精一杯、力強く「生きる」ことを見つめ、考えてみませんか。渡辺正行が作・演出する感動作 観客からの好評を受けて堂々再演

精一杯、力強く「生きる」ことを見つめ、考えてみませんか。渡辺正行が作・演出する感動作 観客からの好評を受けて堂々再演

 コント赤信号の“リーダー”こと渡辺正行が脚本・演出を手がけ、1994年に初演した舞台『野に咲く花なら』。筋ジストロフィーという完治困難な難病を抱えながら生きる若者達を描くこの作品は、東京で昨年20年振りに再演が実現した。さらに、東京公演を観て感動した人々の尽力で急遽実現した京都公演では、現在も病と闘う方々も劇場に駆けつけた。
 困難にぶつかって、それに抗っても越えられないとしても、それでも精一杯生きる。そんなメッセージが込められたこの作品が、およそ1年半ぶりに再演されることとなった。
 今回の演出は初演当時と同じく渡辺が担当し、主演には前回同様、山下聖良と乙木勇人が勤める。さらに今作では物語のキーパーソンでもある役で、ガールズ演劇界で活躍する相澤瑠香の出演が決まっている。山下、乙木、相澤。そして作・演出の渡辺に、再演決定を迎えた心境を聞いた。

―――まずは再演の話を聞いて、今の気持ちを教えてください。

山下「この作品は生半可な気持ちでは出来ないということを、昨年身をもって体験しました。だから今から背筋が伸びるような、引き締まった気持ちです。もちろん昨年を越えようと思いますが、あの時は本番に入ってからも悩み続け、日々考えながら舞台に臨んでいたことを思い出します。この1年で変化した私の気持ちも影響してくるでしょうね」

乙木「山下さんと同じような感覚ですが、僕には楽しみな気持ちもあります。昨年2公演(東京・京都)あったので、今回で3回目の上演になりますが、演出が渡辺さんになるので、同じ台本だけどまた違った健一に出会えるのかなと思ってます。作品に向き合える喜びと覚悟を感じます」

渡辺「昨年は演出をお任せして、いいなあと思って観ましたが、同時にもっと良くできるのではないかという気持ちも生まれてきたんです。そんな時にプロデューサーから話を貰ったので、その気持ちに向き合ってみたいと思いました。ただ(上演日程を)年末年始にという話には嫌だなあと(笑)。
 まあこれまでに何回も関わっていますが、その度に違う発見や仕上がりになる作品ですね。自分も人生の後半にかかっていますが、その時期にしっかり手がけてみたいと思いました」

―――相澤さんは初出演になります。

相澤「ええ。昨年の公演には友達が出演していたこともあって、話には聞いていました。だからお話をいただいて素直に嬉しかったです。再演ってただ同じようにやればいいわけではなくて、越えていきたい、そして私達ならではの作品に仕上げたいと思います。
 台本を読みましたが、闘病している方を演じる事の難しさを感じますね。想像しきれないことが多いですし、安易に理解した気になるのは危険ですから」

渡辺「でも相澤さんは(役の)理佐子の雰囲気に合っている気がしますよ」 

―――同じ役で出演する山下さん・乙木さんには、再演にあたって掘り下げたい部分などはありますか?

山下「前回、東京の後に2ヶ月くらい間があって京都公演でした。その前に稽古があったんですが、そこで東京公演で悩んでいた部分を解決できて、京都に挑めました。しかも京都公演は患者さんが観劇にいらしゃって、目の前にいるわけです。そんな空気の中での上演でしたが、東京ではすんなり言えなかった凄く厳しい(役の)敬子のセリフを、不思議と京都ではすんなり言えました。そういった感覚をさらに研ぎ澄ましていきたいです」

乙木「キャスト・演出が変わる事でもう一度新たに向き合う気持ちです。昨年は稽古中に、身体が拒否して出口が解らなくなったことがありました。でも時間が経ってみると、健一の人生を生きる中で、楽しむ事を忘れちゃいけないんじゃないかと思うようになりました。きっと健一も僕が辛い気持ちで演じては欲しくないと思っているでしょう。だから“楽しむ”という言葉を胸に挑みたいです」

―――相澤さんはもう何か準備をされていますか。

相澤「筋ジストロフィーについては知識が無いので勉強が要りますが、今は前回公演のキャストさんがSNS等に残した投稿を沢山読んでいます。なかでも今回私が演じる理佐子役の方が投稿した文章には凄い葛藤が滲んでいて、私も生半可では取りかかれないと思いました。現実の辛さにも向き合うことが必要ですし、セリフをただ言うのではなく、理佐子の気持ちになりきって発していきたいです」

