再演はおそらく不可能 骨太な豪華キャストによる贅沢な舞台 “観る価値”や“尊さ”を感じられる作品を届けたい

 時速246億で、2019年の『お静かにどうぞ』以来5年ぶりに川本成と喜安浩平がタッグを組む。

川本「コロナ禍を経ての今回だから、上演する意味は大きいかな。演劇を辞めざるを得なかった人も多い中で、喜安くんは同世代で大活躍している貴重な人」

喜安「2014年に僕の劇団に出てもらって以降、丁寧に時間を重ねて作品を作っていけてますよね。成くん自身も脚本・演出家なので、いい意味で僕1人じゃない。時速246億のリーダーである成くんに賛同した人たちと、何が作れるのか一緒に考えていくというスタンスです」

 今回は暇を持て余した人たちとAIを描いた物語になるそう。

喜安「このメンバーなら、展開をこねくり回したお話にする必要はないと思って。やることがない人たちがそれでも何かしようとするところを観てほしいと思いました。それを今の時流に乗せて描くならモチーフはAIかなと。デザイナーさんなどから出るアイデアが面白く、周りの皆さんのおかげで意味のあるお話になってきたと感じます」

 キャストは様々なジャンルで活躍する実力派が集結。

川本「小野坂(昌也)さんは絶対に誘うと決めていて、なだぎ(武)さんとは初共演。でも、ずっと一緒にやりたいと言ってくれていました。森久保(祥太郎)さんもスケジュールを全部空けてくれて奇跡的に皆さんのタイミングが合った」

喜安「これだけのメンツよく集めたよね。あとは公演チラシに混ざっている謎の生物(小笠原健吉)も1つの見どころでしょうか。俳優さんたちの存在そのものが楽しみなので、10人が板の上で本当にどうでもいいことを繰り返す様をつぶさに観ていただきたいです」

川本「忙しい皆さんなので再度集まるのは難しい。その分20公演あるので、たくさんの方に観に来てもらえたら嬉しいですね」

 個性豊かなキャストが集まるが、稽古での楽しみを伺うと。

川本「稽古がもう尊いと思います。どこからが稽古で、どこから本番とかも関係なく全て楽しみ。昔は焦りがあったけど、今はその時々を楽しめるようになった」

喜安「みんな大人だから上手に自分の土俵も作るでしょうし、人の土俵にも上がってくれるでしょう。ギリギリのせめぎあいをお客様にも楽しんでいただけるよう、良い緊張感を最後までキープしたいです」

(取材・文:吉田沙奈 撮影:平賀正明)

劇場でついついやってしまうことは?

川本 成さん
「普段、いつだってコーヒーが飲みたいわけではないはずなのに、劇場に入って楽屋に入り鏡前に座ってまずコーヒーを飲んで落ち着くというのが、いつしかルーティンになってしまっているようです。特段飲みたくなくても、なんだか劇場に入る前には必ずと言っていいほどコーヒーを買って飲むという事がお決まりになっているので、急いでてコーヒーを買えなかったり、近くにカフェがなかったりすると途端に不安になります。ケータリングで出してもらってるコーヒーでいいじゃないか、と言われそうですが、いつしか出来てしまったこのルーティンがひとつの“願かけ”みたいなものになってるのでしょうか」

喜安浩平さん
「開演前に美術装置をよくよく見ること。特に変形舞台や仮設舞台の時に、客席の数を数えること。この客席数でチケットが1枚いくらだからつまりこの公演はこれくらいの枠で予算を組んでいるのか、と考えること。折込チラシを見て気になったら宣伝美術のスタッフさんのお名前を確認すること。ついついとは言えませんね。職業ですからね」

プロフィール

川本 成(かわもと・なる)
鳥取県出身。「時速246億」主宰。1991年、萩本欽一主宰「欽ちゃん劇団」1期生として在籍。1994年、「あさりど」としてコンビを組み、CX「笑っていいとも!」9代目いいとも青年隊で注目を集め、テレビ・ラジオ・声優・舞台など幅広い分野で活動中。「時速246億」で作品をプロデュースする他、脚本家・演出家としても多くの舞台を手掛ける。近年の主な脚本・演出作品に舞台『よんでますよ、アザゼルさん。』、『パペットミュージカル すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』など。

喜安浩平(きやす・こうへい)
愛媛県出身。「ナイロン100℃」に劇団員として所属。2000年に劇団「ブルドッキングヘッドロック」を旗揚げし、脚本・演出を手掛ける。同年、アニメ『はじめの一歩』で声優デビュー。以降、俳優・声優・演出家・脚本家として活動中。近年の脚本作品はドラマ『95』、舞台『呪術廻戦』シリーズなど。自身が監督した短編映画『私を描いて』が台湾・高雄映画祭他に入選。

公演情報

時速246億『お暇(いとま)をどうぞ』

日:2024年11月14日(木)~12月1日(日)
場:シアターサンモール
料:プレミアムシート[特典付]12,000円 ※ステージに近すぎるため、首が痛くなる可能性がございます。予めご了承ください
  通常席 前売9,000円(全席指定・税込)
HP:https://jisoku246oku.com/info/oitoma/
問:萩本企画 欽劇事務局 tel.03-3795-5259(平日11:00~19:00/土12:00~18:00)

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