千歳ゆう× 植野祐美による「UMI PRO」旗揚げ公演 吉原遊郭を舞台に花魁たちが描き出す 強く生きる女性たちの美しさ

 千歳ゆうと植野祐美によるプロデュースユニット「UMI PRO(ウミプロ)」の旗揚げ公演となる舞台『くるわ、くるら』が2025年2月12日に開幕する。江戸時代中期の吉原遊郭を舞台に、意図せず遊郭に入り込んでしまった双子の姉妹が遊郭でいきていく姿を美しく、そして儚く描く。脚本を千歳、演出を三貝豪が担当し、主人公の双子の姉妹を秋田知里と鈴木心緒がW主演で務める。千歳と植野、秋田、鈴木の4人にUMI PROについてや本作への意気込みなどを聞いた。


―――最初に植野さんから本作の制作に至る経緯や作品に込めた想いを教えてください。

植野「今回、UMI PROの旗揚げ公演になります。これまで私がプロデュースしてきた団体、Daisy times produceの枠を飛び越えて、(千歳)ゆうちゃんと一緒に、これまでとはまた違った毛色の作品を作りたいという想いから立ち上げさせていただきました。私がこれまでの団体でやっていることは、どちらかというと王道のエンタメ作品で、ハッピーに終わる舞台が多いのですが、今回はゆうちゃんとハッピーに寄りすぎない作品を作っていこうと話しています」

―――そうすると、UMI PROのコンセプトは「これまでと違う作風」ということなのでしょうか?

植野「はい、私の中ではそう考えています」

―――今回は、千歳さんが脚本を担当されます。

植野「ゆうちゃんとお茶をしているときに、脚本に興味があるという話を聞いたことから、UMI PROが始まりました。私もやってみたいものがあると。そのときには、すでに私は舞台のプロデュースもしていたのですが、まだやってみたいことはいくつもあって。そのうちの1つが遊郭を舞台にした作品でした。そんな話をしたら、1週間後には脚本を送ってくれて(笑)」

千歳「オープニングまでを1日で書き上げたんですよ(笑)」

植野「出来上がったものを見て、『嘘でしょ? どうなっているの?』って(笑)。あまりにも早いので。『舞台が遊郭で、花魁の話をやってみたい』というオーダーだけでここまで書いてくれるなんてと本当に驚きました」

―――すごいスピードですね。千歳さんはこれまでも脚本は書かれていたのですか?

千歳「いえ、舞台の脚本を書いたのは本当に初めてです。イベントなどで自分が読むための朗読劇は何度か書きましたが、やっぱり舞台の脚本と朗読劇の脚本は全く違うので、書いているのが楽しくて、これが実現できたらいいなと思いながら書いていたらあっという間に(笑)」

―――植野さんから「遊郭を舞台に」というお話を聞いたときに、ストーリーやキャラクターがすぐに思い浮かんだのですか?

千歳「今回、双子がテーマなのですが、双子を登場させたいというのはその場で伝えた気がします。なので、そこから双子がどうなっていくのかを発展させて考えてみたら、すんなりと書き進められました」

―――遊郭を舞台にしたいというのは、どのような発想からスタートしたのですか?

植野「まず、華やか。ちょうどそのときに、私が遊郭や花魁を描いた漫画にハマっていたというのも理由のひとつです(笑)。きっと遊郭に来たくて来ているという女性はほとんどいなかったと思います。華やかな裏にも憎しみや嫉妬などいろいろな想いが渦巻いている世界を描けるのは遊郭以外にあまりないと思いました。私自身がやってみたいと思う世界観でした」

千歳「私は、女性が活躍できる作品が欲しいとずっと思っていました。団体的にも女性をメインにしてやっていきたいという話を(植野と)していたので、今回の作品も女性の強さや女性社会を描きたいという想いがありました。遊郭は見た目や周りの目で評価されてしまうところですが、そうじゃない面もあるということ、人間の美しさや生きることの美しさを描いていけたらいいなと思っています」

―――秋田さんと鈴木さんは、この作品への出演が決まったときはどのようなお気持ちでしたか?

秋田「(千歳)ゆうちゃんとゆみみ(植野)とは5年くらい前に舞台でご一緒してからのお付き合いで、もともとゆうちゃんが脚本を書きたいと聞いていたし、ゆみみが舞台の制作をされているのを知っていました。今回は、連絡を取っている中で『スケジュール空いている?』と聞かれて、『空いてる! ゆうちゃんがやるならやる』という感じで勢いで決まった出演でした(笑)。実は、私が初めて出演した舞台が花魁の話だったんですよ。それはドタバタコメディだったので、今回とはまた違いますが、同じ花魁ということで不思議な縁を感じます。2人が作りたかった世界をとにかく死ぬ気で生きたいと思って受けさせていただきました」

鈴木「私はお2人からご連絡をいただいて出演が決まったのですが、そもそもこれまで舞台の経験も少なかったですし、初めて主演でオファーいただいたのですごく緊張しています。これまではエンタメ系の楽しい作品に出演させていただくことが多かったので、華やかさだけではない今回の舞台は挑戦でもありますし、繊細なところまで表現していけたらと思います」

―――植野さんと千歳さんは秋田さんにどんな期待がありお声をかけたのですか?

