止まらない暴力の連鎖は、いったい何をもたらすのか 4年振りの劇団公演はシリアスな問題に迫る意欲作

 「もしも日本で暴力を伴う“革命”がおきたら……」。劇団プープージュースを主宰し、座付き作・演出家として活躍する山本浩貴は、そんな思いつきから4年振りの劇団公演となる新作『革命の家』を書いたという。劇団と縁の深い、髙橋メアリージュンを主演に迎えるほか、信頼の置ける劇団員と客演キャストで不条理に立ち向かう人々を描き出す。
 山本を始め、旗揚げ当時からのメンバーである西山咲子、久米伸明・若手の成長株である伊藤桃香の4人に話を聞く。


―――なかなか刺激的なタイトルですが、どんなきっかけがあってこの作品を書かれたのでしょう。

山本「“革命”という言葉は、日本だと体感しにくいと思いますが、もしもこの国で暴力を伴う革命が起きたら、自分たちはどう行動するだろうと思ったんです。人類の歴史上、暴力の連鎖が止むことがないし、止めようとは思っているけれど止まらず、現在も世界のあちらこちらで戦争や内戦が起きている。ではなぜ続くのか。その答えを出そうと思って書いたわけではないですが、しっかり考えてみたいとは思いました。
 それで最初は“革命”とはなにかについて調べるところから始めました。何をもって革命とするのか。そのうちにいつ起こるかわからない世の中の不条理。それには戦争や災害も含まれますが、それに対してどうやって対抗するのかという興味に方向性が変わっていきました」

―――「革命の家」というのは暴力的な活動を行う集団とのことですが、元は被害者遺族の集まりだそうですね。つまり様々な不条理に立ち向かう人々という訳ですね。

山本「事情はそれぞれですが、それを背景に暴力を肯定する集団が出てきたらどうなるか。ここはある種ファンタジー的ではありますね」

―――シリアスで重いテーマだと思いますが、劇団メンバーの皆さんはどのような反応をされましたか?

久米「僕は山本とはよく話すのですが、その中で彼の熱意にひかれました。日本で暮らしていると不条理の原因がわからないこともあるんです。社会のシステムに組み込まれて、“考える”ことを放棄させられている気がします。僕もこの作品で、社会と自分自身について考えたので、皆さんにとってそういうきっかけになればいいと思います」

伊藤「これは普段から考えているテーマじゃないですよね。だから山本さんの意思を聞き、台本を読んでみて改めて考え、自分が知らない面に出会い考えました。だから今度は舞台から観客の皆さんに投げかけて、皆さんが考えるきっかけになればいいなと思っています」

西山「最初聞いたとき、相当な作品になりそうだなと思いました。今までに無いテーマで、ちょっとやそっとで立ち向かえないというのが第一印象でした。世界で戦争が起きているのはわかっていても、どこか人ごとでしたが、この作品を通して考えるようになりました」

―――テーマを聞いて驚きませんでした?

久米「振り切った感じはしましたね。山本はコメディもシリアスも手がけますが、今回はこちら側に振り切ったと」

山本「劇団を立ち上げて18年になりますが、これまでも“フェイクニュース”といった社会的テーマを持った作品を書いています。でも重い作品の後はコメディをやりたくなるんですね。今回は確かに思い切り振り切っているかもしれませんが、両方持っているのは僕達の特色なのかも知れませんね」

―――主演に女優の髙橋メアリージュンさん。尚玄さんを迎えます。髙橋さんは映像系の女優さんというイメージが強いのですが。

久米「高橋さんは、初舞台の時にウチの劇団の公演に出ていただいて。今回、高橋さんにとって10年ぶりの舞台が、我々プープージュースというのは、とても深い縁を感じますね」

山本「感情のエネルギーと、演技への熱量が凄く高く、本当に素晴らしい役者さんです。今回は企画書の段階で、出演を引き受けてくださいました。面白いから是非やりたいといってくれて」

―――さらに尚玄さんが、ドキュメンタリーとして「革命の家」に迫る監督役ですね。

山本「尚玄さんは主演された映画『義足のボクサー』を観たときに話す機会があって、その時に感じ入ってお願いしました。その他も以前から知っていて、信頼できる方があつまりました。内容に暴力の要素もある重い作品なので、どんな反応が来るか心配しましたが、皆さん興味を示してくださいました」

―――では、皆さんからの抱負を伺いましょう。

伊藤「私は『革命の家』に取材に行く撮影クルーの役ですね。だから客席のお客さんと同じ目線を持っている存在になるんです。繊細に誠意をもって取り組みたいです」

西山「私は『革命の家』のメンバーですね。話に出ていますがこの団体は色々な事件に巻き込まれた被害者が集まっているんです。だから私もそういった皆さんの手記などを読んで学んでいます。皆さん死ぬまで続く闘いに身を置かれている。だから私も失礼がないよう、慎重に取り組んでいきたいです」

久米「不条理というのは誰もが向き合う可能性があることです。それをどうやったら乗り越えられるか、作品を通して訴えています。これはまた一種のエールでもあると思っています。エネルギーを放出して、見ている人の人生を変えたいですね」

山本「作家としてはどれだけ作品にのめり込めるかが勝負でもあるのですが、それができる題材を見つけるには時間もかかるんです。今回は2年ぐらいかかりましたね。そんなテーマに出会えたことは幸せだと思っています。劇場に観にいらっしゃった方と一緒に考える、そんなきっかけになれば嬉しいですね」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

西山咲子(にしやま・さきこ)
神奈川県出身。劇団プープージュースの旗揚げから参加し、劇団作品に出演するほか、他団体への客演、ドラマ・映画などに多数出演している。

久米伸明(くめ・のぶあき)
愛知県出身。明治大学で学生劇団に参加。劇団プープージュースには第2回公演から参加している。また、こども演劇プロジェクトN.G.A.の代表も務めている。俳優としてだけでなく脚本・演出家としても活躍し、パルテノン多摩小劇場フェスティバルで最優秀作品・脚本賞を受賞する。

伊藤桃香(いとう・ももか)
埼玉県出身。8歳の頃から役者を始め、19歳で劇団プープージュースに入団。劇団公演に出演するほか、ドラマ『君が死ぬまであと100日』、『ブラックぺアン シーズン2』など舞台・映像ともに精力的に活動中。

山本浩貴(やまもと・こうき)
東京都出身。20歳の頃から演技を学び、所属していた劇団SLAの仲間達と2005年に劇団プープージュースを旗揚げ。以降、全作品の作・演出を手がけている。俳優として舞台をはじめ、ドラマ・映画にも出演。2013年、『サムライダッシュ』で映画監督としてデビュー。2023年には、監督・脚本を務めた『オジさん、劇団始めました。』(渡辺いっけい主演)が公開された。

公演情報

劇団プープージュース 第30回公演
『革命の家』

日:2025年1月9日(木)~13日(月・祝)
場:シアターサンモール
料:前売8,000円
  当日8,500円(全席指定・税込)
HP:https://www.pu-pu-juice.com
問:劇団プープージュース tel.090-6702-7401

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