」

―――本作は1995年12月に発売されたシリーズ第1作『幻想水滸伝Ⅰ』を舞台化したもので、和田さんはリアルタイムで、岡村さんは出演が決まってからプレイされたそうですが、実際にプレイしてみて感じた原作の魅力を教えていただけますか。

和田「プレイした当時、ここまで主人公の仲間が多いRPGはなかったと思うんですよ。プレイヤーも選び放題でした。人間同士による“人生のふれあい方”がすごくドラマチックで、一人ひとりの視点で見ても面白い作品は名作だと思っているんですけど、『幻想水滸伝Ⅰ』もその要素を十分に持っていて。主人公だけでなく、他の登場人物を中心に立てても、面白いストーリーになるという印象がこのゲームにありますね」

岡村「仲間が108人もいて、行く先々で新たな仲間が増えていくので、ストーリーを追っていくごとにキャラクターがどういうストーリーで仲間になっていくのかな、というワクワクが楽しめます。しかも新たに仲間になったキャラしか使えない技があったり、特定のキャラ同士が協力して攻撃出来たりして、すごく良いシステムだなと感じました。
 また、主人公だけじゃなくて他のキャラクターたちにもちゃんとスポットが当たって、ストーリーが絡み合っているのが感じれるので、プレイしてみて改めてすごく良い作品だなと思いました」

和田「そんな多彩なキャラクター達を、アンサンブルキャストも入れて出演キャスト19人でどう描いていくのか、というのが舞台の醍醐味だよね」

岡村「今発表されてるキャラクター以外も、舞台上に登場します。実は僕もモノローグで、ぼっちゃん以外のキャラクターを一瞬演じるタイミングもあるんですよ」

和田「まさに全員野球だね(笑)」

―――岡村さんと和田さんは、8月配信のシリーズ公式番組「幻想水滸伝Live」が初対面だったとお聞きしましたが、それぞれその時の第一印象はどう思われましたか。

岡村「一目見て穏やかな方だなと思いました。楽屋で結構話しかけてもらったのも嬉しかったですし、朗らかに挨拶していただいて、緊張が解けたことをとても覚えています。この人を頼っていけばいいんだと思える包容力をお持ちなので、そういった部分では、僕の思っていたグレミオと重なるなと思いました」

和田「声が素敵だなと思いました。いい意味でセクシュアリティを感じないというか、“主人公声”だなって感じました。芯はあるけれど、どこかちょっとまだ未完成な声の印象が強かったですね」

―――そういえば、脚本・演出の中屋敷法仁さんがXで岡村さんのことを「ポテンシャルとキャパシティが恐ろしい頼もしい」と絶賛していましたね。

岡村「事前稽古の初日に、しばらく練習していた棍術(棒状の武器 棍を用いた中国武術)を披露させていただいたら、『おぉ、すごい!』と高評価をいただきました」

―――意外にも、和田さんは中屋敷さんの脚本・演出作品は初めてなんですよね。

和田「稽古場のロビーで一度ご挨拶したことがあるくらいでした。もちろんお名前は存じ上げてましたし、劇団柿喰う客の公演も観劇したことがありますし、2.5次元作品に限らず色々な作品で演出なさってるので、いずれご一緒したいと思っていました」

―――和田さんがご覧になった劇団「柿喰う客」公演の印象はいかがでしたか。

和田「役者さんがのびのびと演じてらっしゃるイメージでした。生々しさというか、様式美というより、役者をすごく尊重して、いい意味で役者頼りしてくれる方のような。あまり細かく自分で決めるというよりかは、役者さんに委ねるところは委ねてくださるような印象でした。
 ちなみに岡村さんは事前稽古で既に中屋敷さんと何度も会っていると思うけど、どんな印象? もし細かく決めるとかだったら、今言ったことが全くのデタラメになっちゃうから(笑)」

一同「(笑)」

岡村「いいシーンはいいシーンとして使おうとしてくれますし、いい意味で委ねられてるといいますか、役者さんへの愛を感じました。もちろん作品への愛もしっかりある方なので、中屋敷さんの作品に出演できるのは、いい経験でもありますし、幸せなことだなって思います」

―――既に個人のも含めてビジュアルが公開されていますが、それぞれ今回の衣装を着てみての感想を教えていただけますか。

和田「タートルネックの衣装でアクションすると、ちょっと暑そうだなという感想ですね(笑)。それとロン毛のキャラクターを演じるのは今回が初めてなので、今のうちにロン毛をさばく練習をしておこうかなと思っています」

岡村「すごいこだわって作られている印象です。KONAMIの崎山さん(「幻想水滸伝」シリーズIP監修)が、舞台制作さんと密に連携を取って監修してくださっているんですけど、色味、形、大きさなど全てにこだわって作っていただきました。舞台上でさらに映える衣装になっていると思いますので、それも楽しんでいただけたらなと思います」

―――本作の注目ポイントや見どころを教えていただけますか。

岡村「まずは原作が描く人間ドラマの部分をしっかり観ていただきたいですし、アクションが随所に盛り込まれているところも注目です。アクション殺陣担当の六本木康弘さんが、キャラクターとの関係性や『このシーンはこのキャラを目立たせよう』とこだわって作ってくださっていますし、中屋敷さんも『物語の後半にかけてリアンが少しずつ成長していくさまを見せたい』と話されていたので、アクションや戦いにも意味が込められているという点も楽しみにしていただけたらと思います」

