エンターティメントの世界で「Only1」な存在として舞台、映像で活躍を続ける、福田悠太、辰巳雄大、越岡裕貴、松崎祐介4人グループ「ふぉ~ゆ~」。彼らがダンスエンターテインメント集団「梅棒」とタッグを組み、2022年に上演した舞台『Only 1, NOT No.1』が、更なるパワーアップを遂げて、東京・日比谷のシアタークリエで上演中だ(8月3日まで。のち、8月9日~8月10日愛知・岡谷鋼機名古屋公会堂で上演)。
『Only 1, NOT No.1』は、ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで創り上げる唯一無二のダンスエンターテインメント集団「梅棒」とふぉ~ゆ~が初めてのコラボを組んで上演した作品。持ち前のトークスキルを封印し、全編セリフなし(ノン・バーバル)の演劇表現に挑戦して、自分だけの“Only 1”を磨き“No.1”を目指して奮闘する4人の男たちを演じたふぉ~ゆ~は、誰もが耳にしたことのあるJ-POPの大ヒット曲の数々に乗せて、極上のダンス・パフォーマンスを展開。ホストクラブ同士の激烈バトルが繰り広げられるドラマを、梅棒スタイルと呼ばれるダンス&演劇表現で繰り広げて大きな評価を得た。
今回はそんな作品の待望の再演で、新曲も加わり全体をブラッシュアップした、ノンストップで駆け抜ける熱い舞台が展開されている。
【STORY】
舞台は東洋一の歓楽街、新宿歌舞伎町ではじまる──
秋田の高校で青春を共に過ごした塩崎犬太(しおざき けんた・松崎祐介)と新井場廻(あらいば かい・越岡裕貴)。卒業後、犬太は地元に残り、廻は意気揚々と上京するも、都会でのバイト暮らしは思うに任せない。そんなある日、廻はホストクラブ「WHITE KNIGHT」のNo.1ホスト街野松也(まちの まつや・楢木和也)に憧れ、自身もホストとして働くことを決意する。
一方、犬太は実家の酒蔵を引き継ぎ、父と妹の茉莉花(まりか・佐々木莉佳子)と共に懸命に働くが、度重なるトラブルに見舞われ経営が悪化。資金繰りに困り果てるなか、廻が歌舞伎町のホストとして生計を立てていることを知り、自身もホストになって稼ごうと廻を頼り上京。泣きつかれた廻はホストクラブ「WHITE KNIGHT」の雑用係として犬太を紹介するが、不器用でとことん真っ直ぐな気質を持っている犬太はNo.1ホスト松也の傲慢な振る舞いに我慢が出来ず、遂に衝突してしまう。折も折、現れたのは夜の帝王・オーランド(梅澤裕介)。全国のNo.1ホストを集めた至高のホストクラブを創るとの誘いに乗った松也が引き抜かれ、気づけば「WHITE KNIGHT」には廻と犬太だけが取り残されていた。
困り果てた廻を持ち前の真っすぐさで犬太が励まし、二人は新たなホスト仲間を求めて新宿の街をひた走る。そこで出会ったヤクザの下っ端・益子龍(ましこ りゅう・辰巳雄大)と売れないお笑い芸人・長島茶太郎(ながしま ちゃたろう・福田悠太)をスカウト。4人体制による新生「WHITE KNIGHT」の営業がはじまった。
だが「WHITE KNIGHT」の目と鼻の先にオーランドのホストクラブ「BLACK SHIP」が華々しくオープン。すすきののNo.1真我玲央(しんが れお・野田裕貴)、ミナミのNo.1陣馬力(じんば りき・櫻井竜彦)、中洲のNo.1義務川礼斗(ぎむかわ れいと・天野一輝)、カンナムのNo.1ハク ソジュ(鶴野輝一)、そして歌舞伎町のNo.1松也が勢揃いした「BLACK SHIP」とのレベルの差は歴然で、閑古鳥が鳴く「WHITE KNIGHT」の現状に4人は頭を抱える。
その頃、自分も家業を助けようと兄の犬太を追って上京してきた茉莉花は、犬太に実家に帰れと突き放されるも、様々なバイトを転々としていたが、「歌舞伎町の女王」と呼ばれるクレア(紅ゆずる)の目にとまり、キャバ嬢として働くようになっていた。更にクレアは「WHITE KNIGHT」の4人が、伝説のホストをよく知るハマ子こと浜辺直人(はまべ なおと・HideboH)のアドバイスを受けられるようはからい、ハマ子の助言から4人は自分だけのOnly 1を見つけることで、「WHITE KNIGHT」をNo.1ホストクラブにするべく奮闘していく。そんな「WHITE KNIGHT」の存在が次第に目障りになってきた「BLACK SHIP」の面々は4人と衝突。その有様を見た女王クレアが、とんでもない提案を持ちかけたことから、茉莉花、ハマ子、新宿の街で人生一発逆転を夢見る老女・暁ハル(あかつき はる・遠山晶司)も巻き込んだ歌舞伎町の夜の歴史に残る事態が勃発して……
