前作からおよそ50年後の東京。新たに建った電波塔を巡る闘いが始まる まるで運命づけられたような続編にキャスト再集結。劇場もサイズアップして挑む

前作からおよそ50年後の東京。新たに建った電波塔を巡る闘いが始まる まるで運命づけられたような続編にキャスト再集結。劇場もサイズアップして挑む

 2007年より池袋を中心に舞台公演を上演している劇団GAIA_crew。昨年は昭和33年に竣工した東京タワーをモチーフにした『異説 東都電波塔〜陰陽奇譚』を上演し、好評を得たが、今年はその続編となる『異説 東都電波塔 弐 〜永遠なれ星の樹〜』を上演する。いうまでもなく今回モデルとなるのは東京スカイツリー。およそ50年を隔てて建てられた2つの電波塔を繋ぐ縁の物語に、前作に参加した人気俳優や声優が再び集結する。また劇場も池袋シアターグリーン BIG TREE THEATERにサイズアップしての公演だ。作・演出の加東に加え、物語のキーパーソンとなる野水伊織、伊藤節生。劇団メンバーであり、占い師としての顔も持つ草彅健太。以上4人に話を訊く。


―――現在YouTubeで無料公開されている前作『異説 東都電波塔〜陰陽奇譚』を拝見したら、なんとラストが50年後のシーン。つまり今作の冒頭と思われるシーンになっていました。そこで今作の『異説 東都電波塔 弐 〜永遠なれ星の樹〜』は前作と一緒に完成していたのではないかと思ったのですが。

加東「いいえ、前作を書き上げた時は続編のことなんて考えてもいませんでした。ただ前作の終わりは50年後に縁が繋がれる……そういう終わりにしたかったんです。東都タワーが完成した50年後。新しい東京スターツリーが建設されるのですが、そこにまた魑魅魍魎が出てきてしまった。あらためて陰陽師や式神たちを呼び寄せて怪異に立ち向かおうと思ったところ、今度はカルト宗教によるテロ集団にツリーを奪われてしまう。その奪還の物語になっています」

―――明らかに次回作の冒頭が出てきたものだから、てっきりセットで書かれたのだとおもいました。

加東「違うんです。でも前作のラストシーンで、音楽を担当されたなるけみちこさんが凄く勇ましい曲を当ててくれまして。理由を聞いたら『だってこの話はここが本当の始まりで、それに向かってきた物語でしょ』とおっしゃるんです。それには僕等がむしろビックリして、千穐楽にお遊びで、『“2”制作決定』というテロップを映写したりしました」

―――それが現実になった訳ですね。

加東「珍しいことですが、前作のキャストが全員再集結しています。俳優によって役は少し変わりますけれど」

―――まさに前後編とも言える2作が揃うわけですが、それを通して伝えたいメッセージなどはありますか。

加東「前作の上演は東日本大震災から干支が一周した2023年でした。そして東都タワーのモデルである東京タワーの建設は終戦から12年後、つまり干支一周分です。戦争であれだけダメージを受けたのに短い期間に凄い復興を遂げたこと、その勢いには驚きを感じます。そして今作を書くにあたり、続編が同じテーマではないだろうと思い、前作の“復興と祈り”から今回は“縁と奪還”を掲げました。現在は分断の時代だと僕は思っていますが、演劇人としてまだ続いているコロナ禍の中で、出来なかったことや失ったことを取り戻したい。そしてなにかを続けていくことで、劇団としても個人としても縁(えにし)が繋がっていくことを伝えたいと思っています。多忙なキャストが再集結して、劇団のキャッチコピーである“お客様が楽しんで笑えて、ちょっとホロリと泣けて、何かが心に残る芝居”を目指します。また声優として活躍する人や、忍者系VTuber声優の朝ノ瑠璃さんのように演劇界以外から参加するキャストもいますので、舞台に馴染んでない人も楽しんでもらえれば嬉しいですね」

―――劇団メンバーの草彅健太さんは、今回はスターツリーを奪うカルト教団の教祖という物騒な役だそうですね。

草彅「前作は全く関係ない役で出演していましたが、今作は教祖らしく信者を引っ張っていく力のある、まるで歌うような台詞回しを求められています。自分が演じる深沢の言葉は、最近メンバーになった荒井ミサがリライトしている特殊な台詞回しなので、荒井が別に主宰している演劇企画ヱウレーカの独特な台詞回しを参考にしています。楽しみつつも、なかなか大変だなと思って頑張っていますね」

―――野水さんが演じるのは、前作と同じ役名ですが、子孫とか生まれ変わりといった設定でしょうか。

野水「同姓同名の別人なんですが、前作と繋がりがあるのか?は、楽しみに観てもらえたらと思います。今回はスターツリーを設計したプロジェクトマネージャーを務める女性です。前回は男子学生役だったんですが、今回は立ち居振る舞いも目的も違っているので、別のキャラクターとしては作りやすいかもしれません。スターツリー建設に熱意をもって取り組み、設計後にも関わりを持とうとして部署を変えてまで関わり続ける執念の人ですね。だからこそピンチに陥っても果敢に挑んでいく。今はそんな彼女がどんな人間なのかをロジックから考えている段階です」

―――伊藤さんも役柄がガラリと変わります。

伊藤「前作はタワー建設の主任でしたが、今回は童子という謎を秘めたキャラクターです。実は人間ではなく式神であり、もう一人の主人公黒川遥が召喚した謎の存在です。前作とは全く関わりもないし、そもそも人間から式神ですから存在の根底も違いますね」

