昨年、話題となった台湾伝統の人形劇、下北沢にて再来日! 「“布袋劇”は祭りのように賑やかで、繊細な表現です」

昨年、話題となった台湾伝統の人形劇、下北沢にて再来日! 「“布袋劇”は祭りのように賑やかで、繊細な表現です」

 台湾の伝統人形劇“布袋劇(ほていげき/ポテヒ)”が、再び日本にやってくる。昨年、糸あやつり人形 結城座とコラボし好評を得た、台北木偶劇団。今年8月、下北沢 小劇場B1にて、台湾文化省、台北駐日経済文化代表処台湾文化センターと本多劇場グループの共催公演が決定した。今回は台北木偶劇団の単独公演となるが、演目は昨年と同じ布袋劇『劈山救母(へきさんきゅうぼ)』を上演する。

于竝「台湾の人たちにとって、布袋劇は身近な、生活の一部なんです。町のどこかから音楽が聞こえてきて、近づいてみると、小さな舞台の前に人がいっぱい集まっている。子どもの頃、ドキドキしながら舞台を見つめた記憶があります」

 キュレーター・林于竝はそう振り返る。寺のお祭りでは必ずと言っていいほど、布袋劇の賑やかな音楽が聞こえてくる。古典的な言葉と音楽に彩られた布袋劇は「神秘的で、ユーモアがあり、楽しい語りと音楽」が大きな魅力だ。また、細かな動きも見どころの1つだ。

于竝「小さな人形で、指の動きも制限されるなか、人間を表現します。たとえば、男の子が女の子に心を奪われる……という表現が指先によって繊細に表される。人間すべてを表現できる芸の凄さがあります」

『劈山救母』は、子どもが母親を探し救い出す物語。普遍的で親しみやすいストーリーというだけでなく、布袋劇の様々な要素が詰まっており、初心者にもファンにも見どころたっぷりだ。

 台北木偶劇団の団長・林永志によると「本作は布袋劇の伝統的なキャラクターが登場し、孫悟空とのアクションもある。2時間の劇の中で色んなことが楽しめる作品」とのこと。さらにこの演目は、布袋劇に登場する7つのタイプのキャラクターすべてが登場するのもおすすめ。

また、音楽は“ 北管(ほっかん)”と呼ばれる、北方系の賑やかな伝統音楽である。賑やかなだけではなく、音楽の組み合わせによって繊細な感情を表現する。

永志「音楽は今回の劇場に合わせて調整し、通常は2~3人で演奏するところを1人にしたり、弦楽器を入れたりする予定です。同じキャラクターでも場面によって2種類の歌い方があるところも見どころ。また、布袋劇の主演は、1人で老若男女すべての台詞をこなします。音楽は台詞に合わせて、その場で即興的に演奏することもあります。日によって台詞と音楽が違うのは、布袋劇の面白いところですね」

 主演の呼吸に合わせ、音楽も変化していく。布袋劇は生きた演劇とも言えるのだ。

(取材・文:河野桃子)

プロフィール

林 于竝(リン・ユービン)
演劇研究者。国立台北芸術大学副教授。研究分野は、日本戦後演劇、台湾現代演劇とパフォーマンス研究。研究活動のほかに「表演芸術」などのパフォーマンス芸術専門誌にも劇評活動を展開。利賀演劇人コンクールの審査員、台新銀行文化芸術賞 パフォーマンス芸術の主任審査委員、アジア演出家フェスティバルのアドバイザリー・スタッフなどを務める。学術著作に、「日本戦後演劇における身体と空間」(2009年)、「日本戦後演劇面面観」(2010年)がある。

林 永志(リン・ヨンジー)
台北木偶劇団 団長。2010年に劇団を設立。伝統布袋劇界の派閥を超え、優秀な人形師と楽師を集めることに専念。台北木偶劇団を率いて伝統芸術の保存と研鑽に尽くす。近年は現代から伝統まで幅広く芸術家を招き、多様な方法で伝統布袋劇の魅力を観客に伝える試みをしている。北管台湾伝統戯曲音楽・歌仔戯・京劇音楽などを巧みに使い、上演活動以外でも音楽デザイン・研究出版・伝統芸術教育にも関わる。

公演情報

台北木偶劇団 布袋劇『劈山救母(へきさんきゅうぼ)』

日:2023年8月7日(月)19:00開演(18:30開場)
場:下北沢 小劇場B1
料:前売3,000円
  未就学児1,000円 ※保護者1名につき1名膝上鑑賞無料。座席が必要な場合は要チケット購入(全席自由・税込)
HP:http://www.taipei-puppet.com
問:小劇場B1(主催者直通) tel.03-3460-3711(公演当日13:00~19:00のみ)

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