オージー・フットボールの名門クラブで対立する6人の男たち 名誉、栄光、そして金……。戦いはグラウンドの中だけではない。

 オーストラリアで国民的な人気を誇るオージー・フットボールは、細かいものも含めると国内に2000を越えるチームがあり、その頂点である18チームが参加するリーグ戦も行われている競技だ。その中で歴史と伝統を継承する名門チームを舞台にしたデヴィッド・ウィリアムソンによる『THE CLUB』に和田憲明が挑む。
 オーストラリア演劇界を代表する劇作家による本作だが、和田にとっては昨年の『THE RETURN』に続いてオーストラリアの戯曲を手がけることになる。和田をはじめ、数多くのドラマや映画に参加してきたベテラン中西良太。昨年の『THE RETURN』にも出演した石田佳央。最近頭角を現し、和田作品には初参加の久保田康祐も含めて話を聞く。

―――昨年の前作『THE RETURN』に続いてオーストラリアの劇作家による作品になります。何か大きな理由があるんでしょうか。

和田「たまたまかなぁ。いい脚本はいつも探しているし、僕は役者がいい芝居をしてくれることに1番興味があるから。
 昨年、佐和田先生が訳された作品を手がけたのをきっかけに他の翻訳も読んでいました。その中に丁度興味があったスポーツを題材にした脚本があって、読んでみると面白かったのと、せっかくご縁もできたので手がけることにしました。オーストラリアへの興味も少し強くなったこともあったのでしょう。
 それに僕は人と関わるのが下手なのですが、その点、佐和田先生とはとても理解してくださり、話もできる方だった。それも強いきっかけかも知れません」

―――6人芝居で、世代も幅広い役者さんが集まっていますね。

和田「いつもいいますが、僕は芝居への考え方がちょっと違うのか、役者さんと上手くいかないことが多いんです。さらにキャリアを重ねている方は、それぞれ芝居の方法論を持っているので、こちらからのリクエストはしづらいわけです。だから余計に上手くいかないのだけど、中西さんなんかは上手くやれた方だと思っているんです。中西さんの芝居はいいなと感じますし、石田君もそうです。だから懲りてなければまた一緒にやって欲しいと思える貴重なおふたりです。

―――中西さんと石田さんは『三億円事件』で共演されていますし、石田さんは昨年の『THE RETURN』に続いての出演です。

中西「そう思ってもらえると有り難いですね。まぁ色々芝居を観ていて、和田さんの作品はいい作品が多いので、やれるチャンスがあるならやりたいと思っています。作品を少しでもいいものを作るために稽古をするわけで、その過程で楽しくないとかはあんまり関係ないです。仕上がりをよくするにはしんどくても、充実していることが大切だと思います」

石田「役者なら仕上がりがいいものを求めるでしょう。確かに和田さんの稽古場は相当しんどいんです。でもそれが自分にとって大切な過程だと思っているので、毎回有り難いと思っています。
 ただ前回は稽古初日に身内の不幸があって想像を超えるきつさがあった。そんな時に和田さんは声をかけてくださいました。周りからはすごく怖い人だとかいわれていますが、人間味のある人ですよ。和田さんの作品は今回で5回目になるので、魅力が見えてきた気がします。また今回は(中西)良太さんともバチバチにやり合えそうですから楽しみです」

―――久保田さんはこの作品が2作目の舞台だそうですが。ベテランに囲まれてどんな気持ちでしょう。

久保田「背筋が伸びる思いで凄く緊張しています。これまでずっと映像の世界で生きてきたので、自分の父親世代の役者さんと共演する機会が少なかったです。
 今回は皆さんの年齢やキャリアにとてもプレッシャーを感じると同時に楽しみも生まれています。『やってやるぞ!』という気持ちや爆発力が大切だと思っていて、最年少だからこそなにか生み出すことができるのではと、熱意が高まっています」

―――初舞台の『A3!』は2.5次元作品で、この『THE CLUB』とは正反対ですね。

久保田「もともと舞台が好きでジャンル関係なく幅広く観ていました。ストレートプレイには憧れていました」

―――若手としての久保田さんへの期待はありますか。

和田「若手でもベテランでも、とにかくいい芝居をして欲しい。ただ久保田君は経験も浅いし、しっかりと理解してくれないとマズいぞ、という気持ちはあります。そこにどのくらい取り組んでくれるかですね。周囲に若い役者を探していることを相談して紹介された役者と片っ端から面談をしました。彼の場合は人柄で決めました」

