兵庫県の淡路島にある複合施設「青海波 -SEIKAIHA-」内にある劇場「波乗亭」にてオリジナルショー 『舞い踊る郷の響き―ふるさと Neo Japonism―』が上演中だ(9月15日(月・祝)まで)。淡路島出身の豪商・高田屋嘉兵衛を題材に、日本各地の民謡とともにその足跡をたどる本公演。上演に先がけて、7月25日に関係者ゲネプロが行われた。
本公演は、淡路島出身の廻船商人・高田屋嘉兵衛を題材にしており、嘉兵衛が巡った旅路を音楽や舞、民俗芸能で辿っていくオリジナルショーだ。脚本・演出・振付を担当するのは、宝塚歌劇出身の謝珠栄。メインボーカルは劇団四季出身で、退団後も数々のグランドミュージカルで活躍する実力派俳優の近藤真行と坂元健児がWキャストで名を連ねる(近藤:7/26~8/24、坂元:8/29~9/15)。
舞台では演者たちの語りを挟みながら、高田屋嘉兵衛が巡った日本各地の民謡が披露される。嘉兵衛は江戸時代後期に活躍した淡路島出身の豪商で、函館を拠点に北方領土の航路開拓や漁場開発、交易などで財を築き、函館の発展にも貢献した人物。楽曲の合間には彼の生涯や業績が語られ、観客は物語を通して高田屋嘉兵衛という人物への造詣を深められる内容にもなっている歴史好きにも楽しい舞台だ。
本公演では、3月から5月にかけて行われた春公演から5曲を新たに加えた全21曲を上演。音楽は韓子揚、小澤時史が担当し、ラテンやジャズなど現代的なアレンジを加えた日本民謡が次々に登場する。多彩な音楽性にもかかわらず、親しみのあるメロディや歌詞が懐かしさを誘い、原曲を知る世代にも新鮮さが感じられるはず。
ショーは「シュラシュシュシュ」と軽快なリズムで歌う香川県の民謡「金毘羅船々」から始まり、徳島県の「阿波踊り」、高知県の「よさこい高知」と四国の民謡が続く。舞台はやがて九州へ。滝廉太郎作曲「荒城の月」を皮切りに、宮崎県の「ひえつき節」、熊本県の「おてもやん」「五木の子守唄」などアレンジの異なる楽曲がつぎつぎに登場し、観客を飽きさせない。なかでも、西南戦争最大の激戦地だった田原坂を題材にした「田原(たばる)坂」は、殺陣シーンを織り交ぜながら、戦火に散った命の儚さが丁寧に歌いあげられ、胸を打つ一曲。感情を揺さぶる音楽と演技に惹きつけられた。
ゲネプロ時にメインボーカルを務めた近藤真行は、舞台全体を支える屋台骨的存在。表現力豊かな歌声で物語を牽引しており、シリアスからユーモラスを交えたシーンまで、さまざまな表情を見せ楽しませてくれた。また、客席との距離が近いこの空間だからこそ、近藤の持つ声の力が一層際立っていたのも小劇場ならではの醍醐味。朗々と響かせる歌声は、曲に説得力と深みを与えると同時に、日本民謡の新たな可能性を感じさせてくれる。艶やかさ、力強さ、哀愁……そのすべてを自在に織り交ぜながら歌い分ける姿はまさに圧巻だ。
ラストは、日本を象徴する「さくら さくら」。静けさのなかに日本の美しさを感じさせ、余韻を残して幕を閉じたあっという間の80分だった。北海道の「ソーラン節」から、沖縄の「安里屋ユンタ」まで、日本全国の民謡を旅するように紹介していく構成は、まさに音楽で辿るふるさとの風景。終演後には、劇中の民謡をもう一度じっくり聴いてみたくなることだろう。
見どころは歌や舞だけではない。劇中で舞台を彩る和太鼓やバイオリン、フルートの生演奏にも注目したい。和太鼓の重厚な音は民謡の土着的な力強さを際立たせ、バイオリンやフルートの繊細な響きはメロディに深みと広がりを与える。異なる音色が絶妙に絡み合い、現代的なアレンジを加えた音楽も、ぜひじっくりと堪能してほしい。
