結成32年の老舗劇団。「笑って泣ける舞台」の進化は続く! “愛される大泥棒一味”が巻き起こす、愛と許しをテーマにした面白悪漢モノ

結成32年の老舗劇団。「笑って泣ける舞台」の進化は続く! “愛される大泥棒一味”が巻き起こす、愛と許しをテーマにした面白悪漢モノ

 1993年に明治大学演劇サークルOBの政岡泰志、小林けんいち、森戸宏明らを中心に結成された動物電気。人情喜劇をベースに、時にはプロレスのような体を張った芝居と昭和のニオイを残した笑って泣ける舞台は多くの観客を魅了してきた。そして待望の最新作は「面白悪漢モノ」。愛と許しをテーマに、愛される大泥棒一味がどんな物語を描くのか? 政岡が目指す「お客様と一緒に笑ってる芝居」の完成に期待したい。


―――近年は2年に1度の公演ペースが定着しています。多くのファンが待ちわびた今回はどんな内容になるのでしょうか?

政岡「今回はまずタイトルが最初に頭に浮かびました。愛と許しをテーマにして、それとは別に面白悪漢モノをやりたいという思いがあって、さて、どうしようかと考えていた時に、劇団内である事件がおこりまして。ええ、結構なピンチです。詳細は言えないのですが、先に書き上げていた企画書の内容に『愛と許しをテーマ』と書いてあって、ああ、許しってこういう事なんだと。人の罪を許して前に進んでいくことなんだという考えに至りました。企画書に書いてからまさかリアルにこういう事が起きるとは驚きましたが、そのことを舞台というリングに上げようというのが本作になります。
 チラシのキービジュアルを撮影した時はまだ悪漢モノをやると決まっていなかったので、本作の内容とは全く関係ないですが、タイトルに寄せただけです(笑)脚本については、鋭意執筆中です」

―――タイトルを聞いたおふたりはどんな印象を持ちましたか?

小林「テーマを聞いた時はすぐにはピンときませんでした。でも許しというテーマについては共感する部分がありますね。30年一緒にやってきて、色々とぶつかって、不満に思うこともあったはずですが、互いに許し、許され合ってきたからここまでやってこれたと思います。そういう部分では、多くの人にも共感してもらえる作品になるのではないかと思いました」

森戸「タイトルを聞いた時はハッと思いました。今までにない優しい感じで驚きましたね。一方では悪漢モノと聞いて、どうゆうことなんだろうと。許すとか許されるとかも今までの動物電気にはないキーワードです。許すって簡単な行為に聞こえますが、ここまで許しても、こっちから先は許さないという線引きをしてしまうと、それは結局許していないということにもなってきて難しいですよね。そこがどういう形で作品に反映されるのかとても興味があります」

―――笑いを軸にホロっと泣かせるテイストは変わらないと思っていいのでしょうか?

政岡「そう思ってもらっていいです。先日、機会があって教会に行ってきたのですが、あの優しく愛に包まれた感覚を作品に盛り込めたらと思います。
 映画『レザボアドックス』やドラマ『必殺仕事人』のようなカッコいい小粋な会話シーンを盛り込みたいですね。そこに笑いを混ぜていく。結局僕らがカッコつけても笑いにしかならないので(笑)」

―――特にまだ動物電気を知らない人に観に来て欲しいと。

政岡「動物電気としては、2年に1回の公演なので、どうしても時間が空いてしまい、若い人達に僕らを知らない人達も増えてきている危機感は感じます。先日もお芝居を観に行ったのですが、まったく別世界に感じました。長く演劇をやっていますが、どんどん新しい人達が出てきて、新しい芝居をしている。そういう若い人達ともつながっていきたいし、僕らの芝居も観てもらいたい。その反応は『おじさんたちが頑張っているな』でも十分嬉しいです」

―――おふたりも2年ぶりの本公演に込める思いはありますか?

小林「僕もこの2年間、色々な団体さんの芝居に出させてもらいましたが、やはり動物電気は特別ですね。他団体で芝居するときも、動物電気で培ったものをベースにしているので、僕らでしかできないことがあります。
 2年に1度の公演だからこそ、この期間に知り合った人達にも、『こんど動物電気の公演があるからね』と声をかけたりして、あくまでも動物電気を主軸に考えています。この2年で初めて五十肩になって、身体の変化を感じていますが、まだまだここからという気持ちで舞台に立ちたいです」

森戸「確かに2年という時間は大きいです。前回公演は30代、40代と変わらない感覚でできましたが、寂しい話、この2年間で老いを感じてしまって。目は悪くなるわ、白髪は増えるわ、身体は動かなくなるわ。それらは芝居の強みにはならないと思うので、受け入れつつも、どうごまかしていくかですよね。最近、芝居に哀愁が漂うと言われてるので、いい意味で蓄積されたものを芝居に生かせればいいかなと。そういう蓄積が出せるのも動物電気だからこそだと思います」

―――最後に読者の方にメッセージをお願いします。

政岡「哀愁を帯びて熟成しきった動物電気が、悪の華を下北沢の街に咲かせます。そこに芽生えた一輪の愛と、バカが花開きます。難しく考えずに笑いに来てください」

小林「毎回、観に来てくれた方に『楽しかった』『久しぶりに大声を出して笑った』と言ってもらえるのはとても嬉しいし有難いです。まだ動物電気を観たことがない方には絶対面白いので観に来てくださいと伝えたいです」

森戸「動物電気を知ってるけど、まだ観たことが無いという方に訴求したいですね。小劇場という非日常空間で老舗劇団の笑いを是非体験してもらいたいです。このメンバーで出来るベストな芝居を表現します。皆様のご来場を心からお待ちしております」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

プロフィール

政岡泰志(まさおか・たいし)
1971 年6 月13 日生まれ、広島県出身。ネオ演芸集団「HIGHLEG JESUS」 に、1992 年の旗揚げ以降 2002年の解散まで全作品に参加する一方で、1993 年より自身が作・演出をつとめる「動物電気」を主宰。俳優としても多くの作品に参加。天性の間合いと独特の存在感を持ち、人間の可笑しみと哀しさ、それぞれに行き来自在な心情の機微を絶妙なさじ加減で演じる。どんな人物も愛すべき魅力に満ち溢れさせる実力を持っている。

小林けんいち(こばやし・けんいち)
1972 年9 月19日生まれ、長野県出身。1993 年の旗揚げより「動物電気」に参加、体を張って笑いに転化させる力業を持つ同劇団の看板役者。不器用で朴訥な青年からイヤミなエリートまで幅広い役柄を得意とする。数々のキックやパンチなどを受けても悲惨に見えず笑いに転化させ、アウェイな空間でも力技でコバケンワールドに染めあげる強引さも持ち味である。

森戸宏明(もりと・ひろあき)
1973 年2 月8日生まれ、東京都出身。1993 年の旗揚げより「動物電気」に参加。白すぎる肌・濃すぎるヒゲ・怪しすぎる雰囲気で、なんともいえないうさんくささを放つが、ハンサムな声を持つ演技派でもある。黙っているだけでも醸すおもしろさを持ち、多くのCMに出演している。ひょうひょうとしながら、一番おいしい場面をさらっていく。

公演情報

動物電気 2025初夏公演『愛一輪 バカの花』

日:2025年6月7日(土)~15日(日) 
場:下北沢 駅前劇場
料:指定席 前売4,500円 当日4,800円
  自由席[整理番号付]
  前売4,000円 当日4,300円(税込)
HP:https://www.doubutsu-denki.com 
問:動物電気 mail:info@doubutsu-denki.com


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