年齢・性別にとらわれない“60役”に3キャストが真摯に向き合う 椅子と台本、そして役者3名のみの真剣勝負 役替わり朗読劇『5 years after』ver.11

 3人の男性キャストが約1時間で20役ずつを演じ、さらに配役が回替わりになることから、1人の俳優が合計で60役を演じることになる“役替わり”朗読劇『5years after』(ファイブ・イヤーズ・アフター)の11回目となる公演が、赤坂RED/THEATERにて2024年5月に上演される。
 脚本・演出の堤泰之が朗読劇ならではの面白さを追い求めて執筆した本作では、主人公・水川啓人の20歳・25歳・30歳の人生と、彼を取り巻く個性豊かな登場人物たちが描かれる。朗読劇終了後、すぐに3キャストが60役を振り返りながらトークをする30分の「反省会」が行われるのも見所だ。
 前半チームに出演する森山栄治・三好大貴、そして後半チームに出演する佐伯亮に改めて作品の魅力を伺った。

―――3名の俳優が合計で60役を演じる本作ですが、初出演となる森山さん、本企画についての第一印象は?

森山「“3名の俳優が合計で60役”と聞いた時は『何だそれ!? そんなことできるのか!?』と思いましたし、コロコロ役が変わるコントのような、エンタメ寄りの作品なのかなと想像したんです。でも、前回のver.10を劇場で観劇させていただいたら、ビックリするくらい中身が濃くて……。
 “合計で60役を演じます”っていうのがあまりにキャッチーなフレーズなので、プレスリリースなどでは先行して使われがちですけど、もし本作をチープなコント作品だと勘違いしている人がいたら、それは本当にもったいないので、ぜひ劇場で観ていただきたいですね。一見の価値ありです!」

―――20歳・25歳・30歳の水川啓人を回によってそれぞれ演じるわけですが、森山さんが20歳を演じる回もあるわけですよね。

森山「やるしかないです! でも、映像作品や舞台ではなく、朗読ならではの試みとも言えますよね。目を閉じて聴いてくださってもいいわけなので……目を開けたら、そこにいるのがおじさんだとしても(笑)」

三好「そんな(笑)。僕は栄治さんの演じる20歳の水川啓人、めちゃくちゃ楽しみですよ! あと僕、栄治さんが水川啓人の両親を演じる時にどんなお芝居をされるのか、早く見たいなって思っているんです。
 僕が前回出演した時は20~30代前半の役者のみだったので、年長のキャラクターを演じる説得力よりも他のところで勝負していたと思うんですが、今回の座組は全く違う雰囲気になるだろうし、もはや違う作品に見えてくるのではないかなと」

―――三好さんは2022年のver.9に、佐伯さんは2021年のver.7に出演していますね。2回目だからこそ、こんなことに挑戦してみたいというのはありますか?

三好「前回出演した時はまだ20代だったので、30代になった今、またこの作品に出演できることが凄く嬉しいです。前回は25歳の水川啓人を演じているときが1番等身大でやりやすかったのですが、今回はどう感じるかなって。
 あとは水川以外にもいろいろな年齢・性別のキャラクターが多種多様に登場するので、役幅が広がった今だからこそ、あの役をこういう風に演じたい……というプランも増えています! 60役の中で本当に一瞬しか出ないキャラクターもいるんですよ」

佐伯「僕は2021年当時だと朗読劇の経験がまだ少なくて、物凄く緊張していたのを覚えています。その頃に比べたら今回はリラックスして臨めるかなと楽しみにしています。
 大貴くんも言っていた通り、この作品って自分の年齢が変わると感じ方が変わるので……当時は25歳でしたけど、今年29歳になる今の僕だと、もしかしたら25歳の水川啓人よりも、30歳の水川啓人に感情移入してしまうかもしれないですよね。そんな自分の中の変化も楽しみながら挑みたいと思っています」

―――老若男女演じ分けることになりますが、特にこのキャラクターを演じるのを楽しみにしている!というのはありますか?

