心浮き立つメロディーと共にクリスマスの奇跡を体感できるバレエ『くるみ割り人形』。今年の東京バレエ団は全5組の主演キャストで上演する。くるみ割り王子役を務める生方隆之介は作品について次のように語る。
「東京バレエ団では2019年から現団長の斎藤友佳理さんの演出・振付版を上演していますが、舞台装置や衣装がとても華やかでカラフルです。またバレエ団のコール・ド(群舞)の洗練された美しさも、存分に味わっていただけると思います」
くるみ割り王子は心優しい少女 マーシャの助けでねずみの王様に勝利し、人形の姿から王子へと姿を変え、彼女をクリスマスツリーの世界の旅へといざなうという役どころ。踊り手としてどのようなことが求められるのだろうか。
「世界観を壊さないよう、しっかり役になりきることが重要だと考えています。たとえば人形から王子へと変わる場面では少女を守り、クリスマスツリーの世界へエスコートするジェントル性が求められます。また王子役は音楽の中で洗練された動きや美しいポジションを見せることが大事だと思いますが、その分、ごまかしがきかないとも感じます。表現にしても単にパッションを出すだけではダメ。塩梅が難しいですね」
生方は2023年にくるみ割り王子役デビュー、今年が2度目の挑戦だ。今回の個人的な課題をたずねると。
「2人で踊るパ・ド・ドゥには難しいリフトがいくつも入っています。昨年は皆さんに見守っていただきながら稽古を重ね、本番を終えたという感じだったので、今年はもう少し皆さんに安心感を与えられるようにしたいです(笑)。テクニック的にも演技の部分も、前回の経験を踏まえてレベルアップできればと思っています」
生方のパートナーは涌田美紀。これまでにも何度か組んでおり、信頼をおける存在だ。
「美紀さんはテクニックがしっかりしていて、気持ちの面でも僕を引っ張っていってくれる先輩です。ただ今回、役柄的には僕がリードする立場なので、舞台上ではそう見えるように頑張りたいなと思います。パートナーリングに関しては(柄本)弾さんにいろいろ教えていただいているのですが、本当にいろいろな引き出しを持っていてすごいなと思います。女性ダンサーにいかに気持ちよく踊ってもらうかを意識し、取り組んでいます」
より進化した『くるみ割り人形』を観客に届けるための、生方の探究が始まる。
「くるみ割り人形から王子への変身は、団長がとても大切にされているシーン。顔の角度や目線の付け方など、細かなところまでこだわって演じたいです。また物語上、出番直前まで動けないなど制約がありますが、役になりきり舞台を楽しむことで、その難しさを越えていければ」
(取材・文:木下千寿 撮影:友澤綾乃)
プロフィール
生方隆之介(うぶかた・りゅうのすけ)
群馬県出身。4歳よりバレエを学び始める。東京バレエ学校に入学し、同校Sクラスの海外研修制度で2015年にワガノワ・バレエ・アカデミーに留学。その後、ハンガリー国立バレエ学校で2年間学ぶ。2019年、同校を卒業。同年、東京バレエ団に入団し、10月に『春の祭典』で初舞台を踏む。2021年、ソリストに昇進。2024 年よりファーストソリストとして活躍。
公演情報
東京バレエ団 創立60周年記念シリーズ11
『くるみ割り人形』全2幕
日:2024年12月12日(木)~15日(日)
※他、地方公演あり
場:東京文化会館 大ホール
料:S14,500円 A12,000円 B9,000円
C7,000円 D5,000円 E3,000円
※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
(全席指定・税込)
HP:https://www.nbs.or.jp
問:NBSチケットセンター
tel.03-3791-8888(平日10:00~16:00/土日祝休)