あて書きの幸福感にあふれるオリジナル・ミュージカル『SONG WRITERS』上演中!

日本を代表する作詞家・森雪之丞と、人気と実力を兼ね備えた俳優として、また演出家として高い評価を得ている岸谷五朗のタッグにより生まれたオリジナル・ミュージカル『SONG WRITERS』が、日比谷のシアタークリエで上演中だ(28日まで。のち、12月7日~8日大阪・森ノ宮ピロティホール、12月11日愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホールで上演)

『SONG WRITERS』は、2013年森雪之丞が脚本・作詞、音楽プロデュース、岸谷五朗演出で生み出したオリジナル・ミュージカル。自信過剰な作詞家エディ・レイク役に屋良朝幸。気弱な作曲家ピーター・フォックス役に中川晃教。お調子者の音楽ディレクターのニック・クロフォード役に武田真治をはじめ、多彩なキャストたちの歌・ダンス・芝居・コメディセンスが相まって大評判となり、2015年には早くも再演される人気を獲得した。そんな伝説の舞台が、約10年の時を経て、2024年待望の再々演の幕を開けることになり、オリジナルキャストの屋良、中川、武田、そしてマフィアのボスのカルロ・ガンビーノ役のコング桑田らに加え、実咲凜音、相葉裕樹、青野紗穂、蒼木陣、東島京の新キャストを迎えて、ハートフルで、ポップで、謎が謎を呼ぶ大賑わいの舞台が展開されている。

【STORY】

1976年、アメリカ。自信過剰な作詞家のエディ・レイク(屋良朝幸)と、気弱な作曲家のピーター・フォックス(中川晃教)は幼馴染でコンビを組むソング・ライターズ。二人は、いつか自分たちの作ったミュージカルがブロードウェイで上演され、成功することを夢見て、作詞作曲に励んでいる。そんなある日、音楽出版社のディレクター、ニック・クロフォード(武田真治)が二人の曲をボスが気に入ったという報せをもってやってくる。ただし契約には、今書きかけのミュージカルを1年以内に完成させること、そしてそのミュージカルに相応しいディーバを見つけることが条件だった。

折も折、エディが偶然知り合い、その歌声に惚れ込んだミュージカル女優の卵、マリー・ローレンス(実咲凜音)が訪ねてくる。言動にどこか謎めいたもののあるマリーだったが、ひとたび歌い出すと素晴らしい歌声を披露。早くもディーバを見つけた二人は、ミュージカルを完成させるべく創作に邁進する。

ところ変わって、裏社会のビジネスを手広く展開しているマフィアのボス、カルロ・ガンビーノ(コング桑田)は、内通者の刑事、ジミー・グラハム(相葉裕樹)のおかげでニューヨーク市警の手から逃れ、手下のベンジャミン・デナーロ(蒼木陣)やアントニオ・バルボア(東島京)らと共に意気揚々とクラブで豪遊している。ジミーの元恋人で、クラブ歌手のパティ・グレイ(青野紗穂)は、いまはカルロの情婦となっているが、二年前にジミーから突然別れを切り出されたことが納得できず、今もジミーを思い続けていた。

と、シリアスな展開は、やがてエディの描いているミュージカルだとわかってきて、その物語展開にピーターとマリーは手応えを感じていた。そこへ、ニックから二人のミュージカルに有名プロデューサーからの投資話が持ち上がっただけでなく、マリーをこの作品でデビューさせたいという朗報がもたらされる。大喜びした三人だったが、エディは次第に物語の執筆に支障をきたすようになっていく。登場人物たちのドラマがエディの望むハッピーエンドからどんどん遠ざかっていこうとしているのだ。やがてエディのなかで制御できなくなったキャラクターたちの行動は、現実との境界線をなくしていき……

