谷桃子バレエ団『レ・ミゼラブル』が12年越しの再演 絶対に不可能と思っていた再演の実現は、喜びしかない

谷桃子バレエ団『レ・ミゼラブル』が12年越しの再演 絶対に不可能と思っていた再演の実現は、喜びしかない

 谷桃子バレエ団が、8月の本公演として『レ・ミゼラブル』を上演する。2010年に行われた60周年記念公演でも取り上げられ、文化庁芸術祭舞踊部門大賞に輝いた演目だ。振付・演出を行った当時の芸術監督・望月則彦は2013年に急逝。現芸術監督・髙部尚子による指導の下、遂に再演の運びとなった。バレエ団を支える精鋭ダンサー達が日替わりでキャストを務める2日間で、両日ともジャン・ヴァルジャンを演じるのは、プリンシパルの今井智也。60周年公演ではダブルキャストで同じ役を演じ、今回はシングルキャストで大役に臨む。

 「踊りだけでなく演技でもお客様に伝えていくことが多い作品なので、60周年公演ではとても悩み、苦戦しました。本番の後も〝これで良かったのか〟と自問自答しましたが、先輩方から〝良かったよ!〟という声を多くかけていただき、ようやく自信につながったことが思い出されます」

 望月の急逝で、再演は不可能とまで言われた同作。その思いは今井も同じだった。

 「もう絶対に上演できないと思っていました。ただ僕の中ではずっと〝もう一度演りたかった作品〟で、実は〝僕が振り起こしをしてでも再演したい〟と申し出ようとしたほど思い入れのある演目だったんです。でもどんどん月日が流れていく中で、再演は難しいかなと諦めかけていました。ですので今回の再演はただただ嬉しく、できることに感動ですね」

 12年越しの再演にあたり、乗り越えるべき課題も大きい。

 「望月先生がおられないですし、前回出演したダンサーがキャストにほぼいない状況なので、自分達で考えながらどのように創り上げていくか。当時どんなことを望月先生から言われただろうと思い出しながらリハーサルを重ねていて、現段階ではとても難しさを感じています。また、僕はシングルキャストなので、自分の目で確認できるわけでもなく、どのように見えているのかを考えながら、日々模索しています」

 今井いわく「ドラマ性が強く、独創的」だという望月の振付・演出がどう受け継がれ、どう更新されるのか。大いに注目したい。

 「お客様それぞれの感じるままに観ていただきたいと思います。どう受け止めて、どう感じるのかも含めて、何か伝わるものがあると嬉しいです」

(取材・文:西本 勲 撮影:羽田哲也)

プロフィール

今井智也(いまい・ともや)
10歳でバレエを始め、イギリス、アメリカへの留学を経て2003年に谷桃子バレエ団へ入団。2005年の新春公演『ジゼル』全幕でアルブレヒトを踊り主役デビュー。創立60周年記念公演では『白鳥の湖』、『ロメオとジュリエット』、『ジゼル』、『ドン・キホーテ』、『リゼット』、『レ・ミゼラブル』等に主演。2012年、文化庁の新進芸術家海外研修でオーストラリア・バレエ団にて1年間研修。バレエ団以外でも、2010年 TEPCO世界劇『黄金の刻』、東海テレビ放送主催『グラン・ドリーム・バレエ・フェス』、スペシャルコンサート『オーロラの結婚』等に出演、活躍の幅を広げている。

公演情報

谷桃子バレエ団本公演 Les Misérables レ・ミゼラブル 全幕

日:2022年8月10日(水)・11日(木・祝) 
場:メルパルクホール東京
料:プレミア席[特典付]12,000円 SS席9,900円 S席7,700円 A席3,300円(全席指定・税込)
HP:https://www.tanimomoko-ballet.or.jp/ 
問:谷桃子バレエ団事務局 tel.03-6890-1180

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