舞台にリアルな命を存在させて、台詞の後ろに渦巻く感情や情熱まで伝える 中山優馬が全身全霊を懸けて挑む、スペインの傑作戯曲

舞台にリアルな命を存在させて、台詞の後ろに渦巻く感情や情熱まで伝える 中山優馬が全身全霊を懸けて挑む、スペインの傑作戯曲

 スペインを代表する劇作家 フェデリコ・ガルシーア・ロルカの戯曲『血の婚礼』が、12月に上演される。互いの家族の期待を背負いつつ、結婚式を目前に控えた1組の男女の元に、花嫁の昔の恋人 レオナルドが現れ、全てを変えてしまう物語だ。実際の事件をもとに執筆され、ロルカの三大悲劇の1つとして知られる傑作戯曲である。今回、主演を務めるのは、ソロでの歌手活動に加え、ドラマ・映画・舞台と俳優としても活躍の場を広げている中山優馬。この作品への想いを聞いた。

 「以前に森山(未來)さんが演じられた舞台を観て、愛の物語ではあるものの、救いはどこにあるのだろうとも思いました。でも確かに僕は愛を目撃したし、登場人物は皆、『自分より強く生きているな』と感じる人ばかり。そして、“それでも人生が続いていく”点が描かれているのもすごいなと思いました。演劇として非常にパワーのある作品で、とても魅力的です。ただ一歩間違えれば、スカスカになってしまう危なさもある。観客の視覚や聴覚に訴える以上に、血液を震わせるような“何か”がなければ成立しないので、大きな挑戦になるなと思っています」

 演出を務めるのは、多彩な作品を世に贈り出し続けている日本演劇界の巨匠 栗山民也。「レオナルドは、発する言葉の後ろに何かを持っている俳優に演じてほしい。ヒリヒリしたものを共に作り上げていきたい」という栗山の意向でのキャスティングだと聞き、中山の顔がほころんだ。

 「そんな俳優でありたいと常に思っていますし、ヒリヒリに挑戦したい気持ちも強いので、率直にすごく嬉しいです。栗山さんの現場は、地力を試される。『舞台の上に立つとはどういうことか』など、原点から戦いが始まっている感覚があります。栗山さんの演出でもがけばもがくほど、よりよい表現に近づいていくのだと思うので、またご一緒できるのが楽しみでもありますし、ビビってもいます(笑)」

 1933年に初演され、世界で上演が重ねられている本作。中山はどのようなところに魅力を感じているのだろうか。

 「物語の背景には戦争や文化、当時の風習などの影響が大きくあります。それでも人生で一度ぐらいは理性をかなぐり捨てて、レオナルドのように生きられたら、と憧れる気持ちはあります。彼は絶対にやってはいけないことをしてしまうけれど、それでも僕は彼を正当化したいなと思っていて。彼の衝動を愛と呼んでいいのか、それを美しいと捉えていいのか、下劣なものと捉えるべきなのか。それさえ判断がつかない情熱、心の在り方をどう表現すればいいのか、今はまだ分かりません。でも“表現しよう”と思っているだけでは、作品の熱量には追いつかない。『血の婚礼』に僕の小細工はまるで通用しないので、ただただ、舞台の上でレオナルドを生きようと思います」

(取材・文:木下千寿 撮影:間野真由美 ヘアメイク:二宮紀代子 スタイリスト:柴田拡美(Creative GUILD))

※シアター情報誌「カンフェティ」12月号・電子版では、中山優馬さんのアザーカットも掲載!

プロフィール

中山優馬(なかやま・ゆうま)
1994年1月13日生まれ、大阪府出身。2006年より芸能活動をスタート。舞台作品の主演や映像作品への出演を重ね、俳優として研鑽を積む。近年の出演作に、舞台『星降る夜に出掛けよう』、『大誘拐』~四人で大スペクタクル~、ミュージカル『Endless SHOCK』などがある。

衣装:ベスト 44,000円(SEVESKIG/問:SEVESKIG severing.net/) パンツ 60,500円(Taiga Igari/問:Taiga Igari taigaigari@gmail.com) 靴 参考価格(RED WING/問:RED WING JAPAN 03-5791-3280) ※その他スタイリスト私物

公演情報

舞台『血の婚礼』

日:2024年12月7日(土)~18日(水)
  ※他、兵庫公演あり
場:IMM THEATER
料:S席11,000円 A席8,000円
  U25席[25歳以下/当日引換券]5,000円
  ※U25席は要身分証明書提示
  (全席指定・税込)
HP:https://chinokonrei24.srptokyo.com
問:サンライズプロモーション東京
  tel.0570-00-3337(平日12:00~15:00)

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