2024年1月に女性のみで結成された、劇団たまゆら。その旗揚げ公演となる舞台『玉響神楽(たまゆらかぐら)』が、4月に武蔵小金井のStudio青猫にて上演される。演出は劇団代表の丘野暁が自ら務め、脚本には劇団CretanCrete(クリータンクリート)の座長であり、劇団三年物語で全作品の脚本・演出を担当した藤本浩多郎を迎えた。
普段はアーティストとしても活躍する女優陣が“劇団員”として肩を並べることになるが、改めて劇団結成の経緯、今作の見どころ、そして今後の展望を、主題歌を担当するRisky Melodyの日野アリス・Asumiをはじめ、星守歩姫・鈴木玲那・朝比奈すみれに聞かせてもらった。
―――劇団たまゆら、旗揚げおめでとうございます! まずはこの劇団を立ち上げたきっかけを教えてください。
日野「私たちの所属している事務所は、私とAsumiがメンバーとして活動しているRisky Melodyをはじめ、アーティスト活動をしているメンバーが多く所属しています。プロデューサーの丘野暁さんから、音楽と舞台を融合させたカンパニーを作ろうという話が出て、私自身も劇団を立ち上げてみたかったので、やってみよう!という話になりました。
これまでにもプロデュース公演は何度か実施してきたのですが、1回きりで終わっちゃうじゃないですか。バンドのように、ずっと同じメンバーで何年も活動を続けて、一緒にレベルアップしていく、というのをやってみたかったんです。女子だけの劇団って昨今なかなかないので、そういう意味でもやってみたいなと思って」
Asumi「私は音楽活動がメインで、舞台に関わらせていただくことになるなんて、この事務所に入るまでは思ってもいませんでした。人生何があるか分からないですよね。
アーティストを兼ねている女優が多い分、普段は舞台というものに馴染みがない方にも親しんでいただける、興味を持っていただける劇団にできたらいいなと思います」
―――音楽と演劇、どちらも表現活動の一環ではありますが、表現者側としてはかなり違うものでしょうか?
Asumi「音楽だと楽譜上にある休符やリズムをある程度は正確に刻まないといけないのですが、演劇だとその場、その時の空気感によってセリフの間の取り方が全然変わってくるのが面白いところでしょうか。でもバンド活動と演劇、やってみると通じるものもあって、どちらも1度として同じものは作り上げられない、生のエンターテインメントだなと思います」
―――劇団名の「たまゆら」という言葉に込めた想いとは?
星守「女性っぽい、和名を探したんですよね」
日野「『朧月(おぼろづき)』とか他にも候補があったのですが、その中で『たまゆら』が1番柔らかくて綺麗な響きだと感じたのと、儚いイメージがいいなと思ってこの名前になりました」
―――劇団のコンセプトや今後の公演の目標は?
星守「これまでの事務所のプロデュース公演は現実世界をモチーフにした作品が多かったのですが、たまゆらではいわゆる2.5次元に近い、デフォルメされたキャラクターが活躍するファンタジー寄りの作品を公演していきたいなと思っています。
旗揚げ公演『玉響神楽』のキービジュアルにもその雰囲気が出ているかなと。今作では縄文時代と日本の神話を織り交ぜた、和風ファンタジーをお届けします。劇団員の中にも、2.5次元やファンタジーが好きなメンバーが多くて、特に玲那ちゃんがそうだよね」
鈴木「はい! 私は元々アニメが好きでお芝居を始めたので、自分の所属する劇団でこういった演目に挑戦できるのは凄く嬉しいです」
星守「今後もガールズ演劇らしい華やかさを楽しんでいただけるような作品をお届けしていけたらなと思っています」
日野「座付き脚本家の藤本浩多朗さんはファンタジー作品に定評がある方で、本当に面白いんですよ! 『玉響神楽』も続き物になりそうなくらい壮大なストーリーなので、私自身も楽しみにしています」
朝比奈「私はこれまでホームドラマや学園モノへの出演が多かったので、ファンタジーは新鮮な気持ちです。劇団はスタッフ業を劇団員が兼ねることが多いのも特徴かと思うのですが、私は今回小道具や舞台美術も任せていただきます。どちらも役者業と同じくらいやりたかったことなので、任せてもらえて嬉しいです。世界観を構築するために凄く大事なものなので、作品のクオリティを底上げできるように頑張りたいと思います」
