「フルートは音楽から色々な『風』を生み出せる楽器です。それは奏者の息がそのまま音になるというところに起源があり、さらに作曲家たちが生きた時代や、使っていた言語、そして作品が生まれた場所の風土も表すことができる素晴らしい楽器です」
自らが奏でるフルートの魅力を、熱っぽく語る上野星矢。若い頃から国内外で高く評価され、東京藝術大学音楽学部に在学中の19歳で世界的なフルート奏者の登竜門、ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクールで優勝し、現在はフルート界のトップランナーとして活躍するフルート奏者だ。その上野がクラシックホールの最高峰、サントリーホールでリサイタルを開催する。2018年から5回目のサントリーホールだというが、世界中のオーケストラが演奏したこのステージで、フルートとピアノの2人だけのリサイタルを開くことも異例なことだ。
「フルートのリサイタルということでは、恐らく一年に一度、私だけではないでしょうか。でもサントリーホールは無伴奏で演奏している時の最弱音の表情がホールの奥まで届く、素晴らしいホールです。広場を通ってホールに向かう道のりも、ワクワクします」
そんなステージで共演するのは岡田奏。上野同様、国内外で大きな注目を集め、上野が心から信頼しているピアニストだ。
「奏さんとはパリ国立高等音楽院での生活を共にした仲です。数々の国際コンクールで賞を受賞している世界的ピアニストで、彼女の人柄、奏でる音楽はどこまでも瑞々しく愛情に溢れています。リハーサルから本番の最後の音まで完全に呼吸が合う最高のパートナーです!」
演奏予定曲を見てみよう。まずはジョルジュ・ユー、シャミナード、カプレと19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの作曲家による作品。いずれも今回リリースされるニューアルバムに収録したものだという。そして後半はシューベルトが自作歌曲を主題として書いた変奏曲と、最晩年のブラームスがクラリネット奏者のリヒャルト・ミュールフェルトに触発されて書いた最後のソナタ作品だ。これら管楽器のために書かれた大作に、上野はこのリサイタルで挑むこととなる。
「フルートの作り出す風の世界を楽しみにいらして下さい!」と語る上野。是非会場で上野が生み出す色々な『風』に出会いたい。
(取材・文:渡部晋也)
プロフィール
上野星矢(うえの・せいや)
東京都出身。小学校4年生でフルートを始め、国内の主要コンクールで優勝を果たし、15歳で初リサイタルを開催する。東京藝術大学音楽学部フルート専攻に入学し、在学中の19歳で世界的フルート奏者の登竜門、第8回ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクールで優勝。2009年からはパリ国立高等音楽院に審査員満場一致で入学。2012年、同校第1課程を審査員満場一致の最優秀賞並びに審査員特別賞を受賞し卒業。同年10月、日本コロムビアレコードよりファーストアルバム『万華響 KALEIDOSCOPE』でCD デビュー。翌年セカンドアルバム『DIGITAL BIRD SUITE』をリリース。2014年にはNewYork Young Concert Artist 2014にて最優秀受賞。翌年、8か所のアメリカツアーを成功させ、ワシントンのジョン・F・ケネディ・センター、ニューヨークのカーネギーホールでリサイタルを果たす。これまでに国内外の著名なオーケストラと共演するほか、テレビ番組にも度々出演している。
公演情報
上野星矢 フルートリサイタル 2022
日:2022年10月22日(土)19:00開演(18:15開場)
場:サントリーホール 大ホール
料:一般 プラチナ席10,000円 S席6,000円 A席4,500円 B席3,000円
※他、学生席あり。詳細は団体HPにて(全席指定・税込)
HP:https://mori-music.com/seiya/
問:森音楽事務所 tel.03-6434-1371