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2023年、皇帝ロックホッパーの旗揚げ公演として上演し、好評を博した『義民』。今回は、江戸時代に備中国(現在の岡山県総社市)で起きた農民一揆を農民たちの視点で描いた物語を大幅にリメイクし、岡田藩を中心としたエンタメ時代劇として再演を行う。主宰・演出・出演の小原卓也、W主演の佐藤弘樹と鵜飼主水に、作品に対する思いや意気込みを伺った。
―――再演に対する意気込み、出演が決まった時の思いを教えてください。
小原「2023年の旗揚げ公演で上演したのがこの作品でした。今回はいつもより大きな劇場で、殺陣多めのエンタメ作品にしたいなと思い、ガラッとリメイクします。将来的には地元で公演をしたいので、それに繋がるように成功させたいです」
佐藤「実はこのお話をいただいたのは1年半前くらい。だいぶ前から熱意を持ってオファーをくださっていました。(鵜飼と)同じタイミングで話を聞いたんですが、地元のお話を伝えたいという純粋な思いが素敵だなと思い、二つ返事でOKしました」
鵜飼「本当に二つ返事でOKしたよね。いいじゃん! いつ? って」
佐藤「具体的なことはわからない状態で、熱意だけ受け取ってオファーを受けました。でも、しっかり準備されているのは進捗を聞いていてもわかる。本気なんだと感じられることが随所にあって、僕自身非常に楽しみです」
鵜飼「右に同じです。作品に熱量があると思ったのが第一印象。地元・岡山の実話を描くことに対する本気度が伝わったので、お話を聞いていいなと感じました。我々もその本気に見合うようにやらなければと思っています」
小原「2人があまりにも軽くOKしてくれたので、最初本当に出てくれるのかわかりませんでした(笑)」
―――大幅に改訂されているということですが、リメイクしようと思った理由は。
小原「実際にあった事件は、暮らしが苦しくなった中で立ち上がった農民4人が目上の方に直訴するという、本当にシンプルな話。初演でも要素を足しましたが、大きな劇場だと物足りなそうだと思っていました。大きい劇場なら派手な殺陣も増やしたいし。本来は農民が主役だけど、(佐藤・鵜飼が演じる)岡田藩の2人を主演にし、忍びなども出して、藩を乗っ取りにくる苗木藩と戦う忍者対戦みたいなものにする予定です」
鵜飼「『義民』っていうタイトルを聞くと渋いものをイメージするけど、派手なんですね」
小原「そうです。前回はすごく歴史に忠実に、農民たちが直訴に行くまでの葛藤をメインにし、サブ要素として藩の苦悩などを描いていました。メインとサブの物語が逆になるイメージです。初演を見てくださった方も新鮮だと思います」

―――今回の台本はまだ完成していないとのことですが、演じる役について、現時点ではどんな印象を持っていますか?
佐藤「ビジュアル撮影はして、キャラクターの相関図はなんとなくわかっています。なるほど、という感じです」
鵜飼「そこが絡むんだ、みたいな驚きがあったよね。個人的には初めての組み合わせもあって楽しみ」
小原「今回、初めましての方が多いんです。殺陣のある時代劇だからか、オーディションには普段と違う方が参加してくれました。みんな時代劇をやりたいけどチャンスがないんだなと改めて思いましたね」
佐藤「衣装とか小道具を用意するのも大変ですからね」
小原「そうですね。時代考証とかもあるし、シビアに見てくださるお客様もいらっしゃるからハードルは高いと思う」
鵜飼「(皇帝ロックホッパー)劇団員の栗原大河くんが、気合の入り方を羨ましがってました(笑)」
―――ビジュアル撮影の感想、役についてのディレクションがあったかなども教えてください。
鵜飼「思ったより堅かったです。元々忠義とかの堅いイメージはあったけど、思った以上に渋い感じでしたね」
佐藤「僕がいただいたのは悩む役。個人的にそういう役を演じることが多いんですが、今回は主君としてのあり方を悩み続ける人だと言われました。撮影する時も、優しい君主だから爽やかに笑ってほしいけど刀は抜かないでほしいと言われて。戦いに躊躇う・悩む優しい主人公という役柄は自分にとっても新しいなと思います」
小原「僕は村長役。話の展開的に、サブストーリーを進めるキーになるポジションです。演出もやるのでそんなに出番を作る予定はないですが、農民たちに慕われ、みんなの幸せと平和を願っているタイプの村長です」
鵜飼「人情系のストーリーなの?」
小原「そうですね。義理人情、男、汗、熱い」
鵜飼「祭りじゃん(笑)。義民のお話自体は苦しんでいる人を助けるために自分の身を挺して戦う人の話ですよね。自分が損をしても誰かを助けたい、自分が被害を被っても現状を良くしたいっていう熱い話なんだ」
小原「僕の生き写しみたいなね」
鵜飼「本当にね」
一同「(笑)」
佐藤「夏っていう時期もあって、熱い話はぴったりだよね」
鵜飼「スカッとするタイプの話しなの?」
小原「見る人の視点によってはスカッとするけど、そうじゃない人もいる。どのキャラクターを追いかけるかによって、印象は全然違うかもしれません」
佐藤「農民サイドからするとうーん……って感じになるかもしれない?」
小原「史実にもあるように、農民の方は殺されてしまうので。今の時代とは違う価値観や法律があるし、苦しい思いをする人々はいた。それを受け入れられるかどうかじゃないかな」
鵜飼「お客様の心に残って、持って帰ってもらえるものがあったらいいですよね」