森山「どのキャラクターも難しいところがあるだろうし、役者としてはどのキャラクターもやりたいんですよね。ただ大前提として、堤さんの脚本が凄くまとまっていて……これは真面目に取り組むだけで、面白くなる作品だなって思ったんですよ。
 だからこそ、一瞬しか出てこないオモシロ要素のあるキャラクターたちを、どこまで真面目に演じられるかが今回のポイントなのかなと思ったんです。ふざけてやることはいくらでもできるけど、そうすると本筋からブレてしまう気がして」

佐伯「凄く分かります」

三好「塩梅が難しいですよね」

佐伯「面白いキャラクターたちも、どこかリアリティがあるんですよ。こういう人、世の中を探したら実際にいそうだなって。だからこそ丁寧に真面目に演じてあげないといけないなと」

三好「何人か、クセの強い“人気キャラクター”がいるんですよね。リピーターのお客様にも、僕ら役者たちにも人気のあるやつ。でも彼らこそ、真剣に向き合って演じないといけないですよね。本気でやるからこそ面白いものができあがるので」

森山「そうそう! 男性キャスト3人のみなので、女性キャラを演じる時は特にふざけたくなっちゃいますけど、そこは徹頭徹尾、女性になっているつもりで……森山栄治が思うこの女性ってこうなのかなってお客様に分かっていただけるように演じたいですね。……とか言っておいて、めちゃくちゃふざけ倒すかもしれませんけど(笑)」

三好「あはは(笑)。回によってはお客様の空気感によって、ふざけたくなっちゃう時もありますよ。60役もあるので、誰がどの役を演じるかによって全く空気が違うから、真ん中に座っている水川啓人役のキャストが他2人を引っ張る回もあれば、両側の他キャラクターを演じているキャストが水川啓人役をリードする回もあって、回によってパワーバランスが違うのも面白いポイントなので、欲を言えば本当に全組み合わせを観ていただきたいです」

―――元々はコロナ禍初期に、座ってソーシャルディスタンスを保ちながら、少人数でできる演劇として生まれた側面もある本作。
 朗読劇だから、座っての芝居だからこそ、普段以上に意識したいと思っていることや、ここを観てほしい、というポイントはありますか?

三好「物凄いセットやプロジェクトマッピングがあるわけではない、ただ椅子があって、台本があるだけの、素舞台に近い空間で、1時間くらい本気で演じる役者を観る機会ってなかなかないと思うんですよ。
 稽古場に潜入したかのような経験ができるのではないかと。何も飾らない、何も頼れない、ごまかせない役者の本気が観られる貴重な機会なのではないかなって前回出演した時に思いました」

森山「逆に気を付けないといけないなと思うポイントがあって……朗読劇あるあるだと思うんですけど、舞台上で台本を見ているからこそ『あ、今間違えたな』、『噛んじゃったな』って後悔・反省する瞬間があるんですよ。あとはそれこそウケを狙って滑った時とか。
 そういう時に、“やっちまったな”って顔に出さないこと(笑)。本来ならその反省って舞台袖でやることなんですけど、今回はずっと舞台上に出ずっぱりだから」

三好・佐伯「間違いない(笑)」

森山「『5 years after』経験者の2人に聞きたいんだけど、この朗読劇って『椅子から離れてはダメ』、『台本から目を離してはダメ』というルールが演出上あると聞いているんだけど、それって何故なの?」

三好「椅子から立っていい、台本を離していいってなってしまうと、じゃあ朗読劇じゃなくて舞台でやればいいじゃないかってなってしまうって堤さんが思っているんだと思います」

佐伯「ルール、制限がある中で、何ができるかを各チーム楽しんでいる感じもありますよね。縛りがある中でどれだけ役者魂を見せられるかも勝負かなと。でもさっきのキャラクターづくりの話と同じで、これもやっぱり狙ってやりすぎると冷めちゃうんですけど……」

