
婚礼を前に若くして死んだ女性の霊ウィリの伝説を元にしたロマンティック・バレエの名作『ジゼル』。東京バレエ団の十八番と言える作品において、ヒロイン ジゼルの恋人 アルブレヒトに挑む生方隆之介に話を聞いた。
「まだリハーサルは始まっていませんが、課題が多そうだというのが率直な思いです。テクニック的にも難しいし、物語がドラマティックで、キャラクターの雰囲気、繊細な表現が大切な作品。音楽も素晴らしいので、プロとして演じられるのは嬉しいですね」
本作の魅力、アルブレヒトというキャラクターについては、どう捉えているのだろう。
「人間の欲や醜さといった部分が表れているのが魅力だと思います。アルブレヒトは貴族で、あまり開放的じゃない環境に不満を持っていると解釈しています。そのフラストレーションの中でジゼルに惹かれてしまうけれど、自分の立場をわきまえなきゃいけないことも理解している。遊び人というイメージは持っていなくて、真面目だからこそ、こうなってしまったのかなと思っています」
今回の公演では、柄本弾・宮川新大とともにアルブレヒトを務める。
「自分の良さをそのままキャラクターに投影したいと思っています。僕は決められたことに対して疑問を持ち、変えられないかと悩んだり考えたりすることが多い。そういった部分が、僕が抱いているアルブレヒトの人物像と似ているので、シンクロさせられたら僕ならではの魅力になる気がしています」
本作で初めて東京バレエ団や『ジゼル』に触れる方に向けて、注目ポイントや魅力を聞くと。
「バレエの魅力は、音楽の美しさと身体表現を味わい、自分なりの解釈ができること。言葉がないからこそ、想像力を膨らませて楽しんでいただけます。東京バレエ団の強みはやはりコール・ド・バレエ(群舞)の美しさだと思います。一人ひとりが楽しみながら舞台に立って発信する思いが強いのも魅力ですね。1幕は特にそれぞれの主体性が出ています。2幕になるとウィリたちが登場して雰囲気が変わる。その対比を楽しんでいただけたら嬉しいです。自分自身初めて踊る役柄ですから、リハーサル期間を大事に過ごしたいです。人間ドラマが繊細に描かれている作品なので、それがうまくお客さまに届くように研究し、良い作品にできるように頑張っていきたいと思います」
(取材・文:吉田沙奈 撮影:友澤綾乃)

プロフィール

生方隆之介(うぶかた・りゅうのすけ)
群馬県出身。4歳よりバレエを学び始める。東京バレエ学校に入学し、同校Sクラスの海外研修制度で2015年にワガノワ・バレエ・アカデミーに留学。その後、ハンガリー国立バレエ学校で2年間学ぶ。2019年、同校を卒業。同年、東京バレエ団に入団し、10月に『春の祭典』で初舞台を踏む。2021年、ソリストに昇進。2024年よりファーストソリストとして活躍。
公演情報

東京バレエ団『ジゼル』全2幕
日:2025年5月16日(金)~18日(日)
場:東京文化会館 大ホール
料:S席15,000円 A席12,000円 B席9,000円
※他、各席種あり。詳細は下記HPにて
(全席指定・税込)
HP:https://www.nbs.or.jp/
問:NBSチケットセンター
tel.03-3791-8888
(平日10:00~16:00/土日祝休)