「ドラムはただのリズム楽器」「バンドの中でも裏方的なパート」と思っていませんか? そんな人はぜひ神保彰さんのソロ・プロジェクト、ワンマンオーケストラを観るべきです。コンサート会場にはきっとドラム・セットが組み上がっていることでしょう。でもピアノもギターもベースもありません。あくまでも神保さん一人分のスペースだけです。ところが、そのセットに神保さんが座り、演奏を始めるとアラ不思議。メロディーが流れ出します。誰ですか「録音した曲に合わせてドラムを叩いているんだろう」なんて意地悪なことを言っているのは。それも大間違いです。なんとビックリ、ドラム・セットに組み込まれたパッドを叩くことで、プログラミングされた音色が出る仕組みになっているのです。そう、これこそ神保彰のワンマンオーケストラです。
「最初が96年の六本木ピットインでしたから四半世紀超えましたね(笑)。楽器メーカーのヤマハさんが作った電子ドラムに付随の機能を利用しているので一緒にカスタマイズしてもらってます」
しかも世界のドラマー達を見渡してみても、神保さんと同じこと、いわばフォロワーは見つからないのです。
「楽曲を一回解体して組み直すわけで、ハードルがなかなか高い作業かもしれません。演奏もどのパッドにどの音が入っているか記憶して同じようにしないといけない。音楽家として総合力が問われる、チャレンジングな作業だと思います」
まさに一挙手一投足、全て同じように演奏するのは凄いことです。さらに演奏のためのプログラムも自ら行うのだといいます。
「えぇ自分で、スタジオでコツコツと(笑)。一時期はプラモデルにハマったこともありますから、そういう作業が元々好きなんだと思います」
今までワンマンオーケストラはライブハウスを中心に沢山演奏してきたが、これからは少し方針を変えるとのこと。
「以前の全国行脚だとライブハウス中心に半年で108本とかありましたが、コロナ禍で世の中がシフトチェンジしたこともあり、自分も変わる時期だと思いました。これからは中小のホールを中心に公演できたらと思うんです。そうすれば子供達も入ってきやすいですからね」
そんな気持ちに応えたこのかつしかシンフォニーヒルズ公演。唯一無二、驚異のドラム・プレイに触れてみませんか。
(取材・文:渡部晋也 撮影:平賀正明)
「家族の日
社会を良くするには、世界を良くするにはどうしたらよいか、などと考えると無力感に苛まれますが、自分の周りの人を幸せにしようと心がけることが初めの一歩になる気がします。一番身近な家族に感謝を伝える日ができたら素敵だと思います」
プロフィール
神保 彰(じんぼ・あきら)
東京都生まれ。大学のビッグバンドジャズの老舗、慶應義塾大学ライト・ミュージック・ソサイェティで活躍し、在学中に「カシオペア」への加入を持ちかけられる。プロ志向では無かったものの、メンバーからの説得を受けて加入。プロデビューを果たす。フュージョン全盛期で一番人気のバンドとなったカシオペアのドラマーとして、広く支持を集める。作曲も手がけ、なかでも「MID-MANHATTAN」は代表曲としてファンに愛されている。脱退後はベーシスト櫻井哲夫とのフュージョン・ユニット「ジンサク」、「熱帯JAZZ楽団」やソロプロジェクトで活躍。1996年からドラムトリガーシステムを利用してリズムとメロディを同時に演奏するワンマンオーケストラをスタート。その驚異のテクニックとアイデアで高い評価を獲得する。2021年「かつしかトリオ」を結成。7月31日から全国7カ所でホールツアーが決定!
公演情報
神保彰 ワンマンオーケストラ 2022
日:2022年7月30日(土)14:00開演(13:15開場)
場:かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール
料:一般4,500円 学生3,000円(全席指定・税込)
HP:https://www.k-mil.gr.jp/
問:かつしかシンフォニーヒルズ tel.03-5670-2233