―――なるほど。人間vs魑魅魍魎というストーリーから、今回は人間同士の戦いになることで、新しいキャラクターも多数登場するわけですね。

加東「ええ、今回は敵も人間。前作の敵が奪還チーム側につくんです。分かり易く例えるなら、アニメ作品で2期になったら1期のラスボスが味方になっているというか(笑)」

伊藤「設定も現在なので、想像しやすくなったと思います。人間の怖さを感じることも現実にありますから」

野水「時代が変わることで使える機器やガジェットも変わります。現代は対人間同士の関係が深まりやすくなった分、SNSなどでの悪意の発信も簡単になりました。いいことも悪いことも発信しやすいし、それに引っ張られやすくなっている。そんな危うさがある時代に、一番怖い敵が人間というのは説得力があるのではと思います」

―――では最後に皆さんそれぞれからメッセージを頂きたいのですが。

伊藤「今回の童子という役柄に対しては、こんな風にやってみたいという自分の欲求が既に出てきていて、より自由にチャレンジしてみたい気持ちになっています。それに今までもらったことがない役柄でもあるので張り切っています。いまから完成が楽しみです」

野水「事前に実施したクラウドファンディングではストレッチゴールを2つ達成しました。その重みを両肩に背負いつつ、セリフ量のプレッシャーも感じています。一方でチケット発売初日から千穐楽のSS席(特典付き最前席)が完売したという嬉しいニュースも聞きました。前作はなんと無料で本編映像全編を公開していますので、予習・復習にそちらを観てもらって、お早めにチケットをご予約頂ければと思います。もう顔合わせからワクワクが高まっています。是非楽しみにしていてください」

草彅「クラファンのことや無料公開のことなど、もう野水さんがみんな言ってくれましたが(笑)。劇団員として10年近く携わって、初めてラスボスを務めることになりましたが、ここで僕が頑張らないと皆さんの頑張りが台無しになるので、精一杯最後まで務めます。ラスボスの僕を観に来てください」

加東「物語として50年経過した今作。前回は高度経済成長期のさなか、社会全体が希望を持てた時代だったわけですが、それによる急成長の歪みを、僕等は今でも受け続けているのかなと思います。世界が簡単に変わることをこの瞬間も実感しているし、閉塞感も感じている。でも物語を通じて明日への希望を持ちたい、またそれが出来る作品にしたいと思っています。是非劇場に足を運んでいただき、僕等のエネルギーを受け取っていただければ!お待ちしております!」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

加東岳史(かとう・たけし)
東京都出身。女優・浜木綿子の付き人として大劇場での公演を多数経験する。SNS「mixi」上のコミュニティ「ミクシー演劇しようぜ」内で、「mixi上だけで集まったメンバーだけで公演を打つ」というコンセプトで行われた公演『宇宙戦艦ぴよぴよGAIA』(盛留真悟 脚本・総指揮)の出演者有志と2007年劇団GAIA_crewを旗揚げ。本公演全ての脚本・演出を担当している。代表作として『LinKage~凛国異聞』、『アマオト~星巡ル夜君ヲ探ス』、『ハラカラ・コエダス・レクイエム』、新宿コマ劇場座長公演『水樹奈々大いに唄う』歌姫華仕置 疾風の奈々参上! などがある。

野水伊織(のみず・いおり)
北海道出身。シンクリッチ所属。舞台役者を目指し俳優事務所に所属、TVドラマ『電車男』などに出演。のちに声優へと活動の場を移す。2009年、TVアニメ『そらのおとしもの』で声優デビュー。出演作として『艦隊これくしょん-艦これ-』、『デート・ア・ライブ』シリーズなどがある。そのほか、ライブ・舞台・ラジオ出演などに加え、近年では映画にまつわるコラムやコメント寄稿、作詞家としても活動している。

伊藤節生(いとう・せつお)
北海道出身。ポケモン映画一作目『ミュウツーの逆襲』のパンフレットを見て声優を知り、高校時代に本格的に目指すようになる。総合学園ヒューマンアカデミー札幌校、AIR AGENCY声優養成所を経てAIR AGENCYに所属。2016年7月には、『モブサイコ100』の影山茂夫役でアニメ初主演。翌年2017年の第11回声優アワードで新人男優賞を受賞した。声優を務めた作品の舞台化などによる舞台出演も数多い。

草彅健太(くさなぎ・けんた)
秋田県出身。高校時代に「詩のボクシング」第1回高校生全国大会にて優勝。その後専門学校を経て、声優として数々の作品に出演する傍ら劇団GAIA_crewの俳優として劇団作品に出演。さらに外部作品にも出演している。またイベントMCとしても実績を積むが、占い師としての信頼と人気も上昇している。

公演情報

劇団GAIA_crew 第19回本公演
異説東都電波塔 弐 〜永遠なれ星の樹〜』

日:2024年8月28日(水)~9月1日(日)
場:シアターグリーン BIG TREE THEATER
料:SS席[前方2列・特典付]10,000円
  一般5,500円 学生割4,000円 ※要学生証提示
  ※ADP回[8/29、8/30 14:00]は各500円引      (全席指定・税込)
HP:https://gaiacrew.com/sp/toto-tower_2nd/
問:劇団GAIA_crew制作部
  mail:gaiacrewinfo@gmail.com

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