現代社会を“強く”生きる、幼き少年たちの物語 TAAC最新作『GOOD BOYS』福崎那由他&佐久本宝が双子役に挑戦

現代社会を“強く”生きる、幼き少年たちの物語 TAAC最新作『GOOD BOYS』福崎那由他&佐久本宝が双子役に挑戦

 舞台『GOOD BOYS』は、主宰のタカイアキフミが公演ごとに“同志”を集め創造・共創する「TAAC」の最新作。11月に行われた関西演劇祭2022に参加の関西チームと、2023年1月に新宿シアタートップスで公演を行う東京チームで、同じタイトル・テーマだが、キャストの人数、上演時間、したがって内容も異なるという特殊な公演だ。
 “日本社会が抱える問題を背景に、人々の「営み」を描き、現実にありながらも、普段は感じることのない微かな希望や愛を掘り起こす”という「TAAC」の理念をもとに、アゴタ・クリストフの『悪童日記』をモチーフとして描かれる本作。母に捨て置かれ、自分たちの力で生きていくことを余儀なくされる双子を演じるのは、若手俳優の福崎那由他と佐久本宝。主宰のタカイとともに、2人の意気込みを聞かせてもらった。

―――モチーフはアゴタ・クリストフの『悪童日記』とのことですが、改めて企画意図を教えてください。

タカイ「『悪童日記』という小説の名前は以前から知っていたのですが、コロナ禍初期の2020年の春先、初めてのステイホーム期間中に改めて読んだ作品でした。TAACの2020年度の公演が2つ中止となり、僕自身脱力感を覚えつつも何もせずにはいられず色々な作品に触れていた時期で、その中で出会った作品の1つです。そこで、『悪童日記』に登場する双子や祖母の持つ生命力というのは、今、僕らにとって必要なものなんじゃないかと感じたんです。『どんな手段を使ってでも生き抜く』、『そのために自分たちはいかに強くなれるのか』……自己中心的な考え方ではあるのですが、その潔さが非常に鮮烈で、羨ましくも思えてしまって。そんなわけで、この『悪童日記』に魅了されて、この作品をモチーフにした演劇を創りたいと思い至りました。
 長く続くコロナ禍で生活様式や常識、価値観も変わった中、僕らは今後どのように生きるべきかを考えるフェーズに入っていると思っています。そういったことを訴えかける意味で、悪童という言葉の意味を反転させ対義語となる『GOOD BOYS』というタイトルにしています」

―――キャスティングはタカイさんが決めたのでしょうか。

タカイ「そうです。今回10歳くらいの少年を演じてもらうということで“少年性”というところと、少年といえども尋常じゃない決断を下していく役ではあるので、ある種の“狂気”というか、一線を越えるお芝居が出来る方を探している中で、福崎さんと佐久本さんに出会うことが出来ました」

―――主演のお二人は、本企画・作品について初めて触れた時の印象はいかがでしたか?

佐久本「タカイさんからモチーフの『悪童日記』を1度読んでくれと言われて、まずはそちらに触れました。思春期の子供たちが、痛いことも痛いと言わずに、『痛くない!』と言い張って立ち向かっていく姿に……僕自身は大きな決断をちゃんとしたことがあっただろうか、何かに立ち向かったことがあっただろうか、流されるままに生きてきたんじゃないかと己を省みてしまいました。稽古をしていく中で、どのように出来上がっていくかは未知数ですが、僕も逃げずに立ち向かいたいと、そう思わされました。きっとこの作品をやり通した時に、僕の中でも何かが変わるのではないかと、それが楽しみでもあります」

福崎「僕もまずは『悪童日記』を読ませていただいて、双子についての描かれ方が個人個人ではなくて常に2人セットなんだなというのが第一印象でした。苦しい時も嬉しい時も常に一緒にいて、2人で力を合わせて度重なる試練を乗り越えていく、という物語の展開になっているので、これが舞台になったときにどういう描かれ方をするのかすごく楽しみにしています。強く社会を生き抜いている彼らに比べたら僕はまだまだ未熟な人間ですが、きっと稽古の中で越えなければならない壁に沢山ぶつかると思うので、彼らのように強く立ち向かっていけたらと思っています」

―――お互いの印象はいかがですか?

佐久本「那由他とはワークショップで初めて会ったんですが、それ以前に他の作品で観ていて存在は知っていたので、こんな美男子と双子だなんて大丈夫かなって……ビジュアルを撮っていただきながらドキドキしました」

福崎「いやいやいや!! そんなことは……」

―――出会ったワークショップというのはこの作品に向けてのものだったんでしょうか?

佐久本「そうです! 僕は正直人見知りなので、いきなり稽古ではなくて、そういった機会をいただけてありがたかったなとは思います。お芝居は勿論なんですが、アイスブレイクとして色々なゲームにも取り組んで、だんだんと那由他の感性や伝え方のクセが分かってきました」

福崎「僕も佐久本くんと初めて会った時は、全然僕とは違うタイプの人だなと感じました。僕らが双子って不思議だなと思ってたんですが、ワークショップの中で、感覚や感性を共有するうちに、お互いを理解というまでにはまだ至っていないものの、お互いの感性に寄り添うというか、一緒に芝居をする感覚を共有できたので、本格的な稽古が始まったらもっともっと双子らしくなってくるんじゃないかと、より楽しみになりました」

佐久本「双子として意思疎通しながら、仲良くやっていきたいと思います!」

―――東京公演とは違うキャストにて、11月に関西演劇祭でも『GOOD BOYS』が上演されると聞きました。タカイさんとしては、どういった違いを出していきたいとお考えですか?

