出撃命令を待つ隊員たちの耳に、未来からのラジオ放送が流れ込む 特攻隊ミュージカルとして、25年目を迎える感動作

出撃命令を待つ隊員たちの耳に、未来からのラジオ放送が流れ込む 特攻隊ミュージカルとして、25年目を迎える感動作

 演劇集団アトリエッジの代表作『流れる雲よ』は、2000年の舞台版初演から上演を重ねている作品。座長の市川大樹、メンバーの田中寅雄と上坂英俊は、何度もこの作品に関わってきた。

市川「出撃命令を待つ隊員たちが聞いているラジオから、妙な放送が混線のようにして流れてくるんです。実はそれは未来からの放送で、終戦記念日の話をしている。何かおかしいと騒ぐうちに整備兵が未来の放送だと気づき、あと1~2日で戦争が終わることを察知した隊員たちが葛藤する話です。以前訪ねた、鹿児島の知覧にある特攻隊の資料館に凄い衝撃を受け、伝えるべき特攻隊員たちの物語があると感じていて、平和を常に想っていました。僕も主宰の奈美木もラジオDJ出身で、作品を作った当初も周りにいたのがラジオマンばかりだったので、まずはラジオドラマ、そしてラジオを題材にした作品から始めたんです」

 そこからおよそ四半世紀。日本だけでなく海外でも上演されてきたこの作品に、田中は出演だけでなく、演出家としても関わっている。

田中「上演を重ねている作品という感覚はなくて、いつも違うアプローチで挑んでいます。物語や自分が演じる役は一緒でも、関わる俳優の顔ぶれも毎回違いますし、世界情勢やその時々の自分の感覚も違います。今まで以上に平和を考える感じにしたいとも思いますが、その時に集まったメンバーと台本を開いて、そこで生まれる空気を大切にしたいと思っています。戦時中の話ではありますが、俳優が当時のように坊主にはしません。それでも現代の観客が当時の若者たちの姿や葛藤を自分たちに置き換えることができるか。そして命の価値を感じてどう生きていくのか、そこが作品のテーマだと思っています」

 3人の中で一番若い上坂は、これまで整備兵の役だったが、今回は特攻隊員を演じるという。

上坂「今までは主人公の親友でもある整備兵、つまり特攻隊員を送り出す側でした。別れの覚悟を決めたその時、未来からの放送が入ってきてグチャグチャになる。『それでも行く』と言う親友の気持ちを受け止めて後世に繋げる、そんな役柄でした。今回は特攻隊員でありながら、彼らを取り纏める隊長でもあるんです。それだけにフルに心を削る役柄になるかと思っています」

 終戦から79年。終戦記念日を挟んだ日程で上演される本作で、生死の境を葛藤しつつ過ごした若者たちの気持ちを見つめてみてはどうだろう。

(取材・文:渡部晋也 撮影:友澤綾乃)

プロフィール

市川大樹(いちかわ・ひろき)
10代でプロサーファーを夢見て渡米するが、怪我のため帰国。その後、DJとして活動する傍ら、1996年にアーティストデビュー。現在は演劇集団アトリエッジの座長として活躍。本作『流れる雲よ』には初演から関わっている。

田中寅雄(たなか・とらお)
ダンサーとしてアーティストのバックやショーダンサーとして活躍。その後、俳優・演出家としての活動を開始。『ちはやぶる神の国〜異聞・本能寺の変』では織田信長役で出演するだけでなく、演出も務めた。本作『流れる雲よ』は今回で14回目の出演となる。

上坂英俊(うえさか・ひでとし)
演劇集団アトリエッジのメンバーとして活躍。『まほろばをみつめて』主演、『流れる雲よ』、『ぞめきの消えた夏』準主演、『Peace in a bottle』準主演など、数多くの作品に出演。舞台以外にも、ドラマ『えにしの記憶~シーズン5/6/7 ~』、『消せない約束』、オーディオドラマ『アンデルセン劇場』などに出演。

公演情報

演劇集団アトリエッジ 特攻隊ミュージカル
『流れる雲よ~令和六年より愛を込めて』

日:2024年8月14日(水)~18日(日)
場:博品館劇場
料:VIP席[希望座席・スペシャル特典・グッズ&パンフレット付]30,000円
  S席[パンフレット付]9,000円
  A席7,000円(全席指定・税込)
HP:https://djdjat.weebly.com
問:演劇集団アトリエッジ 
  tel.03-5385-1000(平日10:00~18:00)

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