混沌とした時代に強烈な印象を残し、わずか47年の人生を送った寺山修司。彼の没後40周年の節目に、紀伊國屋ホールで記念公演が上演される。題して『三上博史 歌劇 – 私さえも、私自身がつくり出した一片の物語の主人公にすぎない-』。
主演の三上博史は、1980年代後半からテレビドラマで主役を数多く務めてきた俳優だ。ドラマ文化の担い手とも言える存在として知られ、近年では個性的な役柄も務めているが、最初に彼の才能を見出したのは寺山修司だった。高校在学中、友人の付き添いでオーディションに訪れた三上を、映画『草迷宮』の主役に寺山が抜擢したのが全ての始まりだ。
「寺山のエッセンスを、その言葉に注目して抽出したいと思っています。単なる演劇でも朗読会でも、はたまたコンサートでもない。それを大きく俯瞰して一括りにした感じです。でも上手くいくかはわからない。言葉はドラマの中で活きるものですから。今回は天井棧敷の後継である、演劇実験室◉万有引力の役者さんにも手伝ってもらいますから、その上でどうなるかですね」
ドラマの世界でしか三上を知らない人には意外な側面かもしれないが、その言葉の裏には寺山の申し子としての自負と実績が存在している。
「毎年5月、寺山の命日“修司忌”に青森県三沢にある寺山修司記念館で、この15年近く追悼ライブをやってきました。記念館の企画にあわせた朗読から始まって、ここ数年は歌うことが多くなってきていました。寺山作品は結構歌詞も多いんですね。いつもはピアノのエミ・エレオノーラさんとなのですが、今年は没後40年ということもあり予算に余裕があったので、バンドで出演しました。メンバーは『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の面々で、これが三沢だけでは勿体ないという話はしていました。そこに紀伊國屋ホールの話が来たんです。そのまま持っていくことも考えましたが、“修司忌”でやってきた中で唯一できなかった演劇にも踏み込もうと思いました。寺山の言葉の組み立ては凄くて、悪夢めいた、悪夢の匂いがするいい文句がいっぱいあって、それだけを切り出しても素敵だと思います。それは今でも通用するし、今の若い子達にもスパン!とハマるような気がするんです。だからむしろ演劇初体験の人が持っている感性に期待しているかも知れませんね。寺山を知る人だけでなく、まっさらな人に来てほしいです」
(取材・文:渡部晋也)
プロフィール
三上博史(みかみ・ひろし)
東京都出身。高校在学中に寺山修司に見出され、寺山自身が監督・脚本を手がけたフランス映画『草迷宮』で主演し俳優としてデビュー。1987年に公開の映画『私をスキーに連れてって』で脚光を浴び、その後『君の瞳をタイホする!』など、数々のドラマに出演し、一世を風靡する。映画では『スワロウテイル』、『月の砂漠』などに主演。舞台では、寺山修司没後20 年/パルコ劇場30 周年記念公演 魔術音楽劇『青ひげ公の城』、ロック・ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』に主演。映画・ドラマ・舞台など、多岐にわたって活躍している。
公演情報
寺山修司没後40年記念/紀伊國屋ホール開場60周年記念公演『三上博史 歌劇 ―私さえも、私自身がつくり出した一片の物語の主人公にすぎない―』
日:2024年1月9日(火)~14日(日)
場:紀伊國屋ホール
料:8,800円(全席指定・税込)
HP:https://www.mikami-kageki.com/
問:メディアミックス・ジャパン
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