演出家 大河内直子とプロデューサー 田窪桜子による演劇ユニットunratoが、アメリカの劇作家 ローレン・ガンダーソン作『Silent Sky』を上演。女性に研究者としての地位がなかった20世紀初頭、ハーバード大学天文台で研究を続け、天文学史に残る発見をした天文学者ヘンリエッタ・スワン・レヴィットの生涯をベースに、学問への情熱や周囲の人々との交流を描く。主演を務める朝海ひかるに話を聞いた。
―――お話をいただいた時の思いはいかがでしたか?
「unratoのお二人とは昔からのお付き合いです。演出の大河内さんは12年前に出演した蜷川幸雄さん演出の『しみじみ日本・乃木大将』に演出助手で入っていらっしゃって、そこからのお付き合い。その後はお互いに作品を見ていました。
プロデューサーの田窪さんとは現役の頃からご縁があり、飲み友達のような感じで仲良くしていただいていました。このお話をいただいて『やっとお二人とお仕事ができる!』と嬉しかったです」
―――ヘンリエッタという女性の印象はどう感じましたか?
「脚本の中でも、特別な存在ではなく、とある時代を生きた1人の女性として描かれていると感じました。そんな人が1つのことに熱中した時のエネルギーで、こんなに大きな功績を残せるものなんだと。女性のパワーがまだ信用されていない時代にこれを成し遂げるには、現代以上に熱い思いが必要だったと思います。尊敬の念を抱きましたし、この時代の女性の頑張りがあったからこそ、今の自分たちの生活があると改めて感じました」
―――コメントで天文学には疎いとおっしゃっていましたが、戯曲を読んで天文学に関するイメージが変わった部分、驚いたことはありましたか?
「学校で宇宙は無限に広がっていると教わったけど、昔は有限だと考えられていたのを初めて知りました(笑)。それを決定づける根拠を見つけた方がいるということですもんね。それにも驚きましたし、地球と星との距離は日々のデータの積み重ねで測れるんだとか、今ならコンピューターを使うけど全部人間の力で計算していたんだとか。星や宇宙にはロマンや壮大さを感じますが、そこに携わる方は毎日調査をして数字と向き合っている。もちろん星を見て綺麗だと思う瞬間や憧れがあるから打ち込めるんだと思いますが、天文学について知るたびに驚いています」
―――天文学に詳しくないと難しく感じるかもしれません。わかりやすく伝えるための表現や役作りについてはどう考えていますか?
「戯曲自体がすごくわかりやすいので、観ている方も天文学の研究に関する作業などがすんなりと理解できると思います。天文学の知識はお話の中で消化させ、人間ドラマに重きを置いてヘンリエッタという女性を作り上げていきたいです」
―――共演する皆さんの印象、楽しみなキャラクターはいかがでしょう。
「皆さん素晴らしい役者さん。黒一点の松島(庄汰)さんだけはお会いしたことがないので、どんな方でどんなお芝居をされるのか楽しみです。皆さんから噂は聞いていて、想像を膨らませているところです」
―――ヘンリエッタと家族、同僚たちの関係性も魅力です。朝海さん自身は、家族や仕事の仲間との信頼関係を感じたエピソードはありますか?
「姉との関係はヘンリエッタとマーガレット姉妹に似ていると感じます。仕事の仲間については、毎回違うカンパニーでお仕事をしますが、誰かがセリフを忘れたり失敗したり、体調を崩したりした時の皆さんのフォローに安心感を覚えます。そういう身近な人との支え合いが描かれているお話なので、皆さんと密にコミュニケーションをとって信頼関係を作っていきたいと思っています」
―――大阪公演に対する意気込みを教えてください。
「ABCホールは初めて行く劇場です。300人くらいの劇場は、演じる側としてはちょうどいいサイズです。細かな感情の機微も受け取っていただけるキャパシティだと思います。大阪公演だと大きな劇場で行わせていただくことが多く、こういった劇場に行くのが初めて。関西の方の反応をダイレクトに受けられると思うので楽しみです」
―――大阪に行く上で楽しみにしていることはありますか?
「年に何回も行く機会がありますし、宝塚にいたので、関西という土地は第二の故郷のような感覚。逆に特別感はなく、地元に帰ったような感じですね(笑)」
―――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。
「このメンバーで少人数の舞台に立つというのは、私自身もとても贅沢だと感じています。お客様にもぜひ期待していただきたいです。
ヘンリエッタという女性は、なかなか思うような働きができなくても、自分のできることからコツコツ積み上げて功績を残した方。観てくださった方の助けになるようなアイデアも詰まっているかもしれません。また、実在した女性なので、リアリティも受け取ってもらえると思います。
明日への活力にしていただけたら嬉しいですし、そうなるように私たちも頑張ります。ぜひ劇場に足をお運びください」
(取材・文:吉田沙奈 撮影:平賀正明)
※本インタビューはカンフェティ2024年10月号掲載の記事を関西版Vol.5発行に伴い、ロングインタビューとして再編集したものです。
「リップクリームです。唇が渇いてくると、なんともイヤな感覚になってくるので、保湿力重視です。宝塚歌劇団を退団したころからの習慣ですね。忘れてしまったときは、途中で買いたくなるほど。特に決まったものはないので、自然由来の素材で、唇がぷるんとなって、保湿力があるリップクリームがあれば教えてください」
プロフィール
朝海ひかる(あさみ・ひかる)
1月24日生まれ、宮城県出身。1991年、宝塚歌劇団に入団。2002年、雪組男役トップスターに就任。2006年、『ベルサイユのばら』では主演のオスカル役が好評を博す。同年、宝塚歌劇団を退団。その後もミュージカル・ストレートプレイ・映像などで活躍。
公演情報
unrato #12『Silent Sky』
【東京公演】
日:2024年10月18日(金)~27日(日)
場:俳優座劇場
料:一般8,800円
学生5,500円(全席指定・税込)
【大阪公演】
日:2024年11月1日(金)~4日(月・振休)
場:ABCホール
料:一般9,800円
学生5,500円(全席指定・税込)
HP:https://ae-on.co.jp/unrato/silentsky/
問:アイオーン mail:info@ae-on.co.jp