三好「椅子から離れないギリギリのところを攻めるキャストも歴代いましたよ」

森山「ああー、なるほど。でもこれだけ脚本が面白いからさ、そこをやりすぎると本質的な面白さが失われちゃうよね」

佐伯「他にもいくつか細かい決まりごとがあったりするんです。人形を持った女の子を演じる時は必ず人形を片手に持つマイムをしながら話さないといけない、とか」

森山「その決まり事、もっとお客様に周知していこうよ(笑)。こういう制限がある中でやってるんだよって」

三好「本番の後の“反省会”で触れることもあるんですけどね! あのシーンの時、椅子から離れちゃいそうだったけど、ギリギリ耐えたね、みたいな(笑)」

―――まさに今話題に出ましたが、公演後にはアフタートークならぬ、反省会『3 actors talk』(スリーアクターズ・トーク)がございますね。経験者の三好さん・佐伯さん、どんな雰囲気のトークなのか森山さんにぜひ教えていただけたら幸いです。

三好「本当にこれはね……ぶっちゃけ嫌です(笑)」

森山・佐伯「(笑)」

三好「いわゆるアフタートークなら他の舞台でもあるあるですけど、プロデューサーが出てきて、お客様たちの前で“反省会”ですよ。公開ダメ出し! こんなことがあっていいんですか!(笑)」

森山「まあでもこの“反省会”も含めてのエンターテインメントだから……つまりは、反省する内容があった方がいいのかな?
 やっぱり本編でふざける場面があった方がいいのかなって一瞬考えちゃったんだけど、でも必死に頑張った上で失敗しちゃった部分を反省するのがいいんだと思うんだよね。だからこそ、僕が今回目指すのは、反省会で反省する内容がない回!(笑)」

―――“反省会”というタイトルがセンセーショナルで目立ってしまいますが、いわば“振り返り会”のような側面もあるようです。60役を誰がどう演じたか、頭からおさらいしていくという……。

三好「確かにそうですね! ただ毎公演違う役を集中して演じるから、いざ『3 actors talk』の時間になると、この回で自分が演じたのは誰だったっけ?ってなっちゃうこともしばしば(笑)。
 他のキャストさんがどういう解釈でキャラクターと向き合ったかを話し合うと、同じ役でも全然解釈が違うのが面白くて、そういう他の人の解釈を聞ける贅沢な時間でもあります。やっぱりそれぞれの生きてきた人生が違うから、同じ役を演じても違う解釈が出てくるのかなぁって……」

佐伯「ちょっと恥ずかしいですけどね。演じた直後にお客様の前で自分の解釈について話すって。でも僕らにとっても、お客様にとっても、貴重な機会だと思います」

三好「本来は楽屋で役者同士やプロデューサーさんと話す内容だもんね」

森山「じゃあやっぱり反省することが少なければ少ないほど、そういう話をじっくりする時間がとれるってことだから……反省ゼロの反省会を目指したいと思います!(笑)」

―――頑張ってください! ではここで1つ、作品にちなんだ皆さん個人への質問なのですが、今から5年後の自分自身に何か声をかけられるとしたら、何と声をかけたいですか?

佐伯「実は僕、“7枠13番”という劇団立ち上げて、この6月に下北沢のOFF・OFFシアターで旗揚げ公演を行うんです! なので5年後の自分に『僕は今、頑張って劇団を立ち上げてよかったと思っているよ、これからも頑張って!』と伝えたいです」

三好「おお、素晴らしい!ということは丁度5年後には劇団結成5周年だもんね」

佐伯「目標は団体として本多劇場で公演をやることで……」

森山「『本多劇場に立てていますか?』って5年後の自分に聞いてみたいね!」

佐伯「そうですね! 頑張りたいです……!!」

森山「いいなぁ。僕は5年後、いよいよ50代になっちゃうから……『怠けず、毎年健康診断に行ってください』と伝えたいですかね(笑)。」

三好「いいですね! 僕は4月から念願だった冠ラジオ番組を文化放送さんでやらせていただいていて、まだまだこれからの番組なんですけど、長寿番組を目指しているので『番組、頑張って続けられていますか?』というのは5年後の自分に聞いてみたいです。
 あとは俳優として憧れの佐々木蔵之介さんと2人で対談してみたいというのが積年の夢でして……5年後に、佐々木蔵之介さんをゲストにお招きして公開収録ができていたら嬉しいですね。亮が5年後に劇団で本多劇場を借りる時にさ、休演日でいいから公録用に舞台貸してくれない?(笑)」