―――見どころはどういった部分になりそうでしょう。
小原「やっぱり殺陣、アクションですかね。照明も音楽も派手にして、映像も使おうと思っています。視覚的にも楽しめるような、アトラクションっぽいものに夏かなと。可動パネルに映像を投影したり、高さを使ったセットにしたり。イメージはだいぶできています」
鵜飼「時代劇っぽくないセットになりそうだね」
小原「そうなんです。音楽も和ロックで統一しようかなと」
鵜飼「かぶくねえ!」
小原「五感で楽しめる、手に汗握る作品にしたいなと思っています」
―――今のお話を聞いて、おふたりからはいかがですか?
佐藤「時代劇の要素についていうと、鵜飼くんは経験値が豊富なので頼りたいなと思います。話を聞くに、エンタメと物語で担うキャストがわかれそう。僕は物語をしっかり担って作品に重みを持たせたいです。信頼できる役者さんもたくさんいらっしゃるので、皆さんと一緒に作り上げたいと思います」
鵜飼「ひとつ質問なんですが、私はアクション多いですか? (小原から「はい」と言われ)困ったものです」
一同「(笑)」
小原「基本的に(佐藤は)戦わないのであなたが戦います」
鵜飼「体力づくりを頑張りたいと思います。派手で舞台セットも立体的、和ロックということはテンポも早いのでアクションの手数も増える。そして僕はきっと忍術を使えないので自分で動くしかない」
一同「(笑)」
鵜飼「37歳、精一杯やり切ろうと思います!」
―――和気あいあいとお話ししてくださっていますが、改めてお互いの印象、小原さんの演出を受ける上で楽しみなことも教えてください。
鵜飼「僕は(小原と)共演するのも演出を受けるのも初めて。人柄だけでここにいます。派手なエンタメであればあるほど、お客様が見やすい2時間以内にしっかり収めたいなど、芯を持っていらっしゃるのがわかるので、一緒に作るのが楽しみです。弘樹は弘樹。共演経験も多いですし、最近はより一緒にいる時間が増えている。個人的には安心安全の佐藤弘樹です」
佐藤「僕自身は、卓也くんとの共演が2回あって、役者として真面目ですごく協力体制を作ってくださったので信頼しています。逆に演出では初めましてなので、気負ってほしくはないけどお手並み拝見というか」
一同「(笑)」
鵜飼「なかなか言わないよ、演出家に向かって(笑)」
佐藤「近しい存在だから。これだけ気負わず話せる人は珍しいし、近いぶん、どんなところにこだわるのかとか気になる。舞台美術についてももう考えていて、相変わらず真面目なのがわかるので、僕自身はすごく楽しみにしています」