日野「劇団ってバンドに似ているんですよね。バンドって皆さんが思っている以上に自分たちで何でもやるんですよ。作曲や作詞、ツアーに行くときの荷物の運搬とか(笑)。だから自然と家族みたいになるんです。劇団たまゆらも、家族みたいな私たちの居場所になったら嬉しいですね」
―――改めて旗揚げ公演『玉響神楽』についてお伺いします。それぞれどんなキャラクターを演じるのかぜひ教えてください。
日野「今作は獣耳の狐巫女たちが凄く可愛い作品なのですが、私はその中で『月読(つくよみ)』という神様の役を演じます。
これまでのプロデュース公演でもそうでしたが、私はまとめ役だったり、悪役だったり、強めの役を演じることが多くて(笑)。今作も例に漏れず神様役になりますが、おちゃめな一面もあるので、そこをお客様に愛していただけるように演じられたらと思います」
Asumi「私は『稲荷乃(いなりの)』という白い狐巫女を演じます。三つ子三姉妹の末娘で、素直でかわいらしい子なのですが、茶色の狐が多い中で白い狐は疎まれていて、それに起因した暗い過去を背負っています。月読に与えられた白い勾玉の運び手となって世の禍を祓う旅に出る、今作のヒロインポジションになります」
朝比奈「私は三つ子三姉妹の次女『巻物(まきもの)』を演じます。凄くマイペースな子で、協調性がない、いわゆる不思議ちゃんキャラで……でも、勘がよくて、ここぞという時に核心をつく、天才でもあります」
星守「私が演じる『紫蘇乃(しその)』は、“始祖”とかかっていて、1番偉い狐です。なのに、頭の上にはシソの葉っぱが乗っています(笑)。
今回唯一人間のキャラクターとして登場する巫女婆に拾われて、甘やかされておだてられて育ったせいで、偉そうな態度をとるんですよ(笑)。私自身の元気で明るいパーソナリティを生かして、ハチャメチャな紫蘇乃を演じたいと思います」
日野「物語の前半を引っ掻き回すのが紫蘇乃で、後半が私(月読)って感じですね(笑)」
鈴木「私が演じる『紅葉乃(もみじの)』は、歩姫ちゃんが演じる紫蘇乃の娘です。暴走気味な母を説得したり、稲荷乃や巻物にはお姉さん狐として接したりと、母とは対照的に落ち着いた子です(笑)。
長年やっていたクラシックバレエの経験を生かして、優美な狐を演じたいと思います」
―――個性豊かなキャラクターが沢山登場するんですね! 楽しみです。
また、今作の主題歌は2月14日にリリースされたRisky Melodyのメジャーデビューシングルの収録楽曲「記憶の岸辺」だと伺いました。作曲はAsumiさん、作詞は日野さんが手掛けられたとのことですが、どのような過程で生まれた楽曲なのでしょうか?
日野「脚本の藤本さんと、旗揚げ公演は和風ファンタジーでいきましょうというお話をして、それから先に楽曲の方から製作に取り掛かりました」
Asumi「出会いと別れ、いわば輪廻のようなものを意識して、作品に寄り添いつつも、Risky Melodyらしさを忘れずに作曲しました。出来上がったデモ音源を聴いて、藤本さんも何度か脚本をリライトしてくださって……」
日野「なので、脚本と楽曲、どちらが先というよりは合作に近いでしょうか。ぜひ楽曲の方も繰り返し聞いて楽しんでいただけたらと思います」
―――先に楽曲を予習してから観に来ても、舞台で聞いてから何度も聴き返すのも、どちらも良さそうですね。
では最後に、劇場に観に来てくださる皆様にメッセージをお願いします。
星守「もともと音楽活動をしているメンバーが多い劇団ですので、ライブで私たちのことを知ってくださっている方も多いのかなと思うのですが、沢山の方々にこの劇団たまゆらを通して出会い、作品を届けられたら、嬉しいことこの上ないなと思います。
他にも、ビジュアルを見て気になった方や、武蔵小金井の近所の方など、もともとは私たちと接点がなかった方、舞台に馴染みがない方でも、お気軽に足を運んでいただけたら嬉しいです」
鈴木「ビジュアルも、脚本も、演出も、自信を持ってお出しできる作品になっているので、あとは私が自信を持って演じられるように沢山稽古をしていくのみです! 一部Wキャストで、Aチーム・Bチームがありますので、繰り返し観ていただいても楽しめる作品かと思います。ぜひ劇場で、お待ちしております!」
