寺島優(原作)× 藤原カムイ(作画)の人気コミック 脚本・演出、アクション、そして音楽まで、全て一新したリニューアルヴァージョン

 1980年代後半から10年間連載されたコミック『雷火』。藤原カムイが描く躍動感に溢れる作画は多くの漫画ファンを虜にし、現在に至るまでその人気を誇るが、その人気作が劇団骸骨ストリッパーによって6年前に舞台化された。劇団旗揚げのメンバーで殺陣師でもある潮見勇輝はそのきっかけを「知人が経営するバーに藤原カムイ先生がよく来ていて、舞台化したいという話を聞いていました。それを主宰のかみざと(もりひと)に話したら、今度は彼が懇意にしていたNON STYLEの石田明さんが脚本を書いてくださることになって。全てはミラクルでした」と語ってくれた。
 そこから6年経ったこの春。劇場もグレードアップしての上演が決定した。潮見に加えて、主人公の少年・ライカ役の阿部快征、その相棒であるウツキ役の嶋崎裕道、オタジ役の与那嶺圭太に話を聞いた。

―――6年振りの『雷火』の上演を決めたきっかけを教えてください。

潮見「昨年春くらいの話です。僕達の劇団は今年8年目にあたりますが、“八”は末広がりで縁起がいいから、いっそ大きなところでやってみないかという話が出ました。そこで新作か、1番人気が高かった作品かと考え、この作品を選びました」

―――主人公のライカを含めた3人組は、いずれも客演メンバーですが、彼らを選んだ理由は何でしょう。

潮見「この作品はライカ達の少年時代から描きますから、フレッシュさが必要だと思いました。彼らは若くて上手いだけでなく、原作のキャラと雰囲気がマッチしていました」

―――ではライカ役の阿部さんから、役柄の印象などをお話しください。

阿部「ライカは村育ちの凄い悪ガキで、外の世界を知りたがっている少年ですね。好奇心が高まっているある日、邪馬台国の次期女王・壱与と出会って“恋”という感情を知るわけです。そして彼女を護りたいという一心で村を飛び出していくという勇敢さを持っています。いろんなことが起こるんですが、1番近くに居る2人の仲閒は特に大切にしていますね。
 コミック原作ですが、僕がこれまで関わってきた2.5次元作品とは違うところも沢山あります。色々な装置や効果を利用するのではなく、自分の身体を使って表現していく感じが凄くあります。初体験なので凄く面白いです」

嶋崎「僕は3人組のうちの1人、ウツキです。ちょっとクールで兄貴的なポジションですね。それでいてライカにも憧れを持っていて一緒に成長していくんです。
 稽古をしている中でどんどんウツキが好きになる自分がいますね。後半のウツキは目が見えなくなるんですが、そうなってしまったウツキが見せる殺陣や台詞が凄くかっこいいんです。人生で1度言ってみたかった台詞もありました。
 僕はつかこうへい作品が凄く好きで、それをきっかけにストレートプレイがやりたくてこの世界に入ったんですが、骸骨ストリッパーはその頃を想い出させてくれるような部分があります。演出のかみざとさんは照明プラン等が全部頭に入っていて凄いです。そんな演出家のもとで作品に関われるのがとても嬉しいです」

与那嶺「僕は3人組のもう1人、オタジ役です。3人の中では末っ子キャラですが、実年齢ではふたりより上になっています(笑)。しかも現実には5人兄弟の長男なので、役のキャラクターとはだいぶ違うので、全部が挑戦ですね。
 稽古を初めて1週間で通し稽古になったので、早すぎてついていくのが大変です。体力的にもね(笑)」

―――過去の動画も拝見しましたが、潮見さんによる殺陣は凄くスピードがある気がするのですが。

嶋崎「スピードだけでなく、乱戦なんかも凄い人数でするので見応えはたっぷりですよ」

阿部「それを稽古でつけていくスピードも速いんです。あっという間に進んじゃうので、瞬きできない!と思ってずっとガン見していました(笑)。ついていくのも必死ですが、殺陣師の潮見さんが僕達をのせるのが上手いので、入っていきやすいです」

与那嶺「僕もアクション経験が少ないので、ともかく大変です。しかも僕の役は途中から片手なんですよ(笑)」

―――劇団員の皆さんはそんなスピードに慣れているんですか?