タカイ「物理的なところから言えば、キャストの人数も上演時間も異なるので、同じタイトル・テーマではありますがだいぶ異なる印象になるのではないかと思っています。関西演劇祭の方は、尺も短いため、物語の中での出来事、大きなうねりを中心にかなりソリッドな感じに仕立ててあります。東京公演でもベースは共通になりますが、キャストが8名いて上演時間も2時間程度になるので、僕らの生活の中で起きている出来事なんだというリアリティをしっかり持たせて、“営み”をより濃く描きたいと思っています」

―――先に関西チームが公演を終えるわけですが、バトンを受け取る東京チームとして、主演のお二人の意気込みは?

佐久本「正直なところプレッシャーです(笑)。でも関西チームの稽古映像も観させていただいていて、これは僕らにとって大きなヒントになるなと。内容は変わりますが、タカイさんのやりたいことやTAACとしての信念は勿論変わらないと思うので、そのマインドを大事にしていきたいですね」

福崎「関西チームの通し稽古の映像を見て、やはりプレッシャーはありつつも、『悪童日記』が現代版になるとこうなるのか、と純粋に面白いなと感じました。佐久本くんが言う通り、沢山のヒントが詰まっていると思うので、それを受け取れる感性を稽古に向けて育みたいと思います」

―――「強く、なりたい」というキャッチコピー、そして文字通り強くあろうとする双子の姿が印象的な本作ですが、お二人が「強くなりたい」、これだけは誰にも負けたくない、と思う特技や趣味などはありますか?

佐久本「僕は全然負けず嫌いなタイプではなくて、のほほんと生きてきてしまったのですが、最近初めてこれだけは他人には負けたくないなと思ったのが、『たこ焼き作り』です。『銀だこ』のたこ焼きが好きで、あの外がカリカリで中はフワフワなたこ焼きがどうしても家で作りたくて、たこ焼きを作るセットを買ったんです。それもよくあるパーティー用の電熱のものではなくて、火で作る本格的なものを! 最近上手に出来るようになってきて、キッチンカーでも出せるんじゃないかなって(笑)。これに関しては誰にも負けないと思います!」

―――ご時世的に今は厳しいですけど、いつかカンパニーの皆さんに振る舞えたらいいですね。福崎さんはいかがでしょうか。

福崎「僕もあまり負けず嫌いではなくて、人には人の好さがあるから……みたいなタイプです(笑)。でもそうだなぁ……最近マージャンのアプリを始めて、友人とやっているのですが、負けた時にちゃんと腹が立つので、『あ、自分、悔しいんだな』って自覚しました! ぜひ強くなりたいと思います(笑)!」

―――頑張ってください(笑)! では最後に、ご観劇に来てくださるお客様に一言お願いします。

タカイ「このご時世に劇場に演劇を観に来ていただけるということはとてもありがたいことだなと思っていますし、足を運んでくださった皆様にとって、今、必要な物語だったなと思っていただけるようなお芝居を届けたいと思っています。素晴らしいキャスト、スタッフの皆様が集まったので、ぜひご期待ください」

福崎「明るくハッピーな物語ではないですし、もしかすると観ていて心が痛むような場面もあると思うのですが、すべてを通して届けるべき物語として、お客様に届くように、僕らキャスト一同頑張りたいと思います」

佐久本「これから皆で一生懸命作っていくわけですが、『GOOD BOYS』は演劇の力で人の気持ちを変えられる可能性がある、そんな作品になると思っています。そのくらいの熱い想いでタカイさんと関西チームが先頭を切って頑張ってくれているので、僕ら東京チームも、カンパニー一同でお客様を劇場にてお待ちしています」

(取材・文&撮影:通崎千穂(SrotaStage))

プロフィール

タカイアキフミ
1992年7月27日生まれ、大阪府出身。2018年に個人ユニット「TAAC」(Takai Akifumi and Comradesの略)を立ち上げ。TAACでは脚本・演出を担当。

福崎那由他(ふくざき・なゆた)
2001年11月5日生まれ、茨城県出身。主な出演作品に、ミュージカル『黒執事 地に燃えるリコリス』シエル・ファントムハイヴ役、NHK連続テレビ小説『スカーレット』熊谷竜也役、映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』久永アタル役など。

佐久本 宝(さくもと たから)
1998年7月22日生まれ、沖縄県出身。映画『怒り』で知念辰哉役を演じ、第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な出演作品に、NHK連続テレビ小説『エール』古山浩二役、映画『冬薔薇』友利洋之役など。

公演情報

TAAC『GOOD BOYS』

日:2023年1月18日(水)~24日(火)
場:新宿シアタートップス
料:一般6,300円 パンフレット付一般8,000円
  イベント割一般5,040円
  イベント割パンフレット付一般6,400円
  U-18[18歳以下・当日指定引換券]1,500円
  ※枚数限定/要身分証明書提示
  (全席指定・税込)
HP:https://www.taac.co
問:ライトアイ mail:taac@righteye.jp

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