昨年、新たな演出でリニューアルした名作ミュージカル『ピーター・パン』　新イメージのフック船長を小野田龍之介がつくり上げる

　もはや夏の劇場に欠かせない作品となった、ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』。名優たちが子どもたちの夢と共に空を飛び、そして大人たちの心を癒やしてきた。ピーターの敵役 海賊のフック船長を昨年から小野田龍之介が務めている。

　「最初にオファーをもらった時はピンときませんでした。僕にとってフック船長は宝田明さんや上條恒彦さんのようなダンディな方が演じる役だと思い込んでいたんです。世界一有名な悪役ですから僕には難しいと思いましたが、昨年は演出家も変わってリニューアルする機会だったので、自分色に染められるとも思いました。さらに、その直前に『マチルダ』でミス・トランチブル校長を演じたことも大きかったですね。そういったことも含めて良い巡り合わせだったと思います」

　“リニューアル”と言うとおり、昨年から長谷川寧が演出を手掛けており、作品の雰囲気がかなり変わったという。

　「演出がガラリと変わったところに僕とピーター役の山﨑玲奈さんが入ったわけですが、43年続く作品なのに1からつくり上げる表現が多く、初演のようなステージでした。今年は昨年をベースにつくりますが、余計なものを削ぎ落としつつ、改めて自分たちを見つめていきたいと思っています。周囲のメンバーが大幅に変わっているので、我々が変わらなくても新たな『ピーター・パン』が生まれる部分もあります」

　ダンスや身体表現を得意とする長谷川の演出は体力的に厳しいともいう。

　「俳優っていわばアスリートなのですが、『ピーター・パン』はさらにその要素が強いです。しかも長谷川さんの演出だとパルクールの要素も入っているので、舞台に出ているだけで痩せていきます。よく食べて寝る、それが一番ですね。フック船長は片手がないので派手なパルクールはありませんが、急な坂を駆け上がったり、壁をジャンプしたりしますよ。長谷川さんは身体表現を中心に活躍されているので、手をひとつ動かすにも気を遣います。演出も独特で、ワニの姿は見せず影で表現するのですが、ワニがフック船長に覆いかぶさっていくシーンなど見ものです。ただ華やかなだけではない『ピーター・パン』になるでしょう」

　幼い頃からミュージカルやエンターテインメントの世界に憧れ、ひたむきに駆け上がってきた小野田が演じるフック船長。名作ミュージカルに新たなページを刻んでくれるだろう。

（取材・文：渡部晋也　撮影：宮川舞子（2023年公演舞台写真））

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