神秘的で透明感あふれるコーラスと能楽のコラボレーション 癒しと安らぎを超えて“物語”で繋がる2つの文化

 アイルランドの男女混声コーラスグループ・アヌーナが11月~12月に来日ツアーを行う。12月7日の東京・すみだ公演は能楽師・笙奏者・大鼓奏者とのコラボレーションで、小泉八雲『雪女』をフィーチャーした特別プログラムを披露する。

 アヌーナは7年前の来日時に、アイルランド人作家原作の夢幻能によるケルティック能『鷹姫』を上演しており、能との共演はそれ以来。リーダー兼音楽ディレクターのマイケル・マクグリンは、「アイルランドと日本の間に超自然的な繋がりがあることを常に意識してきた」と話す。

 「アヌーナのレパートリーである『さくら』、『もののけ姫』を公演で歌うと、観客はそれらが日本の曲であることに驚きます。私がアヌーナのために書いた数々の楽曲に通じるものがあると強く感じるようです。私自身、前世は日本人だったのではないかと思うこともあります。
 まず、日本そのものが私の作曲や音楽の捉え方に大きな影響を与えています。2017年の『鷹姫』では、敬愛するクリエイターたちと有意義な対話を重ね、全員で超越したものを作り上げました。日本では9月に発売されるアヌーナの新しいアルバムにも、その影響が強く表れています。そして今回も日本の演者と一緒に仕事ができるのが本当に楽しみです」

 特別プログラム『雪女の幻想』では、他ジャンルとの共演でも広く知られる能楽師・津村禮次郎と笙奏者・東野珠実、そして大鼓奏者・柿原光博というゲスト陣の顔ぶれにも期待が高まる。その中でも特に、マイケルは笙とのコラボレーションを楽しみにしているという。

 「私は何年も前に、自然の物の動きを投影して絶えず変化するような微妙な音色を持つ、このユニークな楽器の存在を知りました。笙を演奏に取り入れることを決めて以来、奇妙でこの世のものとは思えない音がアヌーナのコーラスと合わさってどのように響くのか、ずっと考えていました。笙の影響でアヌーナのコーラスも変容することは間違いありません」

 多言語で歌われるコーラスの美しさと、能楽の幽玄な響き。それらを結びつける鍵は“物語”にあるようだ。

 「点滅する画面や無意味な社会的交流で埋め尽くされた生活の中で私たちが失ってしまった洞察力が、物語にはあります。この奥深いコラボレーションが人々に影響を与え、私たちの生活を変えてくれることを願っています」

(取材・文:西本 勲)

プロフィール

マイケル・マクグリン
中世アイルランドの音楽を現代に蘇らせるというコンセプトで1987年に結成されたアヌーナのリーダー兼芸術監督。全楽曲のアレンジ、オリジナル曲の作詞・作曲、ステージディレクションなどを手掛ける。中世アイルランドの聖歌・大衆的な伝統歌・オリジナル曲などを現代的にアレンジしたレパートリーを持つ。アヌーナのメンバーは流動的で、これまでに100名以上のシンガーが参加。近年はゲーム音楽やアニメのサウンドトラックにも多く関わっている。2023年リリースの最新アルバム『アザーワールド』が9月6日に日本で発売。

公演情報

ケルティック・クリスマス 2024 アヌーナ特別公演 雪女の幻想 ~神秘のコーラスと能舞~

日:2024年12月7日(土)17:30開演(16:45開場) ※他、アヌーナ単独による全国公演あり
場:すみだトリフォニーホール 大ホール
料:S席[1F・2F]9,200円
  A席[3F前方]8,500円
  B席[3F後方]6,900円
  25歳以下3,800円 ※要身分証明書提示
  (全席指定・税込)
HP:https://plankton.co.jp/anuna/
問:地球音楽プロジェクト実行委員会 
  tel.03-6273-9373(平日13:00~17:00)

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