和太鼓は上田秀一郎と五十嵐広大のWキャストで演奏。特にソロシーンでは、炎を思わせる赤い照明の中、力強い音が劇場中に響き渡り、燃えるような熱量を放つ姿に圧倒される。打ち鳴らされる音は単なる伴奏ではなく、まるで感情を語るひとつの「声」のように舞台に溶け込み、舞台に奥行きをもたらす役割を十二分に果たしていた。
さらに、衣装や小道具も本公演の魅力の一つ。扇や刀などの舞台小道具とともに、きらびやかな衣装が次々と登場し、視覚的にも楽しませてくれた。中でも、海を連想させる青の衣装は印象的で、光沢のある生地が照明を受けて煌めくさまは、水面のように幻想的だ。
ポップな振付が印象的な「朧月夜」では、K-POP風の明るくキュートなステージングが展開され、まるでアイドルのライブを観ているような高揚感を味わえる。自然と手拍子が湧き上がり、会場が一体となって盛り上がりを見せていたこの曲も、原曲とはまったく違ったアレンジが印象的だった。
日本にはこんなに多彩で素晴らしい民謡がたくさんあったのか。舞台を観終わったあとに、そんな感想をしみじみと抱き、日本の良さを改めて感じた『舞い踊る郷の響き―ふるさと Neo Japonism―』。客席数191席の小さな劇場から生み出された日本オリジナルミュージカルは、燦々と降り注ぐ真夏の太陽に負けないくらいの熱をもっていた。ゲネプロ前の取材会で、制作チームが国内だけでなく海外進出も目指したいと語っていたように、日本で最初にできた島といわれる国生みの島、淡路島から発信されるオリジナルショーが、いつか世界に羽ばたく日を楽しみにしたい。
(取材・文/中田優里奈)
『舞い踊る郷の響きーふるさと Neo Japonismー』公演情報
■脚本・演出・振付
謝珠栄
■キャスト
近藤真行(7/26~8/24)
坂元健児(8/29~9/15)
石坂光/池野千夏/音月さつき/金森なつみ/山根千緒里/原萌々花
長岡美地留/中川ひかる/吉田梨乃/田野清香/榮なつき
[演奏]
上田秀一郎・五十嵐広大(太鼓・Wキャスト)
喜連麻衣(ヴァイオリン)/佐藤碧美(フルート)
■日時
2025年7月 26日(土)・ 27(日)
8月1日(金)~3日(日)、8日(金).9(土)~13日(水)、15日(金)~17(日)、22日(金)~24日(日)
29日(金)、 30日(土)
9月5日(金)~7日(日)、12日(金)~15日(月)
開演14時00分(開場13時30分)
【アフタートーク】開催決定
※公演後、約20分を予定しております(本編は約80分予定)。
※本編をご覧いただいた方は無料でご覧いただけます。公演後、客席にてお待ちください。
・8月10日(日) 近藤真行、石坂光、原萌々花、佐藤碧美
・8月22日(金) 近藤真行、池野千夏、長岡美地留、喜連麻衣
・9月12日(金) 坂元健児、中川ひかる、吉田梨乃、喜連麻衣
■劇場
青海波 劇場 波乗亭(なみのりてい)
〒656-1723 兵庫県淡路市野島大川70
■チケット料金
【指定席】
一般 4,000円
【自由席】
一般 4,000円 / 小中高 2,000円
親子ペアチケット 5,000円(一般1名+小中高1名のセットチケット)
■スタッフ
音楽:韓子揚、小澤時史
舞台美術:中辻一平
照明プラン:竹内哲郎(株式会社ハートス)
音響プラン:本村実
衣装:根木伸介(衣装屋オテンテン)
太鼓作調:上田秀一郎
稽古場レポートや公演レポートを執筆&掲載します!
【お問合せ・お申込みはこちら】