読むと精神に支障をきたす……とまで言われる、夢野久作の傑作『ドグラ・マグラ』の、オルタナ系演劇集団PSYCHOSISによる上演が決定、同劇団では2021年以来2度目の実施となる。追加公演を含むチケット完売を記録した初演から約4年。旗揚げ5周年記念公演として、『DGURA MAGRA−ドグラ・マグラ−RE/再演』に臨む、PSYCHOSIS旗揚げメンバーである森永理科と國崎馨、同劇団の本公演は初出演となりヒロインの呉モヨ子に抜擢された高橋琴音に話を聞いた。
―――ご自身も作品に出演しながら、演出・音楽・デザインとあらゆる角度で作品づくりに向き合う森永さんですが、本作の再演を決めたきっかけは?
森永「PSYCHOSISが5周年というのが一番のきっかけです。初演時の本作が、私の演出家としての実質デビュー作品だったので、やり残した部分もあって……。あれから、演出家としてこの作品をブラッシュアップすることをずっと考えてきました。今なお、親しまれ続ける夢野久作の作品ですし、PSYCHOSISで繰り返し上演できる作品にしたいと思っているほど、特別な作品です」
―――國崎さんは初演から続投する青年役に加え、呉一郎役を曽田明宏さんと公演ごとに交互に演じますね。初演時を振り返りながら、いまの気持ちをお聞かせください。
國崎「アンダーグラウンド演劇で活躍されている先輩方とご一緒する環境だったので、程よい緊張もありつつ、とても思い出深く、刺激的な経験でした。初演ではチケット完売はしたものの、コロナ禍の影響で観てほしい人に観てもらえない歯痒さも味わっていたので、さらに成長した姿をより多くの人に見ていただきたいですね。今回は2役を交互に演じるので、単純に稽古は半分でやることは2倍……頑張ります(笑)」
―――呉一郎の許嫁の美少女・呉モヨ子役を演じる高橋さん。オファーを受けた時の気持ちをお聞かせください。
高橋「森永さんが開催されていた声優のワークショップに参加したことがすべてのきっかけでした。以前から、PSYCHOSISの作品は出演者の“人”を思わず好きになるような演出に魅力を感じていて。今回のオーディションに迷わず参加させていただきましたし、本公演の出演が決まった時は本当に嬉しかったです」
森永「琴音ちゃんは去年、私が演出を担当したLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)での大きな公演が初舞台でした。度胸のある子だヨォ。今回のモヨ子役は、混じり気のない狂気や、ドラマ性を強調するような役作りや演出を一緒にやっていきたいですね」
―――PSYCHOSISや本作の魅力とは?
國崎「『ドグラ・マグラ』って、どうしても難しいというイメージが先行していると思うんです。でも、要点を押さえて読んでみると、現代のライトノベルっぽさを秘めている作品なんですよ。お客様へは難しくなく、作品の魅力をお芝居でお届けしたいです。個人的には大好きな下北沢という場所で、大好きな演劇を上演できる喜びを感じています」
高橋「まず、森永さんの演出でしょうか。森永さんの演出は凝り固まらず、“とにかくやってみよう!”とやらせていただけるスタイル。だからこそ、PSYCHOSISの過去作品を観客として観劇していた時も、出演者の人となりを魅力的に感じていたのだと思います。私が演じるモヨ子は、自分では経験したことがないような役なので、真摯に役作りに向き合いたいです」
森永「PSYCHOSISには、“闇を知るために闇を覗く”というコンセプトがあるんです。生きていたら心の中に闇を抱えることはあるけど、そんなネガティブな部分ときちんと向き合うことによって、私自身強くなれた実体験があります。私たちのオーディションは毎回、“元気な人”が絶対条件。元気な人が作品に取り組んで、元気じゃない人たちをどんどん引きずり上げていくスタイルを目指しています。今作は、劇作家・高取英が極めてわかりやすく『ドグラ・マグラ』を脚本化した作品です。原作にないナースが登場し作品を彩りより簡潔にしてゆくのが特徴です」
―――カンフェティ読者へメッセージをお聞かせください。
森永「インディーズ色の強い私たちの作品をカンフェティで取り上げていただけてとても嬉しいです。今回は今まで当日精算だった学生チケットの販売を始めています。公演当日までに決済方法とにらめっこして、さらりとチケットを買うきっかけになれたらなぁ、という願いも込めてかなり安く設定しました。大人の皆様も学生、お子さんも爆音とまばゆい光の怪奇幻想世界に浸っていただけたらと思います」
(取材・文:山田浩子)
プロフィール
森永理科(もりなが・りか)
東京都出身。4月25日生まれ。声優・歌手として活動。PSYCHOSIS作品では演出・音楽監修・広告デザインを務めながら、俳優としても出演。主な出演作に、『「実録!世界オカルト音楽大全」試聴会』など。
國崎 馨(くにさき・かおる)
宮城県出身。10月18日生まれ。2009年に月蝕歌劇団作品で初舞台を踏み、俳優デビュー。主な出演作に、『盲人書簡◉上海篇』、音像空間劇『あやかしの鼓』、『サラマンドラの星空』など。
高橋琴音(たかはし・ことね)
MIT Artists所属。東京都出身。8月14日生まれ。声優・ナレーターとして活動。主な出演作に、残酷劇『赤マント』など。
公演情報
PSYCHOSIS File:008
幻魔怪奇劇『DGURA MAGRA -ドグラ・マグラ- RE/再演』
日:2025年12月10日(水)~14日(日)
場:下北沢 「劇」小劇場
料:ADVANCE TICKET4,800円 STUDENT TICKET2,800円 ※要学生証提示
※他、LIMITED TICKETあり。詳細は下記HPにて(全席自由・整理番号付・税込)
HP:https://www.psychosis13.com
問:PSYCHOSIS
mail:ticket.psychosis@gmail.com