2019年の初演から毎年上演を重ねている舞台『死刑島』シリーズが、今年も新キャストを迎えて再演される。原作となる漫画は配信後、単行本でも発売された人気作で、闇が深い背景を持つ男女8名が死刑囚として集められ、謎の声の人物に追い詰められていく様を描くサスペンス劇。2023年版は、脚本・演出をブラッシュアップしてお届けする。
作品を代表して、主演キリコ役・絲木建汰、フジコ役・加島ちかえ、カイジ役・斉藤秀翼、メグミ役・梨菜子に話を聞いた。
デスゲームの読めない展開の面白さ
―――作品の印象をお聞かせください。
絲木「最初は閉じ込められるデスゲームものという印象で、それを持ちながら全体を見た結果、大どんでん返しがあり、さすが剣名先生!と圧倒されました。それと同時に、あの結末であればキリコ役はとても責任重大だぞ!?とも思いました(笑)」
加島「元々ミステリーや推理もの、一筋縄ではいかないような作品がとても好きだったので、資料を見た時にすごくワクワクしました。どうなるんだろうと想像を張り巡らせる感じがとても楽しみです」
梨菜子「まずは過去の映像を拝見しました。デスゲームの読めない展開の面白さがありましたが、キャラクターはそれぞれ事情があって、とても魅力を感じました。この大きなテーマを私達にこう訴えかけるのかと、すごく刺激的でぜひたずさわりたいと思いました」
斉藤「印象は皆さんと同じで、読んでいくうちにだんだんハテナマークが増えていって、先が読めないまま最後の結末に結びつく流れが、とてもバランスの取れている良い本だなぁと思いました。
どんどんページをめくりたくなる台本で、ワンシチュエーションの中でどれだけ展開を作っていけるのか、これを舞台で演じることは興味深いという印象です」
―――『名探偵コナン』好き(※斉藤は生粋の『名探偵コナン』ファン)としては?
斉藤「たまらないですね!」
一同「(笑)」
刺さる言葉がたくさん出てくる
―――それぞれの役どころについて紹介してください。糸木さんはホスピスに勤めていて、安楽死を行った経験を持つキリコを演じます。
絲木「安楽死は今でも難しい問題ですが、キリコは罪と分かった上で安楽死を求める遺族や、(患者)本人の希望を叶えるために、センシティブで微妙なラインの仕事をしている役です。そんな彼の過去の仕事は死刑執行を行う刑務官で、重圧と戦い続けた彼が最終的に選んだ仕事はホスピス。患者と接しているうちに安楽死させてあげた方がいいのでないかという結論に達した。ほぼ真逆の考えですよね。
死に対してキリコがどういう考え方を持っているのか、死に対してのバランス感覚をどう表現していけるのかが大事だなと思っていて、かつそこが難しいと感じています。いろんなことに囚われて葛藤があり、死に対してのアプローチが難しい役だなと思っています」
―――加島さんはワケあり女性・フジコを演じます。
加島「私が演じるフジコさんは、生い立ちから強烈なんです。すごく魅力的ですが、感情の出し方のボルテージなど、どう表現しようかと考えているところです。
過去公演の映像を拝見しましたが、私は気になると何度も見てしまうタイプで。普段のお仕事はモノマネをしていて、コピーが得意ですしクセでもあるので、今回はあまり見ないようにしています。
前の方のコピーではなく、物語の登場人物の中でフジコさんをどう立たせるのか。そして名前がフジコですから色気も欲しくて、艶っぽいワケありなフジコさんにトライしていけたらと思っています」
―――梨菜子さんは希死念慮があり、病んでいる少女・メグミ役を演じます。
梨菜子「この作品では年齢が一番若い女性です。年齢的に経験がない中で過ちを犯してしまった過去があるため、軽い子に見られたり、悪い印象を持たれたりする可能性もあると思います。ただ、彼女の中にあるピアノに対する想い、友達に対する感情などは、多くの人が共感できる部分だと思うので、その部分をちゃんと演じていけたらと思っています」
―――斉藤さんが演じるカイジはギャンブル好きの男性とのことです。
斉藤「カイジは素性がわからない謎が多い人物で、彼は自分でも言っていますがクズな奴です。まさに名前通りの人物で、そのハラハラ感がこの役の魅力です。僕も彼と共通するクズっぽさを持っていると思っていて」
一同「(笑)」
斉藤「ばくち打ちではありませんよ(笑)。『いつ人生の歯車が狂ったのか?』というセリフが出てきますが、ちょっと(自分と)似ているなと。『それでも生きていかなければならない、乗り越えなければいけない』とか、刺さる言葉がたくさん出てきて、観劇される方も刺さるのではと思います。
生きていれば人生は予想外なことが起きて、描いてきた物とは違ったり、それを受け入れないことには進まない。受け入れることで新たな物語がはじまるかもしれないですよね。そういう意味では共感できる要素も持っている役なのかな」
みんながパスをつなげて、つないでゴールを決める作品に
―――今回はそれぞれキャラクターを深掘りしていくシーンも描かれるそうです。まだお稽古前ですが、いま気になっているところはございますか?
