BARREL Produce公演3作目となる『ovation!ovation!!』で、大野洸貴が初めてのプロデュースに挑む。夢を追いかける親友3人の物語を、歌とダンスを交えた会話劇で描いた作品になるという。
上演に向けて意欲的に企画を進めている大野と、エグゼクティブプロデューサーとして大野をフォローする冨田昌則にインタビューを行った。
―――まずは今回の企画に対する意気込みを教えてください。
大野「最初、冨田さんから『やってみないか』と声をかけていただきました。僕も初めてのことなので最初はどこまで大変か把握できていませんでした。
舞台を作ること・プロデュースをすることについて、仕事量を把握していない状態でしたが、舞台を作らせていただけるのは僕にとってチャンス。『やらせてください』と即答くらいのスピードで伝え、今作っている段階です。意気込みとしてはとにかくやりきる。気合いは十分で毎日挑んでいます」
―――冨田さんから「やってみないか」と声をかけた理由は。
冨田「大野が去年、ダンス留学に行っていたんです。帰ってきて、次に何をするのかと思っていました。役者はいただいた仕事を一生懸命やるのはもちろんで、いただいた役に自分を乗せて何か作っていくのが仕事です。短い期間ではあるけど海外に行き、何か思いが変わったことがあるんじゃないか、プロデューサーとして入れば自分が見たものや感じたことを物語に反映できるんじゃないかと思いました。
劇団や自主公演をしてらっしゃる方以外はなかなかチャンスがないし、大野自身やったことがないのでいい機会かと。彼が見てきたもの、俳優業をやっている中でストレスを感じていることが作品に乗ったら良いなと思い、この時期にやってみたらという話をしました」
―――最初はプロデューサーとして何をやったらいいかわからない状態で入ったとのことですが、何をどこまで担当されているんでしょう。
大野「まず『プロデューサーは何をするべきか』というところから入りました。舞台に携わっている方はたくさんいますが、『こんなにやることがたくさんあるんだ、全然把握できていなかった』と最初に感じました。当たり前のことを感じられていなかった自分にショックを受けましたね。
僕はキャスティングや舞台の内容を含めて、プロデューサーとしてこの舞台をどう盛り上げ、お客さんに楽しんでもらえるか考えて取り組んでいるところです」
―――冨田さんはエグゼクティブプロデューサーとしての参加です。
冨田「そうらしいです（笑）。今回に関しては、あまり何も言うつもりはありません。大野が知っている作・演出の方、キャストさんに声をかけているので、基本的に僕は見守っている状態。
僕らの世代の一個上の先輩たちが作っていた演劇って、社会への思いがすごく反映されていて、僕らの時代はそれがなくなり、だんだん娯楽になっていった。もちろん今も何かを訴える演劇はありますが、僕が携わっているのは娯楽に近い、エンターテインメントとされているものが多いです。
今その中で生きている子たち、26歳の大野たちが考える演劇ってなにかという部分にすごく興味がある。だからあまり口を出さず、物語のプロットも送られてきたけど、読まずに『はい、どうぞ』と（笑）。今の子達が作るものを見たいという感じです」
―――大野さんが出演に加えて原案と振付を担当しているとのことですが、構想は決まっていますか？
大野「僕がプロデュースをする上で、冨田さんから『試しでもいいからホンを書いてみろ』と言われて、僕が表現したいことを書いてみました。それを演出の正安寺さんに提案しながら話し合って、今回の作品に決まりました。
僕自身、役者をやっていて、役者の話をしたかったんです。今役者を目指している子、役者をやっている方々、いろいろな人がいる中で、役者の葛藤やリアルに感じていることを描こうと思いました。
僕は26歳なんですが、これくらいの年齢の時ってすごく悩む時期だと思う。25歳を超えて、役者としてどう飛躍・構築していくか考える時期。そういった悩みを舞台で表現できたらという前提があったので、そこを散りばめた作品になっています」
―――インタビューの時点ではHPが公開されたところで、出演者やあらすじは不明です。現時点で決まっていること、見どころや楽しみにしてほしい点を教えてください。
冨田「HPを見て連絡をくれた人たちから『大野は一人芝居やるの？』と聞かれた。そうだよって言っておいた（笑）」
大野「まだ発表になっていないだけです（笑）。メインは会話劇で、その中に歌もダンスも入っている。ミュージカルとはまた違うエンターテインメントになっていますし、僕が振付も担当するので、“大野の作り出すエンタメ”になると思っています。
振付ってすごくその人の色が出ると思います。僕は小さい頃からダンスをやってきたわけじゃなく、20歳くらいからお仕事でやるようになり、去年NYで勉強しました。ダンサーが作る振付というよりは、いち役者・大野洸貴が作る振付と思って観てほしいです」
―――共演やワークショップでの交流もあるお二人ですが、プロデューサーとして共に企画を進める中で見えた新たな一面や魅力は。
冨田「初めてプロデュースに挑戦するので、『やります！』ってすぐに返事はきたけど、正直途中でやめるだろうと思いました。作業が追いつかなくなるだろうと。
でも、いろいろなことを諦めず、逃げずに頑張っていますね。今まで演者としての彼しか見ていなかったので、裏方を一生懸命やっている姿を今回初めて見ました」
大野「僕は冨田さんが舞台を作っている姿を見ていたので、自分がやってみて、冨田さんのすごさを改めて実感しています」
