妖怪とか夢とか気持ちとか。見えないものが跋扈するSF青春ミステリーコメディ! あやしげな人間たちが溜まる小さな探偵社で巻き起こる物語。ただ、となりにいることが、どうしてこんなに難しい?

妖怪とか夢とか気持ちとか。見えないものが跋扈するSF青春ミステリーコメディ! あやしげな人間たちが溜まる小さな探偵社で巻き起こる物語。ただ、となりにいることが、どうしてこんなに難しい?

 主宰の善雄善雄(よしお・ぜんゆう)が、作・演出を手掛ける「ザ・プレイボーイズ」による第11回公演。
 ある街はずれの小さな探偵社は、暇を持て余したあやしげな人間たちの溜まり場と化していた。そこに訪れた1人の客が神妙な顔でこう言った。「彼女は××されました。妖怪に××されたんです」。そして物語が始まる……。
 妖怪とか夢とか気持ちとか、見えないものが跋扈するSF青春ミステリーコメディとは果たしてどんな内容なのか? 善雄、そして主演の結城洋平に本作への意気込みを聞いた。

―――妖怪をモチーフに選んだ理由について教えてください。

善雄「最初は、世の中にある『分断』について描きたいと思いました。元々、妖怪も含めた不思議なものが好きで、前回の公演では量子力学や仮想現実などの科学をモチーフにした作品を書いています。今回、人間の本質を描きたいと思い立ち、その時“人間以外のもの”にスポットを当てるのが分かりやすいのではと、妖怪を選びました。
 そして妖怪についても調べていくと、明らかに『この妖怪はただの人間でしょ?』、みたいな視点も出てくる。例えば、平安時代末期の1156年に保元の乱という武力闘争に敗れて、島流しにあった崇徳上皇は、京への強い怨恨から天狗となったとされています。実際に天皇として即位した人物が、その生き方や死に方、周囲との関係性や事件、事故など様々な要因が絡まる中で、1000年近く、妖怪として語り継がれている。これは後世の人間たちが『人間ではない』と線引きをしたようにも捉えられると思うのです。
 現代でも未だに存在している分断が問題視される中で、それならばどうしたらより良い未来に向かっていけるだろうかと考えられる作品にしたいと思いました。とはいえ、気楽に観て頂けるSF青春ミステリーコメディにしたいです。
 また、妖怪が持っているミステリアスでキャッチ―な部分も最大限生かしたいです。タイトルなどから『どうせ妖怪の話なんでしょ』と思われるかもしれませんが、それだけで終わらない作品にできたらと考えています。
 あとは今回、集まって下さったキャストスタッフの皆さんが本当にいい意味で“バケモノ”みたいな才能を持った方ばかりなので、ご期待いただけたらと」

―――結城さんは善雄さんの作品にどのような印象を抱いていますか?

結城「善雄さんとの付き合いは8,9年になりますが、今の話を聞いていて、キャッチ―なテーマを扱いながらも、その奥に色んな事を考えている方だなと改めて思いました。常に新しいものを探しているというか。劇団名もタイトルも一見、すごくポップだけども、その奥にあるものを上手に隠している。これまでも観終わったあとに『ああ、そうだったのか』と気づかされることが多いので、今回の作品もそういう風になるんじゃないかと今から期待しています。
 “見えないもの”を大切にしているというか、お芝居とも共通する部分があると思うんですね。舞台上で展開されるものだけではない、何か見えないものに対してお客さんは惹かれ、その対価としてチケットを買って頂く。僕自身もそういったものを楽しみに舞台を観に行くので、きっと共感してくださる方も多いんじゃないかと思います」

―――登場人物の設定は役者の方をイメージして書かれたそうですね

善雄「そうですね。例えば結城君が演じる探偵の役は、人当たりが良くて飄々としていて誰にでも優しいけど、ほんの少しだけ言葉の理解力は乏しい……みたいな設定で」

結城「善雄さん、そういう風に俺のこと見てるんだ……」

一同「(笑)」

結城「でも的外れではないような気がします。あまり考えずに発言するタイプかも」

善雄「いやいや、理解力うんぬんのくだりは、完全にフィクションです! 結城君は、人の話を聞くのがとても上手な方ですし。ただ探偵の理解力が良かったらストーリーがすぐ終わっちゃうから(笑)、依頼人にしっかり話をさせる為にそういう設定が必要だったんです。
 でも結城君とは長い付き合いですが、まだ底が見えないというか、人が出来ないことをさらっとやってしまうどこかある種、妖怪のような一面を持っているなとは思っています」

―――本作で特に力を入れている部分はありますか?

