戦後の混乱が続く博多を舞台にしたおかしくも切ない悲喜劇 時代に翻弄されながらも奇跡を起こそうとした女性たちを描く

戦後の混乱が続く博多を舞台にしたおかしくも切ない悲喜劇 時代に翻弄されながらも奇跡を起こそうとした女性たちを描く

 戦後を逞しく生きた人たちをユーモアたっぷりに描く、おかしくも切ない悲喜劇『鬼灯町鬼灯通り三丁目』。これまで2度上演され、戦後80年となる今夏はキャストを一新し、15年ぶりに帰ってくる。夫・大吉が戦死したと思い込み、別の想いを寄せる男の帰りを待つ妻・弥生とともに暮らす、男の母・番場を音無美紀子が、番場の昔馴染み・小梅を有森也実が演じる。

音無「夫たちが戦争に行き、残された女性たちが1つ屋根の下で知恵を絞りながら必死になってもがいて生きていく逞しさや、生きることは誉れなのだということを、不愉快にならないように伝えなくてはいけないのではないかと今、台本を読んで感じています」

有森「昨今、米不足や税金の値上げなど、数々の社会問題があります。戦後の貧しさとはまた違うものかもしれませんが、今私たちが身に染みて感じている貧しさ、ひもじさは通じるものがあるように思います。だからこそ、今この芝居を上演する意味がある。今の私たちにリンクするものを見つけていただければと思います」

 意外にも舞台では初共演となる2人。

音無「(有森は)少女のようなしなやかなイメージでしたが、最近は年齢を経て、そこに強さや逞しさが加わったように思います。でも、昔からの可愛らしさは変わらない」

有森「音無さんは全てが素敵。女性としても憧れますし、女優さんとしても素晴らしい。こうした素敵な先輩のそばで一緒に芝居ができるのは本当に幸せです」

 本作で作・演出を務めるのは、骨太な群像劇を特徴とする劇団桟敷童子の東憲司。本作も人間の心の葛藤に焦点を当てた作品として作り上げる。

音無「東さんとはこれまでに3本ご一緒していて、ほとんどの東作品は観に行っている“追っかけ”です。東さんの作品は、生きるエネルギーやパッションがあり、メルヘンチックでどこか生々しい。そのバランスがおもしろく、それが東さんワールドなのかなと思います。今回も東さんを信じて、彼の思い描くお芝居をしたいと思います」

有森「私は初めてご一緒させていただきますが、ファンタジックな世界観が腑に落ちればお客さまとの距離がぐんと近づく、そんな魔法みたいなものがある作品なのかなと感じています。稽古に入ってみないと分からない部分も多いと思うので、これからの稽古が楽しみです」

(取材・文:嶋田真己 撮影:平賀正明)

 

生まれ変わっても今の自分から1つ何かを引き継げるとしたら?(モノ・能力なんでも)

音無美紀子さん
「丈夫な体を持たせて貰えた事に、いつも感謝しています。元気細胞を引き継ぎたいものです。体の元気は精神の健康にも繋がるし、元気ならば何でもできるものね。私、嫌なことはすぐ忘れてしまう特性があって、まあ、何とかなる!大丈夫!って、気持ちの切り替えも早い。これも健康だからだと思う。
 デビューして、今年で55年!! 凄いでしょ? 仕事が楽しくてしょうがない。芝居の稽古で苦しむことがあったとしても、幕が開けば、それは快楽に変わる! そしてアドレナリンが出続ける。だから疲れもしないし、どんどん出力が上がって行くんですよ。
 この“丈夫”と言う私の有り難い特性は次に生まれ変わっても、引き継ぎたいですね」

有森也実さん
「“ダンスへの情熱”です。次に生まれるとしたら、ダンサーになれるように。叡智を超えて、様々なモノと身体が繋がれるダンス。祈り、調和、笑顔……ダンスと共に生きる事を感じたいので」

プロフィール

音無美紀子(おとなし・みきこ)
東京都出身。1966年、劇団若草に入団。第74回文化庁芸術祭 演劇部門優秀賞をトム・プロジェクト『風を打つ』の演技にて受賞。2023年、第30回読売演劇大賞 優秀女優賞を『風を打つ』、劇団桟敷童子『夏至の侍』の演技にて受賞。今年2月に発表された第32回読売演劇大賞では、劇団チョコレートケーキ『つきかげ』、劇団桟敷童子『阿呆ノ記』の演技にて優秀女優賞を受賞した。自身の乳がんの闘病などの経験をふまえた講演活動も積極的に行い、近年は東日本大震災の被災地での毎年の開催を目標に、同じ志を持つ仲間たちと共に「音無美紀子の歌声喫茶」の活動もライフワークとしている。

有森也実(ありもり・なりみ)
神奈川県出身。雑誌モデルとして活動後、1986年、映画『星空のむこうの国』でデビュー。同年、映画『キネマの天地』のヒロイン役で、第29回ブルーリボン賞 新人賞、第10 回日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。1991年、ドラマ『東京ラブストーリー』で注目を浴びる。主な出演に、舞台『放浪記』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『ある八重子物語』、『化粧二題』、『フラガール -dance for smile-』など。

公演情報

トム・プロジェクト プロデュース
『鬼灯町鬼灯通り三丁目』

日:2025年8月29日(金)~9月4日(木)
  ※他、山梨公演あり
場:赤坂RED/THEATER
料:一般6,000円 シニア[60歳以上]5,500円
  U-25[25歳以下]3,500円
  ※各種割引は団体のみ取扱/
   要身分証明書提示
  (全席指定・税込)
HP:https://www.tomproject.com
問:トム・プロジェクト
  tel.03-5371-1153(平日10:00~18:00)

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