器楽とマイムの融合で、バロック音楽の巨匠 J.S.バッハ最晩年の作品に挑む バロック音楽は“しゃべる”音楽。バッハ×マイムで体感できるステージに

 ミューザ川崎シンフォニーホールのホールアドバイザー、松居直美による企画『言葉は音楽、音楽は言葉』。第5弾はJ.S.バッハの楽曲『音楽の捧げものBWV1079』をテーマに据えた。

 「以前、器楽とマイムという“言葉のない”もの同士で言葉を表現できたらという想いから、マイムカンパニー『マンガノマシップ』にご出演いただき、そのステージがとても素晴らしかったので、また違う作品で彼らとやってみたいと思いました。非常にクリエイティブで、アーティスティックな空間を創り出してくださるお2人です。今回も器楽とマイム、それぞれが主役になる見せ方で、舞台を構成します。バロック音楽は“しゃべる”音楽。音は喋ってるんだ、ということを、いろんなツールを使って伝えていきたいです」

 演奏者としてパイプオルガンを松居、そしてバロック・フルートに前田りり子、バロック・ヴァイオリンに寺神戸亮、ヴィオラ・ダ・ガンパに上村かおり、チェンバロに曽根麻矢子と、バロック界の第一人者たちが集う。

 「バッハ自身は、『音楽の捧げもの』で楽器指定をしていませんが、作品中のトリオ・ソナタは、ぜひアンサンブルでと思って皆さんにお声がけしました。カノンは10曲あるので、さまざまな楽器を組み合わせてバラエティに富んだ演奏を楽しんでいただけたら。そして3声と6声の『リチェルカーレ』というバロックならではの古式ゆかしい楽曲様式は、音の重なりが美しく活きるオルガンでなど、どの曲をどの楽器で演奏するか悩みどころでした」

 本作はバッハがフリードリヒ大王から主題の旋律を与えられ、即興演奏したことから始まった。

 「フリードリヒ大王がフルーティストだったので、ぜひバロック・フルートを編成に入れたいと考えました。この主題はハ短調なのですが、実はバロック・フルートでハ短調を弾くのは、非常に大変なのだそう。敢えてそれを指定してきたフリードリヒ大王は、腕に相当の自信があったのだろうと思います(笑)」

 この楽曲に、松居自身が向き合うことを決めた理由とは?

 「オルガニストにとって、バッハはライフワーク的な存在。近年、バッハのオルガン曲を全曲、順を追って演奏してきていたので、オルガン曲ではないですが、彼の最晩年の作品である本作をこの機会にやってみたいと思いました。全曲演奏される機会はあまりないですし、名手が揃っていますから、私自身も楽しみです。シンフォニーホールという空間で、音とマイムの動き、調和のとれたものが生まれたらいいなと思っています」

(取材・文:木下千寿 撮影:友澤綾乃)

2024年幕開けです! 今年の野望を1つ教えてください。

松居直美さん
「今年の野望の1つは、筋肉を増やすことです。ヨーロッパで買ってきた自慢のフライパンが重くて、思わず両手で持ったのが我ながらショックでした。脱・コロナの数年の生活習慣!です」

プロフィール

松居直美(まつい・なおみ)
国立音楽大学、同大学院卒業、フライブルグ国立音楽大学国家演奏家コースを「最優等」で卒業。第2回日本オルガンコンクール、第21 回ブダペスト国際コンクールなどで優勝。国内外での定期的な演奏活動のほか、国際コンクールの審査員も務めるなど広く活躍。共編著に『オルガンの芸術』(道和書院、2019年)。

公演情報

言葉は音楽、音楽は言葉 Vol.5『J.S.バッハ 音楽の捧げもの』

日:2024年2月17日(土)14:00開演
場:ミューザ川崎シンフォニーホール
料:一般4,000円
  U25[小学生~25歳]1,500円
  (全席指定・税込)
HP:https://www.kawasaki-sym-hall.jp/
問:ミューザ川崎シンフォニーホール 
  tel.044-520-0200(10:00~18:00)

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