善雄「コメディであることは1番大事にしたいです。あとは妖怪や遺伝子などの学説にも触れますが、難しくはしたくないので、きちんとかみ砕いた上で、多少の知識も得られるようにしたいです。
 分断が起こるのも、分からないという無知からくる部分が大いにあると思っていて。例えば『妖怪・嘗女(なめおんな)』は結婚した男の体を舐める癖があった。現代なら『そういう性癖』で終わっていたかもしれない話が、その当時では妖怪としてのレッテルを張られてしまった。それが文献に載って、250年経っても未だに残っている。ちょっと変わった事をするだけで『お前は妖怪だ』と言われてしまったわけです。
 体験したことがないもの、理解できないものに直面した時、人間の本性は出る気がしていて。怖いとか不思議だという一言で片付けてしまうのではなく、それ以外の感情や反応を模索できないだろうかという思いを込めています」

―――最後に読者にメッセージをお願いします。

結城「電波も遮断された小劇場B1のステージに集中することは、目に見えないものを感じ取ることであり、その期待に対して僕らがどんなものを提示できるのか、とても力が入っています。またステージに対して客席が2方向から設置されているという独特な造りなので、僕ら役者も芝居に没頭しやすい。そこに妖怪の話が加われば、題材としてはこれ以上、魅力的なものはないので、今からワクワクしています。
 SF青春ミステリーコメディと盛りだくさん。そこにザ・プレイボーイズ、善雄善雄とくれば、もう面白くないはずがありません。難しいことは考えずに、気軽に下北沢に遊びに来て頂ければと思います」

善雄「結城君が言ってくれたように、難しいことは一旦置いておいて、楽しんでいただけたらと思っています。妖怪が好きな方もそうでない方も、偶然このインタビューを観て下さっただけの方にも来てもらえたらすごく嬉しいです。観に来る理由なんて、全部妖怪のせいにして頂いて大丈夫ですので(笑)。ご来場を心からお待ちしております」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

プロフィール

結城洋平(ゆうき・ようへい)
1988年6月25日生まれ、東京都出身。2004年にドラマ『3年B組金八先生』高木隼人役でデビュー。2009年、Amuse-Prestage project-unit『ブラックパールが世界を動かす』で初舞台を踏む。2016年には自身が主宰する演劇企画「結城企画」を立ち上げ、第1回公演『ブックセンターきけろ』、第2回公演『くるみ割れない人間』、第3回公演『瞬間、今、おれ、わたし、やるっきゃない』を上演。NHK Eテレにて放送中の「ストレッチマン・ゴールド」のメインキャラクターを務めている他、舞台作品の主な出演作として、ゴジゲン『かえりにち』、タカハ劇団『ヒトラーを画家にする話』などがある。

善雄善雄(よしお・ぜんゆう)
1985年9月30日生まれ、富山県出身。高校入学とともに演劇を始め、2005年の桜美林大学在学中に「ザ・プレイボーイズ」を旗揚げ。“男にしかわからない(かもしれない)世界の、切なさとバカバカしさをあなたに”をテーマに、出演者は男性のみにこだわり、情けない人たちが頑張るといったコメディを発表してきたが、近年ではSF要素などを増やしつつ、自由で楽しい製作をモットーとしている。2015年に最終公演と銘打ち、一時解散。2019年に復活。主宰の善雄が全作品の作・演出を手掛け、主にプロデュース形式にて不定期ながら公演を重ねている。

公演情報

ザ・プレイボーイズ 第11回公演
『ハロー、妖怪探偵社』

日:2023年11月22日(水)~28日(火)
場:下北沢 小劇場B1
料:一般4,200円
  前半割[11/22・23]3,800円
  U-25[25歳以下]2,500円 ※要身分証明書提示
  (全席自由・整理番号付・税込)
HP:https://the-playboys.com/
問:momocan
  tel.03-6407-8987(平日11:00~18:00)

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