秋田「流れだったよね(笑)」

千歳「でも、私はちいちゃん(秋田)がステージに立っている姿がすごく好きで。華やかな雰囲気も持っていますし、どんな役もキラキラ演じてくれるのが好きなんです。それにしっかりと役に向き合って真面目に演じてくれるので、今回もすごく頼りにしています」


植野「もちろん華もありますが、たくさん経験があるというのも魅力でした。今回、すごく難しい役なので、信頼できる役者さんにお願いしたくて秋田さんに声をかけさせていただきました」

秋田「光栄でございます」

―――秋田さんは、共演をされたり仲良くされている方がクリエイトする作品に出演するのは心強さもあるのではないですか?

秋田「そうですね。新鮮ですし、心強いです。しかも今回は、ゆうちゃんも出演するんですよ」

千歳「そうなんです……」

秋田「なので、それも楽しみです。これまでの舞台でも、2人とは、どう演じたらいいんだろうと悩んだり相談しながら作ってきたので、今回も今までとそれほど変わらない関係値で、頼りながらできるのかなと思っています」

―――では、鈴木さんにオファーをしたのはどのような思いがあったのですか?

植野「これまでにSNSなどでオススメの役者さんを教えていただくことがあったんですよ。やっぱり、お客さんたちが『この人いいな』と思う方は、輝いていて、多くの人を引き寄せるのだと思います。なので、お客さんの『いい』にはすごく説得力があると思っていて。それで、お客さんに教えてもらうことがあるのですが、その中で、鈴木さんのお名前を何度も聞いていたので、いつかご一緒したいと思っていました。今日、初めてお会いしたので、これまでSNSでしか存じていませんでしたが、今回、演じていただく『いと』という役は、清純で純粋なイメージのある役柄ですので、そうした役がきっと合うのではないかなと思ってお声をかけさせていただきました。今日、お会いしてみたら本当にぴったりで。すごくかわいらしくて、改めてお声をかけてよかったと確信しました」

千歳「私もぴったりだと思いました。嬉しいです」

植野「きっと突然、声をかけられて驚いたと思います。ただ、私の周りにも共演したことがあるという方がいて、いい方だとお伺いしていたので、今回お願いしました」

鈴木「嬉しいです、私も出演できることがすごく楽しみです。先ほど、女性の強さを描くというお話をされていましたが、やっぱり男性が同じ脚本を書いてもこういう話にはならないのかなとも思いますし、女性ならではの感性や視点で描かれた作品だと思うので頑張ります」

―――秋田さんと鈴木さんは、脚本を読んでそれぞれの役柄についてどのように感じましたか?

秋田「今回、鈴木さんと双子という設定なんですが、さっき年齢を聞いたら10歳差があるらしくて。いよいよ頑張らなくてはいけないなと思っています(笑)。双子らしさももちろん作っていきたいと思いますし、前半のワクワクした空気からいろいろな物事を経て、変わっていくところを見せられたらと思います。ゆうちゃんとお話をする中で感じている“ゆうちゃんが好きそうなもの”がこの物語には詰まっていて、特にオープニングは“ゆうちゃんっぽい”世界観になっているので、そうしたところも楽しんでいけたらと思いますし、私がこれまで演じてきた役の中で、今回の役が1番難しいと思うので、とにかく一生懸命全力で役と向き合いたいです」

鈴木「いとちゃんは、双子の妹で、あまり自分から意見を言わず、お姉ちゃんのあとをついていくだけでしたが、遊郭の世界を知り、自分が憧れていたキラキラした世界とは違う裏側を見たことで、そよちゃんを救いたいという思いが強くなっていきます。いとちゃんが変わっていく姿をうまく表現できたらと思います」

―――遊郭や花魁に対して、今回の脚本を読んでイメージは変わりましたか?

鈴木「今まで映像でしか見たことがない世界だったので、華やかで艶やかな世界をイメージしていましたが、もちろんそうしたところもありつつ、暗い部分も描かれているところに惹かれました」

秋田「最初に出演した舞台が遊郭の物語だったので、そのときに遊郭の成り立ちやその歴史も調べて、これが日本ならではのものであると感じるようになりました。女の人たちがどんな気持ちでそこで過ごしているのかも改めて深く考えて今回、取り組んでいけたらと思っています」

―――今回、千歳さんもご出演されるんですね。どんな役柄でご出演されるんですか?