絲木「初めから最後の結末にいく芝居の積み重ねが挑戦であり、ひとつの見どころでしょうか。
この台本はとても小説的です。それぞれ自分の生い立ちを語るシーンがありますが、ドラマであれば回想シーンでわかりやすく映像が作られます。ただ舞台では自分の過去をひとり語りするんです。それはけっこう難しい表現で、バックに再現映像が流れるわけではなく、自分の生きざまをお客様に向かって語る。どれだけリアルに飽きさせずに見せていけるかも挑戦です。
会話劇である事を念頭に置いた上で、自分に浸って言わない、セリフを唄わないなど、伝え方は色々あると思いますが、稽古でみんなと話し合いながらフィックスして、最後の盛り上がりにもっていけたらと思っています。みんながパスをつなげて、つないでゴールを決めるような、そこを目指したいです」
加島「とても難しい役です。限られた空間でフジコさんの心情がどうなって喋っているのだろうと考えています。まだこれから稽古なのでどうなるかわかりませんが、キリコさんとそれを取り巻く登場人物たちとの空気感をどう創っていくのかですね。結末を知っているだけに気になっています」
梨菜子「2021年版を拝見して、それから今回はキャストも台本も少し変わると聞いて、このメンバーで描かれるこの作品全体がまず気になります。
メグミはキリコに対してどんな爪痕を残していったのか、お客様にメグミの想いを伝えたいです。彼女の何がキリコの心をとらえているのか、そこをもっと探っていきたいですね。
あとは最後の盛り上がり。私はその部分がとても刺さったので、小堀さんの演出が個人的に気になって期待しています。私達の2023年版がとても良かったと思ってもらえるように頑張ります」
斉藤「ほぼ初共演者のみなさんとの作品作りになります。カイジとキリコがなぜこんなことになってしまったのか、そこをしっかり描いていけたら。
僕はキリコと似た方に会ったことがあり、とても怖かった記憶があります。キリコというキャラクターの存在がこの作品の見どころでもあるので、想像ではわからない緊張感も伝えることができたら、より面白くなるのかなと思っています」
いっそ稽古場を居酒屋に!?
―――コロナ禍を越えての稽古になりますが、少しずつ接し方も戻って来ました。初めましての稽古場では、どうやってお互いの距離を縮めますか?