舞台を観終わって改めて驚いたのは、あれ「本当に台詞なかった?」という感覚だった。実のところ状況を説明しているクレアとハマ子を除く、ふぉ~ゆ~の4人をはじめとした主要キャストはいっさい言葉を発していない。にも関わらず、登場人物たちのキャラクター、性格や気質、置かれた状況などがきちんと伝わってきて、物語展開にハラハラドキドキもさせられる。もちろんそれこそが梅棒スタイルの真骨頂だし、KinKi Kids、KAT-TUN、SUPER EIGHT、Snow Man等々ふぉ~ゆ~にとって縁深いグループの楽曲をはじめ、ウルフルズ、椎名林檎、及川光博などのヒット曲の数々。更にこの作品の為に書き下ろされた主題曲「Only 1, NOT No.1」の歌詞が、物語展開と見事にリンクしてドラマを伝えてくれる、歌詞による効果にも非常に大きなものがある。ただ、それだけでは決して説明できないもの、むしろ台詞がないからこそ喚起されていく想像力と、意味を伝えるだけのマイムには決してならない熱量の高いダンスや芝居から、受け取る側に大きな余白を残してくれるドラマがどんどん深い興趣を増し、感性を刺激してくる興奮に心躍るのだ。
そんな唯一無二の梅棒スタイルとふぉ~ゆ~がタッグを組んだことで、歌舞伎町のホストクラブ同士の覇権争いという、良い意味でベタな展開に、人情味や人と人との絆の美しさが加味されていて、あー良いドラマを観たな、という温かい想いに満たされるのは、やはりふぉ~ゆ~が持つ、まさに作品タイトル通りの「Only 1, NOT No.1」なグループの個性の賜物だろう。
実際4人それぞれがソロでの魅力的な仕事も多くこなしているふぉ~ゆ~だが、4人揃った時の、これをピースがハマると言うのだろうな、と感じさせる無敵感には圧倒的なものがある。今回も、塩崎犬太の松崎祐介のどんな状況でも決して諦めず周りを鼓舞していけるパワーのなかに、松崎自身の個性も投影されている明るさと、新井場廻の越岡裕貴の思い込んだら命がけ、目標に向かってまっしぐらに突き進みつつ、誰も傷つけない優しさもちゃんと感じさせる2人が回し始める物語が、ヤクザの下っ端として粋がって生きてきた様を、コミカルなシーンでもどこか眼光鋭く演じる益子龍の辰巳雄大と、シングルファーザーで子育てに邁進しながら、相方に逃げられてもお笑い芸人への夢を捨てない一生懸命さに、ペーソスもにじませる長島茶太郎の福田悠太が出会い、4人で「WHITE KNIGHT」を大きくしていこうと頑張りはじめる展開での、来た来た~!という盛り上がりぶりは、ふぉ~ゆ~が巧まずして醸し出すベストなチーム感あってこそだ。
一方の梅棒も抜群の身体能力で颯爽と登場するものの、どこかずっと胡散臭い(褒めている)。オーランドの梅澤裕介をはじめ、確かに笑顔なのだが笑顔の底に不敵なものを常に湛えている街野松也の楢木和也。小悪魔的な可愛さがあざとさでなく、冷たさも内包している真我玲央の野田裕貴。この手のタイプのホストが、おそらく一番始末が悪いぞ……と感じさせる陣馬力の櫻井竜彦。クールビューティのなかに熱さも内包する義務川礼斗の天野一輝。本当は日本語パーフェクトなのに、調子よくわからないフリをするんだろうなと想像させるハク ソジュの鶴野輝一。最後にドカンと存在意義が明らかになる暁ハルの遠山晶司の、動ける人が演じるからこそ真実味がある腰の曲がったおばあちゃんぶりと、それぞれが個性的で多士済々。彼らはメインの役柄だけでなく、様々な形で登場していてそのインパクトもまた大きく、まさに目が足りないという心境に陥った。
同じく多くの役柄として、またダンサーとしても登場するアンサンブルの小野礼実、湊江梨奈、豊田由佳乃、柳澤佳純にもそれぞれ見せ場があり、とにかく全員が小気味よく踊る様に惹きつけられた。
また、犬太の妹・茉莉花の佐々木莉佳子は、アンジュルム及びハロー!プロジェクトを卒業後初めての舞台で、蓄えたダンススキルと、歌舞伎町の女王にこれと見込まれる人物であることに説得力を与える変身の妙も鮮やか。今後の活躍も楽しみだ。
冒頭、会場を温める任も担うハマ子のHideboHは、実は……がある謎の人物を明るく、滋味深く表出するだけでなく、待ってました!の日本を代表するタップダンサーの1人としての、華麗な技も披露して作品を盛り上げてくれる。
