野村道子が声の仕事の黎明期を語り継ぐトークイベント『声優伝~声の宝石箱~』 「この人でなければ!」という個性を見つけて欲しい

 『サザエさん』のワカメちゃん、『ドラえもん』のしずかちゃんなど、国民的アニメの主要キャラクターの声を30年近く担当してきた声優・野村道子が、80代・90代の声優たちと共に「声優」という仕事の黎明期の経験を現代に語り継ぐトークイベント『声優伝~声の宝石箱~』が開催される。今なぜ貴重な話を広く伝えたいと思ったのか。野村自身がその熱い想いを語ってくれた。

 「4年くらい前から構想をしていました。洋画の吹き替えがどうやって始まったのか、国産アニメの黎明期には、どんな形でアテレコをやっていたのか、実際に経験している人たちの話を若い人たちに伝えていきたいなぁと。それが昨年、大山のぶ代さんや小原乃梨子さんをはじめ、ベテラン声優の方々がたくさん向こうの世界に行ってしまって……。もっと早く実現できていたら、という悔いと共に気持ちに火がついて、今やるしかない!と思ったんです。

 当時は『声優です』と言うと『あぁ、スーパーにお勤めですか?』と訊かれたくらい(笑)、声優という言葉も仕事も浸透していなかったから、劇団の俳優やアナウンサーなどを作品ごとにディレクターが召集して、最初から最後まで一発録りだったんです。今では考えられない話だし大変そうでしょう? でもそれぞれにすごく個性があって、やっていて本当に楽しかった。アラン・ドロンなんて誰もがずっと野沢那智さんの声で聴いていたから、実際にご本人が来日された時に声のイメージが違ってびっくりされましたよね(笑)。それほどこの人でなければ!という個性のある人たちが集まっていて、刺激も受けたし、勉強にもなった。でもコロナ禍以降はみんな別録りで、同じ作品に出ても一堂に会すことがないから、技術の進歩はもちろん素晴らしいことだけど、現場で勉強するのが難しい。

 今、声優養成所や事務所はたくさんあるし、ゲームやネット配信ものなど仕事も膨大にあって、若い人たちが声優として活動すること自体の門戸は広いんです。でもAI が急激に発達していて、声優は将来なくなるであろう仕事の1つに数えられてもいる。そうなった時にどうやって生き残るの?と考えると、AIには絶対に真似のできない情熱や、経験の蓄積、何よりもこの役はこの人でなければダメだという個性が必要になってくる。だから、今回は音響監督の方に『キャスティングはどう決めたのか?』という話もしていただく予定です。さらに、羽佐間道夫さん・野沢雅子さんと私のトークや、他のベテラン声優の方たちからも事前にお話を伺って様々なエピソードを映像でご紹介しようと思っています。そんな話から自分自身の個性を見つけて欲しいので、ファンの方はもちろん、声優をやっている、また目指している方たちにも是非聞きに来ていただきたいですね」

(取材・文:橘 涼香 撮影:友澤綾乃)

プロフィール

野村道子(のむら・みちこ)
神奈川県生まれ。東京アナウンスアカデミー卒業後、劇団山王、東京都俳優生活協同組合、ティー・エー・ピー(TAP)、青二プロダクションなどを経て、1984年に夫である声優・内海賢二の賢プロダクション設立と同時に所属。『サザエさん』のワカメちゃんや『ドラえもん』のしずかちゃんと、国民的人気アニメの声優を長く務めた。

公演情報

野村道子プロデュース『声優伝〜声の宝石箱〜』

日:2025年5月15日(木)14:00/18:00開演
  ※開場は開演の30分前
場:草月ホール
料:6,500円
  通しチケット11,500円(全席指定・税込)
HP:https://x.com/seiyuden
問:野村道子プロデュース
  mail:seiyuden2025@gmail.com

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