漫画家・こうの史代の代表作『夕凪の街、桜の国』は、戦後10年から平成にわたる時間軸で、原爆の投下地・広島と平成の東京に生きる家族を描いた物語。舞台版は17年に初演され、今年で5度目の再演となる。今回、現代に生きる主人公 七波の父・旭を、ダチョウ倶楽部のリーダー・肥後克広が演じる。
「広島にフラッと出かけてしまう……そんなお父さん役です。前回はモト冬樹さんが演じていて、映像で拝見しました。台本を読むと暗いテーマなんですが、それを上手くエンタメにしているいい作品だと思いました。若い役者さんが多いので、異彩を放つ存在になるでしょうね」
近年は役者としての起用も増えている肥後だが、お笑いとお芝居という2つの世界の往き来に、切り替えのコツはあるのだろうか。
「特にありませんが、あえて言うなら、お芝居では余計なことをしないことですね。僕らは世の中では『熱々おでん』、『熱湯風呂』のイメージだけど、デビュー当時からずっとコントをやってきましたから、そんなにスイッチの切り替えは必要ないんです。ただ、お芝居ではアドリブを飛ばすとか、客席のお客さんをいじって笑いを取るとか、そういうことはしない。台本に忠実に演じるようにしています」
物語は広島と原爆を背景に描かれている。肥後もまた、さきの戦争で大きな傷を負った沖縄の出身だけに、想いが深いのではないだろうか。
「80年前に沖縄戦があって、原爆ドームのように沖縄にも戦争の傷跡が色々残っています。しかも僕が生まれ育ったのはアメリカ統治下の時で、国際通り近くでしたが、観光客よりも米兵がいっぱいいて、『ギブ・ミー・チョコレート』をリアルでやっていました。さらに北部の方に行けば、フェンスを挟んでこっちはアメリカで、こっちは琉球という、沖縄でいうチャンプルーな世界。だから戦争そのものは知らないけれど、全く想像できない世界ではないです。演じる旭というお父さんは戦争中に疎開していた人で、僕は親と離れて暮らすというような経験はないけれど、その空気感というか肌感は分かりますね」
戦後80年。ここで肥後がこの役を演じることにも、深い意義を感じずにはいられないが、彼は笑ってこう締めくくった。
「でもね、歌あり踊りありのエンタメに仕上げて、最後は心温まるハッピーエンドですから、ぜひ劇場でご覧くださいってことですね」
(取材・文:渡部晋也 撮影:立川賢一)
プロフィール
肥後克広(ひご・かつひろ)
沖縄県出身。お笑い芸人を目指して上京し、コメディアン・杉兵助に師事。先輩の「コント赤信号」などとともに活動後、「ダチョウ倶楽部」を結成、リーダーとして知られる。リアクション芸などの独特な芸風が支持されて人気芸人となる。俳優としても、コメディからシリアスな役柄まで多彩にこなし評価を得ている。舞台への出演は約2年ぶり。現在放送中のNHK 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』に出演中。沖縄を舞台にした出演映画『風のマジム』が2025年9月12日に公開される。
公演情報
“STRAYDOG”Produce『夕凪の街 桜の国』
日:2025年7月17日(木)~21日(月・祝)
※他、広島公演あり
場:シアターグリーン BIG TREE THEATER
料:S席[最前列・特典付]10,000円
A席 一般6,000円 高校生以下3,000円
※高校生以下は要身分証明書提示
(全席指定・税込)
HP:https://www.straydog.info
問:STRAYDOG PROMOTION
mail:s-pro@straydog.info
(平日11:00〜18:00)