約10年ぶりにシアタークリエに帰ってきたこの『SONG WRITERS』に接して改めて驚いたのが、作品の展開がいまやサブカルチャーにおける一大ジャンルとして定着した「異世界転生もの」に通じる要素を持っていることだった。作品が初演された2013年当時には、例えば何かの事故によって現代に生きていた主人公が、自分が愛読していた小説やゲームのなかの登場人物に転生してしまう物語が脚光をあびていた頃だ。それらの「生き直す」物語は一過性のブームに終わることなくひとつのジャンルへと定着して、主人公が物語のヒロインではなく悪役に転生して、むしろ自由奔放に生きる「悪役令嬢もの」と呼ばれる作品群や、全く違う人物として物語のなかに転生するのではなく、中世の架空の王国で、王族、皇族、貴族がクーデターや陰謀によって処刑された瞬間、数年前に時間が巻き戻り、悲劇に終わった前世の記憶を頼りに未来を変えようと奮闘する「逆行もの」など、様々なバリエーションが生まれ現在も活況を呈している。こうした小説や、コミックスが膨大な数生まれ続けるのは、それだけ地道に日々を生きている市井の人々にとって、「いま」の現実が厳しく、未来への夢が描きにくいからだろうなと、感じることも実は多い。

そんななかで再々演を迎えた『SONG WRITERS』が素晴らしいのは、そうした時間の逆行や、創作世界と現実世界の混沌など、ドラマが二転三転、さらに意外な方向に転がっていく「転生」や「逆行」を思わせる展開のなかでも、彼らが決して「ハッピーエンド」を諦めないことだった。ここに強固にある、エディとピーター、SONG WRITERSが追い求める、エンターティメントはハッピーエンドでなくてはならないとの信念は、すなわち、作者である森雪之丞と、作品を舞台に具現する演出の岸谷五朗が共通して持っているものに違いない。その強い想いが、良い意味でベタな展開も多く含むこの作品のスピード感と軽快さを保ち続け、劇場にいる3時間、日常を忘れてハラハラドキドキしながら心を温め、明日ももう少し頑張ってみようか、という希望を届ける力になった。特に前述した「転生」や「逆行」の要素が、現実世界とあくまでも地続きで、ファンタジー色が濃くないのもニューヨークを舞台にした作品にとっての好バランスを保っていて、そうした絶妙な要素がこの作品を2024年のいま、もう一度舞台に呼び戻した原動力に感じられた。

そんな世界観とクリエイターの信念に共鳴しているキャストたちの躍動が、舞台の熱量をさらにあげている。

作詞家のエディ・レイクの屋良朝幸は、自分の才能を信じるお調子者のようでいて、実はめっぽう小心者でもあるエディを、表情豊かに生き生きと演じている。持ち前のダンス力が十全に活かされているのは言うまでもないが、この人の歌声にある一種の軽みが数々のミュージカルナンバーとベストフィットしているのは、これぞオリジナル作品の強み。多くのミュージカルで主演を務めている屋良だが、エディ役の輝きは頭ひとつ抜けていて、作品と役柄と共に歩んできた屋良本人の進化が、作品の深化に直結するあてがきの尊さを感じた。

作曲家ピーター・フォックスの中川晃教は、曲はできているけれど、歌詞がない部分があるから完成じゃない、という趣旨の台詞が示す、歌詞先行で曲を生み出している二人の関係性がしっくりくるどこか内気な人物を自在に表出している。常にパワフルな歌声で圧倒する中川が、この作品では何よりハーモニーを大切にしていることが伝わってくるし、特筆すべきはダンス力の向上で、こんなに踊っている中川を観たことがないと感じさせたほど。自身の作曲である「鎮魂歌」の弾き語りも忘れ難く、瑞々しい少年性もいい。

二人が新作ミュージカルのディーバにと期待を寄せるマリー・ローレンスの実咲凜音は、今回の新キャスト。がっちりと絆が固まっている「SONG WRITERS」が想いを寄せるヒロインに新たに挑むハードルは決して低くなかったと思うが、持ち前の明るさとおおらかさで役柄を造形。複雑に入り組んでくる後半では芝居部分の巧みさが生き、前半と役柄を乖離させない力量が頼もしかった。