森山「確かに、公開録音なら1日だけでいいもんね(笑)」

佐伯「一石二鳥になっちゃいますね! 考えておきます(笑)」

―――ありがとうございます! 5年後が楽しみですね! では最後に、こちらのインタビューをお読みの皆様に一言ずつお願いします。

佐伯「3人の役者が60役を代わる代わる演じて、1公演も同じ組み合わせがない、一瞬一瞬を観ていただきたい舞台になります。
 2度目の『5 years after』出演になりますが、ここ数年の自分の変化を自分自身でも楽しみつつ、お客様にも成長を感じていただけたら嬉しいなと思います」

三好「前回出演させていただいた時に『役者が変わっていく瞬間が目の前で見られる作品で、面白かった』という感想をお客様からいただいたことを強烈に覚えています。1時間で20役を演じるスピード感って、稽古で積んできたものだけではなく、その場で相手役の言葉を受けて生まれるものもあって、開けたことがない自分の引き出しがその場で開く瞬間もきっとあると思うんです。
 僕も2度目の出演ですが、共演者も変わり、僕自身も少しまた年を重ねているので、ゼロからの気持ちで僕自身が成長できる作品にしたいと意気込んでおります。その姿をぜひ楽しみにしていただけたらと思います」

森山「『5 years after』今回初参加なので、先輩方の足を引っ張らないように、最後まで怪我無く全員で公演を終えたいと思います!」

三好・佐伯「(笑)」

三好「新人俳優さんのテンプレコメントじゃないですか!(笑)」

森山「(笑)。改めていろいろな決まり事もある朗読劇で、役者の技量が試されるものだとは思うんですが……あまりそういうことにはこだわらず、気にしすぎずに、真摯に芝居に向き合ってチャレンジしていきたいと思います。ぜひ劇場でお待ちしています!」

(取材・文&撮影:通崎千穂(SrotaStage))

プロフィール

森山栄治(もりやま・えいじ)
1976年10月3日生まれ、長崎県出身。ミュージカル『テニスの王子様』1stシーズン 桃城武役、『ROCK MUSICAL BLEACH』シリーズ 阿散井恋次役などで、2.5次元舞台の創成期を支える。男性4人組演劇ユニット*pnish*(パニッシュ)の副リーダー。近年の主な出演作品は、映画『刀剣乱舞-黎明-』渡辺綱役、MBSドラマ特区『FLAIR BARTENDER’Z』七郎役、進戯団 夢命クラシックス×07th Expansion vol.8『うみねこのなく頃に~Stage of the golden Witch~Episode2』右代宮留弗夫役、ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』秩父鉄道役、都営浅草線役など、レインボータウンFMレギュラー番組『森山栄治のこっそり聴いてくれないか!』(毎月第4木曜日20時)など。

三好大貴(みよし・だいき)
1992年7月27日生まれ、大阪府出身。2012年より劇団Patchに所属し、脚本・演出・音楽制作なども手掛ける。近年の主な出演作品に、舞台『刀剣乱舞』シリーズ 南海太郎朝尊役、舞台『キノの旅II -the Beautiful World-』シズ 役、舞台『フルーツバスケット 2nd season』草摩紅野役、音楽劇『ガリレオ★CV2』小中行秀役など。

佐伯 亮(さえき・りょう)
1995年10月10日生まれ、広島県出身。第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでファイナリストに選ばれ、メンズモデルとして芸能界デビュー。近年の主な出演作品に、『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』シリーズ 守沢千秋役、舞台『ブルーロック』シリーズ 千切豹馬役、『家庭教師ヒットマンREBORN!the STAGE』入江正一役、『ダブルブッキング』-2023- 武田陽介役など。

公演情報

役替わり朗読劇
『5 years after ver.11 ~enjoy your life !~』

日:2024年5月21日(火)~26日(日)
場:赤坂RED/THEATER
料:7,000円(全席指定・税込)
HP:https://no-4.biz/5yearsafter/ver11/
問:エヌオーフォー mail:info@no-4.biz

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