和田「主人公たちが色々なところに行って色々な人と会って……というRPGの要素を詰め込んでいるので、みんなと冒険しているような感覚で観劇していただけるんじゃないかなと思います」

―――来年1月に40歳を迎える和田さんにとって、本作は30代最後の舞台出演になりますね。

和田「今から15年前の2011年1月にミュージカル『テニスの王子様』で初めて2.5次元ミュージカル作品に出演して、それから毎年のように舞台作品に出させていただいてるので、色々なタイトルをやってきた自負があります。
 どれにも当てはまるのは、企画会社の方々がゲームや漫画の原作を舞台化しようと思う作品は、必ず何か面白い理由があるということなんですよ。そういう意図や台本から、その作品の面白さの“原点”をしっかり読み解く力は、この15年間で多少培ったと思っています。
 漫画やゲームを原作とした舞台作品の出演歴が長い(磯貝)龍乎やイセダイ(伊勢大貴)らもいるので、みんなで協力し合って『幻想水滸伝Ⅰ』の魅力を底上げできたらいいなと思います」

―――岡村さんは本作が初舞台で、キャスト全員が初めての共演となるわけですが、座組の雰囲気はいかがですか。

岡村「ある意味、座組に“初心者”が入って来ちゃうわけじゃないですか。だからちょっと怖くも思っていたんですけど、自分が怖がっていただけで皆さん本当に優しくて。特に高木トモユキさんにはめっちゃ優しくしていただいています。さっきも時間があったので『一緒に稽古やろうよ!』と声をかけていただいたり、日暮(誠志朗)さんが『一緒に写真撮ろう』と言ってくれたり、アンサンブルの方たちも話しかけてくれたりと、本当にアットホームな空気です。
 いいものを出し合ったり積み重ね合える人たちが集まってるんだなと思いつつも、そこに甘え過ぎず、楽しく厳しくやっていけたらと思います」

―――実は、和田さんも岡村さんと同様『初舞台が初主演』という経験をお持ちです。経験者として、また役者の先輩として、岡村さんにアドバイスや心構えがありましたら伝えていただけますか。

和田「間違いなく一生懸命やられていると思うので、そこは何も心配していないんです。でも1つヒントにして欲しいなと思うのは、あくまでも僕の考えですけど、主人公は“周りに影響を与えて成長していくキャラ”と“周りに影響を受けて成長していくキャラ”の2種類が多いと思っていて、今回はどっちのキャラかなというのを岡村さんが考えて演じると、とてもいい方向に行くんじゃないかなと思います」

岡村「ありがとうございます!」

―――和田さんから金言が飛び出したところで、最後に公演を楽しみにされている方に向けて、メッセージをお願いします。

和田「小学生の頃、クラスメイトの男の子と『幻想水滸伝Ⅰ』についてすごく語り合った記憶があったんですけど、情報解禁時の反応を受けて、女性の方も僕が演じるグレミオを好きな方がたくさんいらっしゃるんだと知りました。そんな、老若男女問わず魅力的なキャラクターがたくさん溢れている作品です。
 実物の人間が目の前で苦労や困難に立ち向かったり、仲間とぶつかり合ったりといった“人間臭さ”みたいなものを肌で感じていただきたいなと思いますし、来年1月に40歳を迎えますが、これまで自分が培ってきたものを存分に出せるように頑張りたいと思いますので、劇場に足をお運びいただけたら嬉しいです」

岡村「『幻想水滸伝Ⅰ』をプレイして、人間は1人じゃ生きていけないし、周りの人の影響をもらいながら、いいことも悪いこと含めて成長していくんだなと感じました。僕自身もいいことも辛いこともたくさん経験して今の自分があると思っているので、等身大の“ぼっちゃん”として演じて、お客さんの気持ちを引っ張りつつ、ゴールにしっかりとたどり着けていけたらと思っています」

(取材・文:冨岡弘行 撮影:上村可織)

プロフィール

岡村直樹(おかむら・なおき)
2003年1月6日生まれ、高知県出身。劇団スーパー・エキセントリック・シアター所属。特技は、空手・バトミントン・アクロバット。趣味は、ショッピング・映画鑑賞・舞台鑑賞。本作が舞台初出演&初主演。

和田琢磨(わだ・たくま)
1986年1月4日生まれ、山形県出身。主な出演作に、舞台『刀剣乱舞』シリーズ、『リア王』、東映ムビ× ステ『仁義なき幕末』、舞台連動・ドラマ『Solliev0』など。

公演情報

舞台「幻想水滸伝 -門の紋章戦争篇-」

【東京公演】
日:2025年12月6日(土)~14日(日)
場:シアターH

【京都公演】
日:2025年12月18日(木)~21日(日)
場:京都公演

料:プレミアムグッズ付きチケット14,000円
  一般チケット11,000円(全席指定・税込)
HP:https://suikoden-stage.com
問:公演事務局
  tel.0570-200-114(12:00~17:00/土日祝除く)

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