自分がやりたいと思った芝居を、一緒にやりたい俳優・脚本・演出とともに T-worksの5回目は、女優たちによる姉妹の三人芝居

 関西を拠点に活躍する女優・丹下真寿美。その「魅力を全国に広めるべく立ち上げた」という演劇ユニットT-works。これまで4回の公演で披露した3作品(1作品は再演)は脚本・演出・俳優の全てにおいてハイレベルで幅の広い面々を揃えた作品だったが、続く5回目は、丹下を含めた3人の女優による姉妹の物語をザ・プラン9で活躍する久馬歩が書き、演出家としてだけでなくデザイナーとしても活躍するチャーハン・ラモーンが演出を手がけるという、それだけでもワクワクする顔ぶれだ。一体どんな作品になるのか、丹下と脚本の久馬に話を聞いた。

―――T-worksさんのここまでを振り返るとシリアスありコメディありと非常に振り幅が広いですね。

丹下「いつもはプロデューサーに提案してもらって、私がまだご一緒したことがない方々とお芝居を創ってきましたが、今回は私の方からこの方とやりたいと思いまして、久馬さんに脚本をお願いしました」

―――おふたりは知り合われて長いんですか?

久馬「知り合って何年になりますかねー。知らん間に知り合って(笑)」

丹下「私が出演していた石原正一ショーに日替わりゲストで出られた時が最初だったと思います。その時はお話もできませんでした。
 久馬さんが書く作品にある日常のちょっとした笑いが良くて、余り堅い作品にはしたくなかったし、ふわっとした作品がいいなと、今回女性3人の舞台にしようと思った時にきっと合うと思いました」

―――なぜ女性だけの三人芝居とされたのでしょう。

丹下「一人芝居、二人芝居、三人芝居とやってきましたけれど、女だけの3人は無いんです。私自身もそうなんですけど、カフェとかで話してるといろんな話があちこちいく、あの感じをお芝居にしたらどうだろうと思って」

―――オファーを受けた久馬さんはどう思われました?

久馬「俺でいいんかな?と(笑)。なにしろここまで書いてきた方が凄い面々ですからね。僕も女三人芝居はやったことがないので、姉妹というのはどんな話をするのか想像しながら書くのが楽しかったです。僕自身の兄弟も男ばかりですし、普段(ザ・プラン9)も男性だけですから。
 最近、後輩や知り合いの結婚式に呼ばれると、新婦の父親を見ていて切なくなるんです(笑)。普通は最後に新郎のお父さんが挨拶しますが、僕は新婦の方を聞きたいなあと思います。昔から花嫁と父親の映画とかも好きでしたし。僕は独身だから作品でそういった気持ちも味わいたいなと思って」

―――共演者はどうやって決まりましたか。

丹下「是常さんは私と同じく関西拠点の役者さんで何度も共演しています。原田さんは出身こそ関西ですが拠点は東京の女優さんで、プロデューサーからの推薦があって決めました。フライヤーの撮影の時に初めてお会いしましたが、コミュニケーション能力が凄くて、初対面なのにそんな気がしない、肌感覚が合う方だと思いました。
 人数も少ないし稽古期間も限られているので、信頼できるメンバーで密度を高くしてお送りします」

―――チャーハン・ラモーンさんの演出も丹下さんからの提案ですか?

丹下「それも私です。久馬さんに書いてもらうなら演出は誰にしようと思った時、昔、共通の友人の結婚式の2次会でチャーハンさんにお会いして、「いつか俺を使えよー」と笑いながら話してくださったのを思いだして(笑)。今もイラストやデザインなどで幅広く活躍されていますが、丁寧な演出をされるのではと思い、この2人が揃ったら最上級に幸せな作品ができるだろうなと思ったんです」

―――久馬さんはチャーハンさんと組まれたことはありますか。

久馬「ガッツリ組むのは初めてです。でも好き勝手書いたので、これをどうやって演出するんだろう?と思います(笑)。自分で演出する時はある程度わかって書きますからいいですが、今回は三人芝居なのにこんなこと書いちゃったなぁ、と(笑)。書き直しの注文が来るかも知れません」

―――そもそもT-worksは「女優・丹下真寿美の魅力を全国に広めるべく立ち上げたユニット」とのことですが、ご自身の知名度が上がった実感はありますか?

丹下「SNSなどでも、『丹下真寿美は知らないけどT-worksは聞いたことがある』と言われるようになった気がします。私自身は大きく変わったかというと、まだ途上って感じですね。ここまで演劇の中でも文化が違う方々と創作をしてきて、脚本も役者の皆さんもスタイルが全く違うことが凄く刺激になりました。T-worksは自分が主役になるユニットではなく、共演者の皆さんに自分が追いつき、しがみついて、同じレベルで舞台の上に立てるように頑張っていく、そんなユニットだと思います」

―――でもNHK連続テレビ小説『おちょやん』でも重要な役を任されていましたが、拠点を東京に移すことは考えてないんですか。

丹下「関西が好きなんですね。お芝居をつくる時も自分事のように心配するような、そんな空気があって。『おちょやん』の時も、純粋に自分がもらった役をどうしようかなと考える過程が面⽩かったです。関⻄にいても呼んでもらえるような俳優になりたいですね」

―――では、改めて作品のアピールを(笑)お願いします。

久馬「笑えるようには書きましたし……多分面白いです(笑)。いままで余り書いたことがない作品ですが、3人の会話を通して笑えたりシリアスに感じたり、前半と後半が全く違う感じになればいいかなと思っています」

丹下「久々の新作です。しかも今回は4都市で上演します。節目となる5回目の公演なので、お客さんにこちらから会いに行きたいと思いました。とにかく観てもらって、皆さんに幸せになってもらえたら良いなと思っています」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

丹下真寿美(たんげ・ますみ)

大阪府出身。関西を中心に活動する、変幻自在のオールラウンド女優。2006年、末満健一主宰のピースピットのワークショップ公演『HYT1(ハーフイヤーシアター)』に参加。これまで90本以上の舞台・映画に出演。NHK『逆転人生』、NHK 連続テレビ小説『おちょやん』など映像分野でも活躍。2017年にプロデュースユニット「T-works」を結成し、年齢・拠点を問わず、ハイレベルな脚本家、演出家、俳優を集い、高水準の舞台を製作している。

久馬 歩(きゅうま・あゆむ)

大阪府出身。芸人・脚本家。NSC大阪校10期生。ザ・プラン9(2001年4月結成)のリーダーであり、頭脳。メンバーで行うネタも書いているが、様々な舞台や、ドラマ、映画の脚本も手掛けており、フジテレビ・ピカルの定理「テブラーシカ」の生みの親としても知られている。自ら責任編集を務める大人気イベント「月刊コント」は2019年7月に10周年を迎えた。

公演情報

T-works #5 『三文姉妹』

日:2023年1月24日(火)~29日(日)
  ※他、愛知・大阪・福岡公演あり
場:下北沢 「劇」小劇場
料:一般 S席4,800円 A席3,800円
  U18割[18歳以下] A席2,500円
   ※要身分証明書提示(全席指定・税込)
HP:https://t-works-works.com
問:T-works mail:contact@t-works-works.com

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