久保田「面談をした上で絶対落ちたと思っていました。オーディションや面談って作品に出たいから受けるわけで、だからこそ印象を残していこうと立ち回ってしまうことも多いんです。
 でも和田さんとの面談は、ご自身の芝居や演出について本気で伝えてくださるので、僕も自分の気持ちを100%伝えないと思って話をしました。だからご一緒できると連絡を頂いたときは嬉しかったです。」

―――ところでこの作品はオージー・フットボールのチームが舞台ですね。日本人にとってオージー・フットボールは馴染みが薄いのですが。

和田「サッカーやラグビーとは全然違う別の競技です。オーストラリアではリーグ戦も人気があって、もしかしたらラグビー以上かも知れません。ボールもラグビーボールに近いけど、やっぱり違います。説明無しに観ていたらラグビーの話だと思われるかも知れません」

―――では最後に皆さんの意気込みを伺います。

久保田「僕にとって初めてのストレートプレイで、凄く意味のある作品になると思うし、だからこそ気合いが入っています。満タンですね。生の芝居でお客さんとの距離が近いのも初めてで、それが自分にどう影響するかが楽しみです。舞台の空気感や匂いを観客の皆さんと一緒に感じたいです」

石田「台本を読んだだけで大変な会話劇だと思いました。人間同士のやり合いに客席から見入ってしまうような、熱い芝居を見せたいです」

中西「スポーツマンの話ですが、それらしい人が出てこないんです。悪人ではないけどいい人でもない。人が持っている欲や利己的な部分とかが露わになって絡み合いながら腹を探り合う会話劇です。緊迫感のようなものを醸し出せれば面白いと思います。3世代に渡る6人の男たちによる男臭い芝居を観てもらいたいです」

和田「自分が観ていて本当に凄いなあ、と思える芝居を作りたいと思って、ずっとやっているんです。自分の芝居については1番厳しい客で1番のファンでもある訳です。役者たちが決め事がないかのようにやれているというのは、そのものが緊迫感だし、それが大変なこともわかるので、それこそが熱量でしょう。そういった芝居を作りたい、それだけしか考えていません。そうすれば脚本も伝わるだろうし。頑張ります」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

中西良太(なかにし・りょうた)
兵庫県出身。1973年にミスタースリムカンパニーに参加。以降、舞台のほか数多くのテレビドラマ・映画に出演する。和田憲明が手がけた作品には2002年の『タワーリング・ライフ』で初めて出演し、その後『三億円事件』にも出演している。

石田佳央(いしだ・よしひさ)
千葉県出身。モデルとしての活動後、北区つかこうへい劇団の研究生となり、その後蜷川幸雄の下で演劇修行に励む。最近の主な舞台作品に、『東京原子核クラブ』、『首切り王子と愚かな女』など。これまでにウォーキング・スタッフプロデュース作品には『三億円事件』を始め4作品に出演。

久保田康祐(くぼた・こうすけ)
千葉県出身。映像作品を中心に活躍し、2022年にはMANKAI STAGE『A3!』にて初舞台を踏み、巡業公演も体験する。それに続いて今回が2回目の舞台出演となる。

和田憲明(わだ・けんめい)
大阪府出身。1984年に劇団ウォーキング・スタッフを結成し劇作と演出を手がける。並行してTHEATER/TOPSのスタッフとして数多くの劇団を同劇場に招致する。1999年からはプロデュース公演に移行し、同年に発表した『SOLID』で第7回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞。その後も演劇界で注目される蓬莱竜太、田村孝裕、野木萌葱、牧田明宏、池内風などの作品や海外戯曲の演出の舞台を手がける。
 またリーディング公演などの新たな試みにも積極的に挑戦。2015年には、ベストセラー『嫌われる勇気』を戯曲化・演出し、好評を博した。読売演劇大賞では『SOLID』以降も、2014年『304』(蓬莱竜太作)で優秀演出家賞。2016年『三億円事件』(野木萌葱作)で優秀作品賞。2017年『怪人21面相』(野木萌葱作)で優秀作品賞、優秀演出家賞を両部門においてダブル受賞した。

公演情報

ウォーキング・スタッフ プロデュース
『THE CLUB』

日:2023年4月13日(木)~20日(木)
場:下北沢 シアター711
料:一般4,500円
  U-25[25歳以下]2,500円 ※要身分証明書提示/団体のみ取扱
  (全席指定・税込)
HP:https://walking-staff.com
問:ウォーキングスタッフ
  mail:ticket@walking-staff.com

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