冨田「身内で褒め合ってるの、気持ち悪くないですか（笑）？」
大野「（笑）。物語を含めて『これがやりたい』、『あれがやりたい』という発想力が僕にはまだ足りていないと思っていて、冨田さんの過去の作品を見ていると学ぶことが多い。作品を作る上での覚悟や意志を感じて憧れています。背中を追って今回、作っています。改めてすごさを知る機会になりました」
―――プロデューサーの先輩である冨田さんに聞きたいことはありますか？
大野「冨田さんの中では、稽古中・稽古終盤に新しい発想が出てくることってありましたか？ その時って『やろう』ってなりますか？」
冨田「うん。もちろん、作・演出家と相談しながらだけど。
舞台に上がるときは自分で60％にもっていって、あとの40％をお客さんが作ってくれる。その60％が70％になる可能性を思いついたらやらない手はない。みんなに話をして、みんなが面白いと思えることなら時間が許す限りやりたい」
大野「もう1つ聞きたいです。作ってる時って苦しかったですか？」
冨田「苦しくはない」
大野「楽しいが勝ってましたか？」
冨田「楽しいでもない。曖昧な言い方で申し訳ない。
苦しいはないけど、楽しいって思える時間はある。お客さんにとって面白いんじゃないかと想像している時は楽しいけど、自分が演じる時は楽しいと思ってはいない。やっている時は周りの演者やいろいろなことを考えているし、プロデュースって形で入ると、自分も演じているけど他の人たちが気になっちゃうと思う。『もっとこうしたほうがいいんじゃないか』と思いついて、総合したものができあがった時に、お客さんに楽しんでもらえるんじゃないかと感じた時に楽しい・嬉しいって感覚になるかな。
今回、大野は原案をやっているけど、苦しさとしてはきっとゼロから生み出す作家の方が苦しい。僕は適当です（笑）。苦労だけならやってない。何より、見ている人が楽しいと思ってくれることを思いついた時がやっぱり楽しいんじゃないかな」
―――記事が出る頃にはキャストなども発表されていると思うので、脚本やキャストで楽しみにしてほしいことを教えてください。
大野「今回は僕がキャスティング面で色々お声かけさせていただきました。主役は朝田淳弥さん。僕がお世話になっているダンサーの方など、男女ともにいろいろなジャンルの方が集まって幅が広い舞台になっていると思います。
個人的な話になっちゃうんですが、出演してくれる小原汰武くんと僕は小学校1年生から中学卒業までの同級生。彼は小学生の頃から舞台に出ていて、公演を観に行くこともありずっと憧れの存在でした。彼も僕も高校卒業と同時に東京に出て、同じ道を目指してやっている中でこのプロデュースのお話をいただき、僕からオファーして小原くんと共演する。僕の中ではすごく熱い。『憧れだったあの同級生と一緒に舞台をやるなんて！』という感覚です」
冨田「それぞれいろいろなところで経験を積んだ同世代の実力者たちが大野の元に集まったってことね」
―――旗揚げということですが、今後の公演は……。
冨田「今回しかやらないです」
大野「断言されたらできないじゃないですか」
冨田「観に来ていただけないと次はない。旗を上げて、お客様に楽しんでもらえなかったら千秋楽のときにみんなで笑顔で旗を下げましょう」
大野「皆さんぜひ観に来てください」
―――最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。
大野「僕自身初プロデュースということで、正直何もわからないことからスタートし、たくさんのことを経験して作っています。26歳の僕が演劇について思っていること、役者の喜び、若いパワーを皆さんに感じていただけたらと思っています。
CBGKシブゲキ!!という大きな舞台を使わせていただき、とにかく芝居の力・役者の力を肌で感じていただけたらと。舞台を観たことがない方も舞台が好きな方も、素直に楽しめる作品にしていくので、ぜひよろしくお願いします！」
（取材・文＆撮影：吉田沙奈）
プロフィール
大野洸貴（おおの・こうき）
1998年9月21日生まれ、福岡県出身。俳優として、ミュージカル『Dear My パパ』などに出演。2023年、ニューヨークに留学してダンスや歌を学ぶ。2024年7月5日より、自身初のプロデュース作品『ovation! ovation!!』を上演予定。
冨田昌則（とみた・まさのり）
1972年11月2日生まれ、東京都出身。俳優・演出・声優・殺陣師・アクションコーディネート・演劇講師など、幅広い分野で活躍。主な出演作に、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、剣劇『三國志演技〜孫呉』など。演出・アクション監督として、東京ワンピースタワーONE PIECE LIVE ATTRACTIONシリーズ、PARCO Produce ミュージカル『キャバレー』、『BACK BEAT』、明治座創業150周年記念前月祭『大逆転！大江戸桜誉賑』などがある。
公演情報
BARREL Produce『ovation! ovation!!』
日：2024年7月5日（金）～7日（日）
場：CBGKシブゲキ!!
料：S席［前3列］9,000円
A席［4列目以降］8,000円（全席指定・税込）
HP：https://barrelproduce-ono.amebaownd.com
問：BARREL mail：stagebarrel@gmail.com
