完結から11年、あの“牛山明”が歌声と共に帰ってくる! 役者生活50年を迎えた風間杜夫が、等身大で演じるひとり芝居

子役時代を除いた役者人生が50年の節目を迎えた2021年。第46回菊田一夫演劇賞では大賞を受賞し、さらに先日は新宿梁山泊の舞台に客演して初めてのテント劇場に挑戦するなど、齢70を超えてまだまだ精力的に疾走する風間杜夫。これからもいくつもの舞台への出演が風間を待っているが、そのひとつに2010年までに5作品作られたひとり芝居『牛山明シリーズ』がある。完結から11年。その牛山明がステージに帰ってくる!


 風間杜夫のひとり芝居『牛山明シリーズ』が始まったのは1997年。そこから4本が作られて、2010年には全5部作を一挙上演(上演時間は5時間を超えたという)するという大仕事を終えてこのシリーズは完結したはずだった。それが今どうしてまた戻ってきたのだろう。

 「完結してから11年経ちますが、いったい牛山明は今どうしているか、それをやろうという話が、このシリーズをずっとプロデュースしてくれている岡田さんと呑んでいる席で出て。それに今時はコロナのせいで舞台上が密にならないようにするならばひとり芝居がいいだろう、なんて話もありまして。でも正直もう(牛山は)無いと思っていたんです。ひとり芝居自体は続けたいと思っていましたし、完結後も平和三部作というシリーズをやっています。でも牛山は最後の作品のタイトル『霧のかなた』の通り、彼方に消えていったと思ってました。その一方で、今頃彼は何をしているんだろうなあということも気にはなっていたんです。牛山明は僕自身、等身大のキャラクターで、内容も時代に即してやろうという意思があるので、幕が開く9月までにワクチンがどうなっているのかとか、東京オリンピックがどう影響しているのかとかによって内容は変わってくるでしょうね。」

 時代に即して内容が変わる。俳優の個性に合わせて脚本を書く“あて書き”ならぬ“あて時代書き”とでもいうべきか。

 「脚本・演出を担当してくれている水谷(龍二)さんとは、今までずっとやりとりしつつ作ってきました。皆で知恵や意見を出し合ってね。それだけ彼にはご苦労をかけてます。いつも3回くらい書き直しがありますからね。」

 今年72歳。昭和24年生まれの風間はいわゆる団塊世代。良きにつけ悪しきにつけ注目されてきたこの世代の仲間達に風間がエールを送る、そんな作品でもあるのだろうか。

 「始めたときは丁度団塊世代が50代に差し掛かる頃でした。もうひと花咲かせようという年齢でもあったので、そういった同世代を応援したい気持ちはありました。今はもう70歳を過ぎましたから、贈るべきメッセージは考えてますね。」

 そして今回のタイトルは『帰ってきたカラオケマン』。スペインで初演し、国内外をツアーした2作目の『カラオケマン』がベースになっているのだろう。当然歌声もだいぶ披露するというが、今のところかつてのようにツアーの予定はない。

 「今回もだいぶ歌いますよ。でも僕は歌手じゃないし、歌が好きだって言うだけでね。プライベートでもカラオケにはよく行ってました。今はあんまり行けないですけれど。『カラオケマン』ではあちらこちらと外国をまわりました。スペイン、アメリカ、中国、韓国、ルーマニア、ハンガリー……。今回はツアーの話はないです。もう年齢的なものもありますからねえ。」

 笑って風間はそういうが、舞台での迫力を見ている限り全国を、いや世界をまわる元気は充分にあるようにしか思えない。

 「さすがに身体に不具合は出てきています。だからまめにメンテナンスしないとね。元来医者嫌いだったんですが、脚が痛いとかめまいがするとか言っては随分お世話になってます。でも怪しいと思ったらすぐにかかろうと思ってますよ。」

 ともあれ、70歳を越えた牛山明がマイク片手に舞台に戻ってくる。風間が気になっていたように、俳優 風間杜夫が等身大で演じる牛山明が消えたことへの喪失感が観客にもあったはず。だからこそどんな姿で再会できるのか、今から楽しみにしているはずだ。そんな観客へのメッセージを最後にもらうことにしよう。

 「仲閒やファンの皆さんも皆年寄りになってね(笑)。余計なお世話かも知れませんが……僕が元気で舞台をやっていることで、皆さんに勇気を与えられるならいいですね。とにかく僕は舞台を楽しんでやっていますから。それを見届けて欲しいですね。」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

風間杜夫(かざま・もりお)
東京生まれ。8歳で児童劇団に入り、子役として活躍するがその後活動を休止。大学入学後に演劇を再開し、映画、テレビドラマなどで活躍するようになる。1977年につかこうへい事務所による『戦争で死ねなかったお父さんのために』に出演したのをきっかけに、つかこうへい作品の主要なメンバーとして舞台出演を重ね人気を高める。さらに1983年にはテレビドラマ『スチュワーデス物語』の教官役で全国区の人気を獲得。これまでにジャンルを超えて多くの作品に出演している。また落語家役をしたことをきっかけに、落語にも挑戦。度々落語家として高座に上がっている。今年6月には新宿梁山泊『ベンガルの虎』でテント芝居にも初挑戦。「もはややっていないのは歌舞伎くらい」というのは本人の弁。

公演情報

トム・プロジェクト プロデュース 風間杜夫ひとり芝居『帰ってきたカラオケマン』

日:2021年9月4日(土)~12日(日) 
場:東京芸術劇場 シアターウエスト
料:一般5,000円
  U-25[25歳以下]3,000円
  シニア[60歳以上]4,500円
  ※U-25・シニアは団体のみ取扱/要身分証明書提示
 (全席指定・税込)
HP:https://www.tomproject.com
問:トム・プロジェクト
  tel. 03-5371-1153(平日10:00~18:00)

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