潮見「劇団員は僕の考えていることをよくわかって動いてくれますね。そこは凄く助かっています。」

嶋崎「阿吽の呼吸ですよ、皆さん」

阿部「それに劇団員さんは声がよく通るんです。これが居酒屋にいたらそりゃうるさいだろうと思いました(笑)。今回劇場が大きくなるので、声の響きは大切になると思います。僕も劇団員の皆さんに負けないように頑張っているところです」

―――さて、今回劇場が一気にグレードアップしました。

潮見「演出のかみざとは空間を制圧できるタイプでどんな劇場でも対応できるんですが、骸骨ストリッパーではまだ大きな劇場でやれてなかった。苦労はありますが劇団としても大きくしていかないと終わりが見えてしまうので、思い切って挑戦しました。キャストも素晴らしいメンバーが揃ったし、脚本も新しくなりましたし、藤原、寺島の両先生も後押しをしてくださっています」

―――音楽担当の403は弟さんが参加するヘヴィメタルバンドですね。

潮見「そうです。2人とも子供の頃からピアノを習っていてクラシックが好きだったんですが、高校の頃に弟にヘビメタを聴かせたらそれにハマって曲を作るようになり、当時のFlash動画でブレイクしました」

―――ストリングスなども採り入れたロックということで、クラシックの影響がありそうですね。

潮見「北欧系の影響をかなり受けていますね。今回も多国籍な曲が沢山ありますが、今回は曲も全部一新なんです」

―――え? さっき石田さんも脚本に相当手を入れたと聞きましたから……これ、もはや初演じゃないですか(笑)?

潮見「今回は過去に1番人気が高かった作品の新作です(笑)。前回とは視点を変えて、少年ライカの成長譚を描いてます。なのでタイトルも『RAIKA』になりました」

―――皆さんの意気込みを聞かせてください。

与那嶺「今までストレートプレイが多かったんですが、今回はエンタメ作品でお調子者のオタジを演じます。どこまで弾けて格好いいキャラクターに仕上がるかを楽しみにしていてください」

嶋崎「今まで僕が出会ってこなかった役柄ですが、ファンの方も初めて観る方にも認めてこらえるウツキに仕上げたいです。そしてこの3人がどう成長するか。どう男になるかをご覧頂いて、皆さんの心に残ればと思います」

阿部「彼らが勇気をもって前に進もうとする姿にパワーがもらえると思います。赤ちゃんからお年寄りまで年齢を問わず誰でも楽しめる作品になっています。スペース・ゼロの規模での主演は初めてですので、共演する皆さんのお力や、観客の皆さんのお力も拝借して務めたいと思います」

潮見「稽古の度に化学反応が生まれる素晴らしいキャストが集まった座組です。それが楽しくて仕方がありません。『RAIKA』は色々な愛が凄く描かれている作品なので、彼らの成長を通してそれを感じて頂ければと思います」

―――――藤原カムイさんによるチラシのビジュアルも、ファンにはたまらない逸品ですね。ありがとうございました。

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

阿部快征(あべ・かいせい)
宮城県出身。2013年に第26回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストにてフォトジェニック賞を受賞。2015年に舞台『大正浪漫探偵譚 -東堂探偵事務所-』で俳優デビューを果たす。舞台作品を中心に、舞台『黒子のバスケ』シリーズ、2.5次元ダンスライブ『SQ(スケア)』ステージシリーズ、『アニドルカラーズ!キュアステージ』シリーズ、『おとめ妖怪ざくろ』などのメディアミックス作品に多数出演。2019年には、劇団ToyLateLie第10回本公演『君は嘘と知らない』にて初主演。

嶋崎裕道 (しまざき・ひろみち)
神奈川県出身。ストレートプレイからメディアミックス作品など幅広いジャンルの作品で活動中。つかこうへい作品も好きで、これまでに『蒲田行進曲』、『飛龍伝』、『幕末純情伝』などに出演。7月にはジュエルステージ『オンエア!』~Unit Story side MAISY~への出演も予定。

与那嶺圭太(よなみね・けいた)
沖縄県出身。ストリートパフォーマンスユニット・日本男児のメンバーKEITAとしてライブやテレビ出演などで活動し、ユニットが出演したミュージカル『白いライオン』では主演を務めた。2009年に事務所を移籍して以降、舞台作品を中心に活動を展開。ジャンルを問わず、『BURAI Ⅱ』、舞台『地獄少女』、『ミュージカル李香蘭』などの作品に出演。

潮見勇輝(しおみ・ゆうき)
和歌山県出身。中学時代より武道を始め、高校卒業と同時にハリウッドにあるショー・コスギ塾ハリウッド校に入塾。ショー・コスギにアクションを師事する2年半の修行を終えて帰国後、プレイヤーとして映像や舞台で活躍し、さらに殺陣師・アクションコーディネーターとしても作品に関わる。芝居、スタント、アクションコーディネートを1つの作品で行う事が出来る役者。演出家のかみざともりひとと共に劇団骸骨ストリッパーを旗揚げ、現在に至る。

公演情報

劇団骸骨ストリッパー本公演
『RAIKA』

日:2023年5月25日(木)~28日(日)
場:こくみん共済coopホール/スペース・ゼロ
料:Pチケット[2~3列目・特典付・5/15までの
  販売]8,900円
  一般6,600円
  U-22[22歳以下]4,000円
  (全席指定・税込)
HP:http://gaisuto.com
問:RealHeaven mail:ticket@realheaven.jp

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