そして、歌舞伎町の女王として颯爽と登場したクレアの紅ゆずるが、劇中でほとんど説明がないにも関わらず、歌舞伎町を牛耳る大物であることに疑問を差しはさませない押し出しの良さで、ドラマの核を握っていることも舞台に大きなインパクトを与えて頼もしい限り。
全体にも『ダンス オブ ヴァンパイア』のクコール役で、自身が鮮烈な印象を残したばかりの作・総合演出の伊藤今人のエンターティメントへの情熱を、美術の石原敬をはじめスタッフワークがよく支えていて、スウィングの田中幸介、米内理紗を含めたキャストがその情熱を盛り立てた、ふぉ~ゆ~ meets 梅棒ならではの破天荒に楽しく、ホロリともさせられる、これぞオンリーワンな熱いステージに仕上がった。
尚、受け取り方が自由で、想像の余地も多い作品だけに、充実の公演プログラムで得られる情報は膨大なので、必読の価値ありとお勧めしておきたい。
また初日を控えて囲み会見も行われ、福田は「ふぉ~ゆ~のリーダーです。リーダーの仕事はこういう時にリーダーと言うことです」とまず笑わせ「再演になったのにはわけがある。それはきっと面白かったからである。シアタークリエで会いましょう」と台詞がない舞台なのでと、敢えて台詞調を意識した話し方を披露し、更なる笑いを広げていた。
また辰巳は、稽古場最終日が前倒しになった、長い舞台人生で初めてのことが起きたという驚きの事実を伝え「1日前に『もういけるな』となって、最終日を使わない初めての現象が起きました。それぐらい完成度が高い、密度の濃い『Only 1, NOT No.1』になっています。ホストクラブがはじめての方も入店しやすいお店でございます。必ずあなたが指名したくなるステキなキャストがいるので、ご指名お待ちしています!」と自信のほどを伺わせた。
松崎は「世界一熱い夏がシアタークリエにあります。(「WHITE KNIGHT」と「BLACK SHIP」の対決だけに)白黒はっきりつけようぜ!」と元気よく宣言すれば、越岡は自分が沼っているチョコレート同様に、ホストとして「劇場にいらしたお客様も僕の甘い表現の沼にハマらせます」とすっかりホストになりきった発言を。
梅棒のメンバーも韓国人ホスト役の鶴野が韓国語で、おばあちゃん役の遠山がカリカチュアした年配の話し方で挨拶するなど、役としての顔も見せつつ、ふぉ~ゆ~について「3年前よりも皆さん忙しくなっているのに、隙間時間でも合流したり、稽古に参加していないシーンも入っていたり、稽古に向かっていく姿勢がプロだな」など口々に賞賛。ふぉ~ゆ~側からも多くの意見が出て、初演より更に共に創った感覚のある舞台になっていると明かした。
また、初参加の佐々木が「ナンバーワンキャバ嬢キラキラ頑張りたいと思います」と明るく挨拶。その佐々木とすっかり意気投合した紅から「つけまつげをつけてもらった」と初つけまつげ体験を披露。それに応えた紅も大好評の舞台の一員になれたことが光栄だという想いと共に「歌舞伎町の世界観に皆さんを引きずり込んでいけるよう頑張って参ります」と意欲的に語った。HideboHも「老若男女問わず観ていただきたい作品で、タップダンスもたっぷり」とアピール。
ちょっとした言い間違いで全員が大笑いの総崩れになるなど、カンパニーの和気藹々ぶりも伝わり、暑い夏を吹き飛ばす熱い友情を描く舞台への期待を高めていた。
取材・文・撮影/橘涼香
公演概要
ふぉ~ゆ~ meets 梅棒『Only 1, NOT No.1』
【東京公演】
公演期間:2025年7月13日(日) ~ 2025年8月3日(日)
会場:シアタークリエ
■出演者
<ふぉ~ゆ~>
福田悠太、辰巳雄大、越岡裕貴、松崎祐介
<梅棒>
梅澤裕介、鶴野輝一、遠山晶司、櫻井竜彦、楢木和也、天野一輝、野田裕貴
小野礼実/湊江梨奈/豊田由佳乃/柳澤佳純
スウィング:田中幸介/米内理紗
佐々木莉佳子/HideboH/紅ゆずる
■スタッフ
作・総合演出:伊藤今人(梅棒)
振付・監修:梅棒
音楽監督:monologue
楽曲製作:加部 輝(ウルトラ寿司ふぁいやー)
美術:石原敬
照明:平安山良伍
音響:原 香菜子
映像:横山 翼
衣裳:佐藤憲也
ヘアメイク:小林雄美
演出助手:西谷智美
舞台監督:佐藤 博
制作助手:中尾 遥
制作:村上奈実
プロデューサー:今村眞治
製作:東宝
■チケット料金
11,800円(全席指定・税込)
【名古屋公演】
公演期間:2025年8月9日(土) 、8月10日(日)
会場:岡谷鋼機名古屋公会堂