―――昨年の公演の後、SNSや口コミでの反応などを聞かれた方はいらっしゃいますか。

山下「私を通して東京公演を観て頂いて、凄く良かったので京都まで足を運んでくださった方がいたんです。その話を聞いて、伝わったんだという実感が湧きました」

渡辺「観てくれた知人からは『いい作品だね』と言われます。でもさらに広く多くの人に観て頂きたいですね。役者さんや作品の力を伝えたいです。ネット配信の話もありそうですから、そこには期待したいです」

―――ところで今回演出も担当される渡辺さんですが、キャスティングには関わっていらっしゃるのですか。お笑い芸人の方も何人かキャスティングされていますが。

渡辺「オーディションがありまして、それには僕も立ち会いました。お笑い系のメンバーは僕からも推薦させて貰いました。やっぱり役に合っているメンバーを選んだつもりです。
 他にはベテラン女優の岡まゆみさんが出てくださいます。この前NHKのドラマでもご一緒したのですが、彼女は小さい劇場の公演もでてくださるし、歌も上手いしお美しい。なにより品がありますね。これは凄く嬉しいですね」

―――では皆さんそれぞれからメッセージを頂けますか。

相澤「凄く優しく温かさのある作品ですから、それに向き合っていい作品にしたいと思っています」

渡辺「相澤さんは初めてだから、どう役に向き合うか見所でもありますね」

乙木「再演を迎えて山下さんや演出の渡辺さんと再会して、覚悟と緊張感が高まってきました。僕は最近ストレートプレイが少なかったので、それもプレッシャーになってます。理佐子役の相澤さんをはじめ、新しい出演者も沢山いらっしゃいますから、その関係性がどうなるかが楽しみですね」

山下「昨年観たよ、ではなく、またもう一度おいで頂きたいですね。どうしても重くて難しい作品だと思われがちですが、実は親しみやすい作品なので、身構えずにおいで下さい」

渡辺「今回は演劇祭にも参加する作品となりますが、そういったこともまた面白いと思っています。若い役者さん達と創る舞台は、彼らの成長を目の当たりにできる場でもあり、それは自分の活力にもなります。是非劇場でライブの演劇を感じてください。毎日、毎回違いがありますから」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

渡辺正行(わたなべ・まさゆき)
千葉県出身。明治大学在学中に劇団テアトル・エコーの養成所に入所し、コント赤信号を結成するラサール石井・小宮孝泰と出会う。テレビ番組を通して人気を獲得し、さらに司会者として多数のバラエティ番組で活躍。また若手の育成にも力を入れており、1986年から「ラ・ママ新人コント大会」を主催する。俳優としては、1987年公開の映画『ちょうちん』で日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。2003年から、自らがプロデュースする舞台を上演するなど、マルチな才能を発揮している。

山下聖良(やました・せいら)
福島県出身。18歳で上京して演劇の世界に入り、2015年からは劇団ひまわりに所属。舞台作品を中心に、テレビドラマや映画などの映像作品へも出演している。さらにシンガーとしても活動の幅を拡げ、2020年5月にファーストシングル「明日へ」を配信リリース。アーティストデビューを果たす。幼稚園教諭・保育士の資格を持っている。

乙木勇人(おとぎ・はやと)
愛知県出身。代表作には『あの日、僕は知らない夢の中で君と』青木タクヤ役、人狼 ザ・ライブプレイングシアター ルーキー公演『人狼TLPT O』ケヴィン役など、多くの舞台に出演。さらにテレビドラマ『教場Ⅱ』、『博多弁の女の子はかわいいと思いませんか?』、「THE突破ファイル2時間SP」再現ドラマ、映画『今日から俺は!!劇場版』などに出演。特技は極真空手で、全日本大会で二連覇の実績があり、元U17日本代表主将としても活躍した。

相澤瑠香(あいざわ・るか)
宮城県出身。ドリーミュージック・アーティストスクールに入校後、15歳で宮城県ローカルアイドルユニットsendai☆syrupに加入。2017年にテレビ朝日「ラストアイドル」のオーディションで初期暫定メンバーに選ばれた。その後、セカンドユニット Good Tearsのメンバーとして、2022年5月末の活動終了まで活躍する。活動終了後、ガールズ演劇の旗手、アリスインプロジェクトの『ダンスライン』や『アリスインデッドリースクール 永劫』に出演。舞台での経験を積み重ねている。

公演情報

ファーストピック『野に咲く花なら』

日:2024年1月24日(水)~28日(日)
場:シアターグリーン BOX in BOX THEATER
料:S席7,500円 A席6,500円(全席指定・税込)
HP:https://www.first-pig.com
問:株式会社ファーストピック(担当 西)
  tel.044-833-7726

Advertisement

インタビューカテゴリの最新記事