
今年で390周年を迎える江戸糸あやつり人形結城座が、記念公演の第1弾として佐藤信の新作を上演する。本公演の経緯を、三代目両川船遊はこう語る。
両川「信さんと最初に出逢ったのは50年も前のこと。先代(十代目結城孫三郎)を中心に唐十郎さんの『少女仮面』をやった時でした。それからしばらく毎年のように一緒に作品を創っていましたが、この20年はご無沙汰で。アプローチはしていたのだけど、信さんが忙しくてスケジュールが合わなかったんです」
佐藤「でもその間も、こちらからお願いをして作品に参加してもらう事はよくあって、最近だと台北木偶劇団との公演を一緒にやってもらいました。僕は困ると結城座さんにお願いすることが多いんです」
両川・十三代目結城孫三郎親子は、今回の佐藤との再タッグを機に、結城座の成長への期待を抱いているという。
両川「50年前、僕は信さんからいい意味でしごかれたのが自分の土台になっています。今の劇団員にはその経験が無いので、一緒に仕事をしていろいろと汲み取ってほしいと思いました」
結城「僕が小さい頃にはもう信さんと父は一緒に作業していました。だから僕の中ではどこかのオジサンのような存在ですね(笑)。今の座員の中で信さんとご一緒したのは、父と母を除くと僕だけなんです。だから今回は重要ですし、これからにも必要で有り難いことですね」
作品は能の『融(とおる)』を下敷きにした現代劇だという。
両川「大変ですよ。武智鉄二さんのところで歌舞伎を学んでいた頃に、能を観世栄夫さんに習いましたが、当時から能には敵わないと思っていて、避けていたんです。だから今回の作品は褌を締め直してかからないといけません。でも、これで結城座の違う断面が出せれば良いと思います。今観ないと損しますよ(笑)」
佐藤「『融』は当時どういった人がこの作品を観ていたんだろうと思わせる特別な作品です。退廃の、浪費の極みを描いたこの作品を面白がるのは誰なのかと。そんな世界を現代と対比させて描きたいですね。能役者の清水寬二さんに客演していただきますが、清水さんのシテと人形で『融』を演じる訳ではありません。どうするかは内緒ですが。人形劇の面白さも見せたいと思っています」
結城「座員一同頑張りますから、きっと面白い作品に仕上がると思います。ぜひご覧いただきたいですね」
(取材・文:渡部晋也 撮影:敷地沙織 (平賀スクエア))
プロフィール

三代目両川船遊(さんだいめ・りょうかわ・せんゆう)
十代目結城孫三郎の次男として生まれ、4歳で初舞台。1972年、三代目両川船遊を襲名。人形遣いとともに写し絵師の活動も開始。1993年、十二代目結城孫三郎を襲名。2021年、結城孫三郎の名を息子の結城数馬に譲る。

十三代目結城孫三郎(じゅうさんだいめ・ゆうき・まごさぶろう)
十二代目の長男として生まれ、6歳で初舞台。2005年『夢の浮橋~人形たちとの源氏物語~』以降、全ての結城座公演に参加。2021年、十三代目結城孫三郎を襲名。結城座の座長となる。

佐藤 信(さとう・まこと)
劇団俳優座養成所を経て、アンダーグラウンドシアター自由劇場、演劇センター68/71(現・劇団黒テント)の創設に参画。1970年からは大型のテント劇場の中心的な演出家・劇作家として、1990年までの20年間、日本全国120都市におよぶ上演活動を展開した。その後、劇作家・演出家として多くの作品に関わる
公演情報
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江戸糸あやつり人形結城座『奢りの都市』
日:2025年6月11日(水)~15日(日)
場:中野 ザ・ポケット
料:一般5,600円 ペア券[一般2枚1組]10,500円
U30[30歳以下]3,300円 学生2,000円
※U30・学生は要身分証明書提示
(全席指定・税込)
HP:https://youkiza.jp
問:江戸糸あやつり人形結城座
tel.042-322-9750(平日10:00~18:00)