加島「実際は違うのですが、私の第一印象が喋りづらい人と思われることが多くて。お仕事で上戸彩さんのモノマネを研究すると、人当たりがよくて、それこそ彼女は距離の縮め方の神。上戸さんのマネをすると、老若男女問わずみんなに好きになってもらえる感触がありました。
もちろん会話をする時に名前やあだ名を呼ぶこと、あとは相手が話しやすいパスを投げるとかもありますが、上戸さんからいっぱい学びました」
絲木「そうだね、相手の名前を呼ぶことって大事ですよね。
趣味のことを話すには稽古場では難しくて。まだ油断はできない状況ですが、ご飯を食べにいくことができるようにはなったので、距離を縮められる飲みにケーションでスタートしたいですね。やはり一緒に飲むと予想外なことがわかったり新しい発見があります。今回は少しだけでもコミュニケーションをとれるタイミングがあるといいですね」
梨菜子「みなさんと早く仲良くなりたいです。私は話しかけたいし、話しかけられたい、誘ってもらいたい、いつでもオープンです。実は20歳になったばかりで、未成年は飲み会に誘ってもらえなくて、もう違うので誘われたら嬉しいです!」
斉藤「これ発表してしまったら、稽古場であれねって思われますよね(笑)」
絲木「あははは確かに!」
斉藤「僕も飲みに行くことが好きです。ある程度距離が縮まらないと言えなかったり、言葉を選んだりすることが多いですよね。
稽古場だとまず仲良くなるのは喫煙所にいくメンバーなんですよ。ここから距離が縮まるので、たまに吸わないのにその場にいたいから来る方もいます。みんな喫煙者に集まれば(笑)。いっそ稽古場を居酒屋にすればいいのではと」
一同「(爆笑)」
加島「ぜんぜん稽古にならなそう(笑)」
―――では最後に作品を代表して糸木さんからメッセージをお願いします。
絲木「過去に観劇された方もいらっしゃるかもしれませんが、今回は新しいキャストが集まりました。
濃厚な人間味を描いている作品です。会話の中にある各キャラクターの心の機微みたいなものを感じ取っていただけたらと思っています。最後のどんでん返しには、どこからそうなっていたのだろうと、もう一度観て確認していただければ嬉しいです」
(取材・文&撮影:谷中理音)
プロフィール
絲木建汰(いとぎ・けんた)
1988年3月3日生まれ、山梨県出身。ドラマや舞台で活動中。元PureBoysメンバー。代表作に、ドラマ『ハンチョウ~警視庁安積班~』シリーズ6、『仮面ライダーフォーゼ』、映画『ごくせん THE MOVIE』、『HiGH&LOW2』、舞台『伍代夏子 藤あや子 新春特別公演』、ミュージカル『風雲新撰組~熱誠~』など。
加島ちかえ(かしま・ちかえ)
1989年2月13日生まれ、兵庫県出身。上戸彩のモノマネで注目され、ものまねユニット・新しい学校のマーネーズを結成。主な出演に、TBS「中居正広の金曜日のスマたちへ」、「爆報! THE フライデー」、CX「志村けんのだいじょうぶだぁ」、NHK「有田Pおもてなす」、志村けん一座 第13回公演 志村魂『一姫二太郎三かぼちゃ』、第16回なぎプロプロデュース『天切り松 闇がたり ~衣紋坂から~』などがある。
斉藤秀翼(さいとう・しゅうすけ)
1993年3月1日生まれ、熊本県出身。アーティストのオーディションを経て芸能界入り、スーパー戦隊シリーズ『獣電戦隊キョウリュウジャー』でブレイク。ドラマや映画、舞台のほかアーティストとしても活躍中。近作に、劇場版『仮面ライダージオウ Over Quartzer』、映画『新卒ポモドーロ』、舞台『穏やか貴族の休暇のすすめ。~新迷宮と貴婦人の結婚~』、Flying Trip vol.18『ギミトリックバード』などがある。
梨菜子(りなこ)
2002年12月13日生まれ、東京都出身。舞台やモデル、ラジオパーソナリティなど幅広く活動中。近作に、舞台『スパイダー』、『ザ・シェフ2 ~思い出を売る店~』、自身が脚本・プロデュースを手掛けた『目覚まし時計の歌』などがある。FMラジオフチューズにて、隔週金曜日19:30より放送中の「Feeling Sketch」でパーソナリティを務める。
公演情報
劇団虹色くれよん 舞台『死刑島』2023
日:2023年7月26日(水)~30日(日)
場:シアターグリーン BOX in BOX THEATER
料:5,000円
※他、応援チケットあり。詳細は団体HPにて
(全席指定・税込)
HP:https://twitter.com/nijiiro_info
問:劇団虹色くれよん
mail:ticket.dvd.kp@gmail.com