朝比奈「絶賛稽古中ですが、今、試作している、とある小道具の“量”が凄いことになっているので……ぜひ劇場でビックリしてもらえたらと思います。
どんな劇団にも旗揚げ公演というのは1回しかないので、この公演を大切に丁寧に、今後に繋いでいけるように成功させて、いろいろな方に劇団たまゆらと、メンバーを知ってもらいたいなと思います」
Asumi「今回の旗揚げ公演、バンド活動の方で知り合ったスタッフの方々を含めて、沢山の皆様が関わってくださり、自信を持って面白い作品に仕上がっていると言えます。舞台を観たことがない方にも、逆に普段舞台を沢山観ている方にも楽しんでいただけると思うので、ぜひご覧いただけたら幸いです」
日野「舞台女優を始めてから10年以上経ちますが、この劇団たまゆらは、今までどこにもなかったような劇団に育てたいと思っています。このStudio青猫を常設小屋として、まずはこの小屋を満席にできることを目標に、ゆくゆくはもっと大きな劇場でミュージカルもやりたいですし、さまざまなエンターテインメントを皆様にお届けできる事を目標にしています。
旗揚げ公演、私たち全員とても気合いが入っているので、演劇が好きな方、音楽が好きな方、どなたでも、お気軽に観に来ていただけたら嬉しいです!」
(取材・文&撮影:通崎千穂(SrotaStage))
プロフィール
日野アリス(ひの・ありす)
“STRAYDOG” Produce『路地裏の優しい猫』・『海街diary』、舞台『アナザーチート』、『問題のない私たち』など、女優として多数の作品に出演。本作品では音楽も担当する「Risky Melody」のボーカリストでもある。ミスFLASH 2020 審査員特別賞受賞。
Asumi(あすみ)
女優・ギタリストとして活動し、楽曲も手掛ける。主な出演作品に、舞台『エターナルメロディー~終わらない歌を少女はうたう~』、フジテレビ開局60周年記念SPドラマ『磯野家の人々~20年後のサザエさん~』など。「Risky Melody」ではギターを担当。2016年、GIT MASTERS 2016 Jr.グランプリ受賞。
星守歩姫(ほしもり・あゆき)
女優として数多くの作品に出演。主な出演作品に、中京テレビ「それって!?実際どうなの課」、日本テレビ「千鳥かまいたちアワー」など。2023年8月からはロックユニット「RAIDEN」としても活動を開始。
鈴木玲那(すずき・れな)
星守歩姫と共にロックユニット「RAIDEN」として活動。女優としての主な出演作品に、純血華劇派. JUNKETSU TERRO RHYTHM 第23回ミュージカル公演『トーキョー30’s』、『Latimeria-ラティメリア-』など。
朝比奈すみれ(あさひな・すみれ)
劇団亀仙人公演 舞台『ちさとの鈕』、『Latimeria-ラティメリア-』に出演するなど、舞台女優として活躍。その傍ら、2023年8月より「レトロ・ドール」として活動を開始する。
Risky Melody(りすきー・めろでぃー)
2014年結成。メンバーはALICE(Vocal)・AYA(Keyboard)・ayae(Drums)・HaRU(Bass)・Asumi(Guitar)。様々なジャンルを取り入れたメロディアスハードロック、熱く気持ちが昂るような曲が特徴の5人組ガールズバンド。ノリの良い、アグレッシブなライブパフォーマンスで、全国各地で活動中。年間のライブ本数は200本近く。ガールズバンドの中では、日本一のライブ数を誇る。結成10周年にあたる2024年に念願のメジャーデビューを果たす。デビューシングル「いたいいたいあい」は作詞を相川七瀬が手掛け、これまでのエレクトリックでハードなロックサウンドとはまた違った側面で新たな魅力を打ち出す。
公演情報
劇団たまゆら 旗揚げ公演
『玉響神楽 -TAMAYURA KAGURA-』
日:2024年4月4日(木)~7日(日)
場:Studio 青猫(JR武蔵小金井駅より徒歩5分)
料:S席7,500円 A席5,500円(全席指定・税込)
HP:https://twitter.com/tamayura2024
問:劇団たまゆら
mail:info@gekidan-tamayura.com