マフィアと通じている悪徳刑事、ジミー・グラハムの相葉裕樹も、一見意外な役柄に相葉が入っていることの意味が、のちのちに効いてくるキャスティングの妙が光る。スラリとした長身と甘いマスクのビジュアルの良さがビターな恋物語部分を担っていくのに打ってつけで、パティとのデュェットも聞かせた。意外なところでも活躍しているので注目して欲しいし、カーテンコールでの軽快そのもののダンスシーンも魅力にあふれている。

そのパティの青野紗穂も、シリアスな恋模様の切なさをパワーのある歌声に乗せていて、古典的な「ザ・ヒロイン」ぶりがよく似合っている。近年役幅を広げていて、エネルギッシュな役柄だけでなく、こうしたしっとりした女性も手中に収めた成果がよく生きていた。この役どころにも重要な鍵があり、その大任を果たしている。

マフィアのボス、カルロ・ガンビーノのコング桑田は、凄みの必要な役柄で表出するインパクトが絶大で、時にゾッとさせるほどだが、こうした全体がポップな作品のなかでは、その鋭さに可笑しみも加えられるのが貴重。オリジナルキャストらしい力感を示している。

カルロの手下のベンジャミン・デナーロの蒼木陣は、濃い作りこみが一瞬蒼木とはわからなかったほどで、変わらぬ身体能力の高さを役柄によく生かしている。もう一人、アントニオ・バルボアの東島京も、そんな蒼木に一歩も引かずに、堂々とどこかコケティッシュさも込めて役柄を演じていて、主演が控える2025年のミュージカル『四月は君の嘘』での活躍がますます楽しみになった。

そして、オリジナルキャストの強力な一角、音楽出版社のディレクター、ニック・クロフォードの武田真治は、このカンパニー全員にとって貴重な存在だろうことが伝わる、強いアクセントになる演技を披露。作品の世界観を表す屋島裕樹のかなり難易度が高い衣裳も楽々と着こなし、複雑な喜怒哀楽の表現が目を引く、作品の屋台骨を支える存在だった。

また、様々な役柄を演じる栗原沙也加、鈴木昌実、塩川ちひろ、内木克洋、川口大地、榊海搭一人ひとりにも見せ場を作る岸谷演出の温かさも健在で、スウィングにクレジットされている大山怜依、柴野瞭と共に全員が舞台に躍動。観劇後「ソングライターズ」と並んで殊に強い印象を残すミュージカルナンバー「ハッピーエンドが待っている」を口ずさみながら劇場をあとにできる、ハートウォーミングな舞台だった。

【囲み取材】

初日を前にしたシアタークリエのロビーで囲み取材が行われキャストを代表して屋良朝幸、中川晃教、実咲凜音、武田真治と、森雪之丞、岸谷五朗が、再々演を迎えた作品への抱負を語った。

森 「47年間ソングライターをやっている森雪之丞です(キャストから「すごい!」「本物だ」などの声)。ただですね芝居、ミュージカルに目覚めたのは今世紀に入ってからなのでちょうど20年になるんですが、いろんな仕事、訳詞であるとか、作詞をしているうちに、自分で物語を書いた方が、歌がある芝居の流れが作りやすいだろうということで、日本のオリジナルを作ってみようと思ったのが(この作品の初演の)2013年。その後2015年に再演がすぐできて、9年経ってめでたく再々演ということになりました。ブロードウェイを舞台にしたわけなんですけど、これは岸谷五朗と共に、2人でもうのべにすると多分2ヶ月、3ヶ月一緒にブロードウェイで寝泊まりして、観劇三昧をしたんです。そんな中からニューヨークを舞台にしたこの物語が生まれました。日本のミュージカルまだまだオリジナルが(少ないので)、もちろん皆さん頑張って作っていると思うんですけど、こうやって再演されるとみんなに勇気を届けることができると思うので、クリエイターの方も制作陣の方もそしてもちろんキャストの方も勇気を持って、これから日本のオリジナルに挑んでいただきたいと思います。」