小原「僕にとっては念願の公演。楽しみでしょうがないです。初演に出てくれた方やうちの公演に出てくれた方もいるので、どれくらい成長しているのかという楽しみもあるし、初演を知った上で今回の公演をやったらどんな感情になるのかという楽しみもあるし。規模を拡大した覚悟の公演になっているので、この作品の出来が今後につながるという気持ちで立ち向かいたいです。成功したら岡山公演が見えてくると思うので、そうなったらみんなで岡山に行きたいですよね」
佐藤「何が美味しいの? 吉備団子?」
小原「連れて行かない(笑)」
鵜飼「(佐藤に)ばか! 吉備団子で仲間になるはずだったのに」
佐藤「仲間になるよって言おうと思ったのにおかしいなあ」
小原「こんな感じで、ざっくばらんに楽しく稽古できたらと思います。僕としては、新人の頃におふたりを見ていたので、いつかご一緒したいと思っていた方々が僕の思いに賛同し、出演してくれるのが嬉しいです。お客様に楽しんでいただける作品を届けたいです」
―――最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。
鵜飼「作品に対して本気で愛を持っている人って素敵だと思うし、生の演劇で編集できないからこその熱量が絶対に伝わると思います。そういう意味では、この作品は本気で愛を持った作品になると思います。最近弘樹と一緒にやることが多いんですが、我々だからできる座組作りもあると思います。僕らの力が、小原くんの作りたい作品の色に添えるよう精一杯努めます。最高のお祭りをお届けできるよう頑張りたいと思います!」
佐藤「祭りという単語が出ましたが、それこそお祭りを体験するような心持ちで来ていただくのがいいのかなと思います。気負わずワクワクした気持ちで来ていただけたら嬉しいですし、それに応えられるようにみんなで協力して作っていきたいです。どんなエンタメが一番お客様に届くのか、『義民』という作品を通すエンタメはどんなものがあるのか精査し、みなさんがみ終えた時にいい祭りだったと思えるものを作り上げたいです。我々が責任を持って楽しませます!」
小原「このお話自体にも思い入れがありますし、今回、地元で300年くらい続く義民祭に合わせて公演を行います。僕が生まれ育った場所にそういう方々がいて、そのおかげで今がある。義民騒動は全国各地であったことなので、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいなということもありますし、夏に熱い作品をやるのは1つの目標でもありました。とにかくイケメンと美女たちの汗を見に足を運んでいただけたらと思います。心強い仲間に集まってもらったので、生でしか味わえないものを感じに来ていただけたら嬉しいです」
(取材・文&撮影:吉田沙奈)

プロフィール

小原卓也(おはら・たくや)
1989年6月24日生まれ、岡山県出身。プロデューサー、演出、俳優として活動。2023年に立ち上げた『皇帝ロックホッパー』の主宰も務める。皇帝ロックホッパー作品の演出・出演・プロデュースに加え、主な出演作に『KISS ME YOU〜がんばったシンプー達へ〜』、『DOG’S』、『水月鏡花-竜馬夢双-』など。

佐藤弘樹(さとう・ひろき)
1986年12月3日生まれ、東京都出身。舞台を中心に映像作品への出演、演出などでも活躍。主な出演作に『雨のち晴れ』、ぐりむの法則『ショボとノンキ episode1/2』、ENG10周年記念公演第二弾『Rock in the 本能寺』、mucho produce vol.2 舞台『悲しい時には羊のうたを』、『葬列の王』など。

鵜飼主水(うかい・もんど)
1987年10月5日生まれ、東京都出身。俳優・殺陣師・振付師として多くの作品で活躍。萩原成哉と演劇ユニット「MNOP(もんどなるやオリジナルプロジェクト)」を結成して公演を行うほか、俳優・アーティストによるクリエイター集団「gekchap」の一員として写真展やカメラワークショップなども行っている。主な出演作に、舞台『信長の野望・大志』シリーズ、『黒の王』、『真・三國無双 ~赤壁の戦い IF~』、『BRAVE10~昇焉~』、『博多とんこつラーメンズ』などがある。
公演情報

皇帝ロックホッパー 4th stage performance
『義民2025』〜國への想い〜
日:2025年7月23日(水)~27日(日)
場:新宿村LIVE
料:前方S席[前方2列・特典付]9,800円 前方A席[前方3列〜5列・特典付]8,500円
通常A席[6列〜9列]6,900円 通常B席[10列目以降]4,000円
※他、バルコニー席あり。詳細は下記HPにて(全席指定・税込)
HP:https://gimin2025.com
問:皇帝ロックホッパー
mail:koutei.rockhopper@gmail.com