千歳「遊郭の闇の部分もたくさん見てきて、やりきっている人です。病に伏して、隔離されて、死ぬのを待っている花魁です。キラキラした部分ではない、闇の部分を描いている人物なので、落差を見せられたらいいなと思っています」

―――遊郭が舞台ということで、お衣裳や舞台セットも気になるところですが。

植野「私自身も初めて和物に取り組むので、すごく大変です。用意するものも多いですし、準備にも膨大な時間がかかっています。ですが、きっと華やかなカッコいい装いになると思います。今回は、信頼できる美術さんにお願いすることになったので、衣裳も舞台も、そして劇場も合わせて和の世界を作っていけたらと思っています」

―――改めて公演への意気込みと読者にメッセージをお願いします。

植野「UMI PROの旗揚げ公演になります。新しいキャンパスの1ページ目になるので、しっかりと皆さんを支えられるように頑張っていきたいと思います。私自身も役者をやっているということもあって、皆さんが楽しく、そしてキレイにカッコよく舞台で輝けるようにしっかり手助けしていけたらいいなと思ってます。ぜひ劇場まで足を運んでくださると嬉しいです。よろしくお願いします」

秋田「本当に楽しみにしている作品なので、私たちも盛り上げていきたいなと思っています。大好きな2人が立ち上げたUMI PROです。今まで少しでも私たちに関わってくださった方は全員3回は足を運んでいただけたらと思います(笑)。観ていただいて後悔しない作品をここから一生懸命、全員で作っていきますので、ぜひ3回、足をお運びください!」

千歳「今回、初脚本ということで、心からワクワクしています。これまで役者をしてきましたが、脚本を書くことで、人と繋がり、会話をすることが好きだからこの仕事をしていたんだと思うようになりました。関わってくださるキャストの皆さん、そしてスタッフの皆さんと繋がれるのが脚本家なのだと今、感じています。これからもたくさんの作品を作っていきたいと思っているので、ぜひその1歩としてたくさんの方にご覧いただきたいです」

鈴木「旗揚げ公演に参加させていただけることがすごく光栄です。本当にありがとうございます。初めての舞台で主演ということもあってすごく緊張はしていますが、脚本の世界観を大切にしつつ、お客さまに楽しんでいただける舞台を作っていきたいと思います」

(取材・文&撮影:嶋田真己)

プロフィール

秋田知里(あきた・ちさと)
東京都出身。歌手、アイドル。東映公認ガールズユニット「仮面ライダーGIRLS」のメンバー。ユニットのアーティスト活動だけではなく、ソロとしても活動中。近年の主な出演作に、劇団TEAM-ОDAC「キクネ~僕らに出来ること~」神田美優役、シューティング歌劇「ゴシックは魔法乙女」ラナン役など。

鈴木心緒(すずき・こころ)
タレント・女優。「オールナイトフジコ」に「フジコーズ」としてレギュラー出演中。近年の主な出演作に、舞台『ガクサイ』映画『ノルマル17歳』、『ゆい』など。映画・ドラマ・ラジオ等多方面で活動中。

千歳ゆう(ちとせ・ゆう)
群馬県出身。中学時代に放送部に所属。地元のFMラジオ局でパーソナリティを務める。日本大学芸術学部映画学科演技コースに入学。舞台『ガラスの仮面』に感動し、舞台女優に興味をもちはじめる。卒業後、2017年よりILLUMINUSで本格的に活動を開始。“女王ステ”シリーズでは様々な重役をこなし、実力派女優として注目を集める。現在まで映像・舞台・ミュージカル・声の出演など幅広く活動している。近年の主な出演作に、舞台『風が強くて吹いている』ヒロイン・勝田葉菜子役、『魔術士オーフェンはぐれ旅』レティシャ・マクレディ役、ミュージカル『悪ノ娘』ミスカンパーニュ役な、映画『あのコはだぁれ?』(清水崇監督)など。

植野祐美(うえの・ゆみ)
8月10日生まれ、神奈川県出身。Daisy times produce主宰を務めつつ、自身も舞台を中心に活躍中。近年の主な出演作品に、ILLUMINUSガールズゴシックシリーズ舞台『赤の女王』フランツィスカ役、舞台『家族のはなし』2022 南沢役など。

公演情報

UMIPROduce 旗揚げ公演
舞台『くるわ、くるら』

日:2025年2月12日(水)~16日(日)
場:新宿シアターモリエール
料:SS席[前方2列・特典付]9,500円
  S席7,000円 A席6,000円(全席指定・税込)
HP:https://umiproduce.official.ec
問:UMI PRO mail:umipro212@gmail.com

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