2012年に初演された永井愛 作・演出の三人芝居『こんばんは、父さん』が、風間杜夫・萩原聖人・竪山隼太によって再演される。廃墟となった町工場を舞台に、父親を風間、一流企業の出世頭から社会の負け組へと転落した息子を萩原、ひょんなことから父子に関わることになった青年を竪山が演じる。
風間「大きなことは起こらない芝居です。でも、ちょっと歪んだ親子関係に僅かな光が見えてくる。流行りの言葉で言えば、“ハートウォーミング”な舞台です」
萩原「ちょっと歪な親子が再会し、そこに他人が介在することで現実と向き合わざるを得なくなっていく姿が描かれます。生きていると、リアルにあり得る状況かなと思います。それが親子ではなく、友達だったり元恋人だったりするのかもしれませんが。そこには当事者にしかない特別な感情があって、それがこの芝居の根っこにあるのかなと感じています」
親子を演じる風間と萩原は、旧知の間柄だ。
風間「聖人が15~16歳の頃から“息子”だと思っています。40年近くかけて親子関係を作っていますから、バッチリです」
萩原「僕の中で風間杜夫という俳優さんはスペシャルな存在。知り合ってからこれほど時間が経った今、親子という役柄で改めて出会わせていただけたことはとても刺激的で嬉しいです。また、1つのチャレンジだとも思いますので、喜んで向き合っていきたいと思います」
そんな2人と対峙する竪山は、どちらとも初共演だという。
風間「聖人の一回り下、僕にとっては三回りくらい下ですが、とにかく真面目」
萩原「きっともの凄くプレッシャーはあると思いますが、それに負けないくらい明るく前向きで、真面目です。きっと本読み初日からセリフも全部入っていると思うのですが、それは(プレッシャーなので)やめて欲しい(笑)」
公演に向けて3人でじっくりと芝居に向き合う稽古が続く。
風間「チケット争奪戦になると思いますので、とにかく早めに予約をしていただいて(笑)、多くの方に観ていただきたいと思っております。2024年の最後を飾る名作にきっとなります。ぜひご覧になってください」
萩原「今年1年大変だったなと感じている方も、このお芝居を観ていただければ来年良いことがあるかもしれないと思っていただけると思います。僕たちは本気でそう感じていただける作品を目指しますので、ぜひ楽しみにしていてください」
(取材・文:嶋田真己 撮影:間野真由美 ヘアメイク:廣滝あきら)
風間杜夫さん
「まだ20年は経っていませんが、これからも続けようと心に決めていることがあります。それは毎朝の読経です。ちょうど10年前、TBS『ごめんね青春!』で和尚の役を演じた際に、「般若心経」を唱えて欲しいとの要請があって、経本を読みながらでは変だろうと、丸ごと覚えました。結果そのシーンは無かったのですが、それからは、「般若心経」が朝の日課になりました。逝ったひとを偲び、感謝の念を込めて唱えています。余談ですが、ひとり芝居 『ピース』 の劇中で客席に真向かって読経をする場面があり、覚えたことが役に立ちました。ちなみに、「風間杜夫ひとり芝居シリーズ」 は、お客様のおかげで27年も続いています」
萩原聖人さん
「麻雀は20年以上やっています。麻雀をそんなに続けるなんて“ダメ人間”だからですよ、そんなこと言ったら怒られちゃうかもしれないけど。でも、やるなら“道”のつもりでやらなきゃとは思っているので、演技も麻雀も50-50じゃなく、100-100でやっています」
プロフィール
風間杜夫(かざま・もりお)
1949年生まれ、東京都出身。早稲田大学中退。俳優小劇場付属養成所を経て、1971年に「表現劇場」を旗揚げ。1977年よりつかこうへい作品の主軸俳優として人気を博す。1982年、映画『蒲田行進曲』で脚光を浴び、1983年に『スチュワーデス物語』でお茶の間に浸透する。以来、その演技力は高い評価を得て、数多くの演劇・映像作品をはじめ、幅広いジャンルで活躍。『ひとり芝居三部作』で平成15年度文化庁芸術祭賞 大賞・第11回読売演劇大賞 最優秀男優賞受賞。
萩原聖人(はぎわら・まさと)
神奈川県出身。1993年、映画『学校』、『教祖誕生』、『月はどっちに出ている』で日本アカデミー賞 優秀新人俳優賞と話題賞(俳優部門)を受賞。以降も映画・ドラマ・舞台・ナレーションなど幅広く活躍。近年の主な出演作に、映画『Fukushima 50』、『島守の塔』、『餓鬼が笑う』、『海の沈黙』、ドラマ『トッカイ〜不良債権特別回収部〜』、『新聞記者』、『神の子はつぶやく』、『厨房のありす』、『ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―』、舞台『魔術』、KERA・MAP#010『しびれ雲』、『「GOOD」-善き人-』など。
公演情報
二兎社公演48『こんばんは、父さん』
日:2024年12月6日(金)~26日(木) ※他、地方公演あり
場:俳優座劇場
料:一般8,000円
25歳以下4,000円
高校生以下1,000円 ※要身分証明書提示
(全席指定・税込)
HP:https://nitosha.com/nitosha48/
問:二兎社 tel.03-3991-8872(平日10:00~18:00)