岸谷「10年以上前の作品で。僕も10年前の作品がまたできるのはご褒美をいただいたような気持ちです。稽古を重ねて1ヶ月、あっという間に明日初日で。こんなに初日が楽しみなのはなかなかないですね。不安の方が多いんですが普段。やっぱりこの素晴らしきキャストたちがめちゃくちゃ面白くてですね。雪之丞さんの書いたキャラクターたちが役者の力で命をもらい本当にキュートに輝いてるんですね。私自身が、明日が待ち遠しいです。」

屋良「今五朗さんが言ってくれたように役者陣も、きっとこの初日をずっと待ちわびていたと思うんです。でも僕ちょっと正直、こんな気持ちになったことがないものがひとつあって。もちろん皆さんの前、お客様の前でパフォーマンスをする、これに向けてやっていたんですけれども、稽古場が楽しすぎてちょっと稽古終わってほしくないって思っちゃったんです。こんなことなくて。10年前は本当にすごく必死だったんですが、自分も歳を重ねて、余裕ではない、必死な部分はあるんですけれども、ただやっぱり雪さん(森)が書いた本で、何より五朗さんが稽古場でああでもないこうでもないと戦ってるその時間がめちゃくちゃ楽しくて。あと1ヶ月はそれで楽しめたんじゃないかなみたいな。それぐらいのものが詰まっている作品になっているんじゃないかなと思っています。なのでもちろん皆さんの前で、これをパフォーマンスして多分また重ねるごとにさらにブラッシュアップしていけると思うんで、それは舞台の醍醐味でもあるし。なので千秋楽までにまた僕たちがどう変わっていくかというのは、本当に皆さんに見ていただきたい部分でもあります。」

中川「ピーター・フォックスという素敵なお名前とキャラクターをいただいております、中川晃教です。フォックスってね(狐の真似をする)」

岸谷「さっきから皆さん何やってるかわかんないぞ(笑)」

中川「これ舞台中にもちょっとちょいちょい出てくるポーズなんですけれども(笑)、2013年の初演の時を今も思い返しながら、一瞬一瞬が愛おしい、そんな日々を過ごさせていただいています。舞台っていうのはこんなにも愛おしいものなんだということを再度教わっているような、そんな気持ちにさせてくれているのも、やっぱりこの作品に携わる皆さんの大きな大きな愛、そして時を経て、初演の2013年、僕はちょうど30歳から31歳になったんです。10月がシアタークリエの初日だったのでツアー中に誕生日むかえて。実は僭越ながら11月5日、今日が僕誕生日でして。」

キャスト「イェーイ!!」(会場全体から拍手)

屋良「初日ではない。」

岸谷「そこが、ちょっとね(笑)」

中川「42歳になったので、この役、作品をきっかけに自分のそういう時代、年代をまた振り返りながら、今という時代、時間に感謝できる。これもまたこの作品や舞台、ミュージカルが僕に教えてくれていることなんだなと、そういう全ての思いを込めて愛おしい舞台、作品になっています。どうぞよろしくお願いいたします。」

──42歳の抱負もお聞きできますか?

中川「まず体、健康に、半身浴も気をつけながら、すっきりとやっぱり心も元気に明るく、そして屋良さんも朝早く目覚めて、6時からしっかり活動されてる、(武田を示して)筋肉を保たれている、(実咲を示して)現役で素敵な歌を届けていらっしゃる、(スタッフ二人に)そしてやっぱりこうやって夢を届けてくださっている皆さんから力をいただいて、僕もパワーをしっかりと届けられるように、健康第一で頑張っていきたいと思います。」

実咲「本当に楽しい方々ばかりで。五朗さんもおっしゃっていましたが、明日からの初日、不安も勿論ありますし、自分がやることでいっぱいいっぱいになる部分もあるんですけど、ワクワクの方が断然大きくて。マリーという役は、今回私は初めて入らせていただいているんですけど、本当に舞台上を駆け回っていて、こんなにハードだったんだというのを身にしみて感じているんですが、1ヶ月間ここから走り抜けることが楽しみで、お三方もわいわいしている時など、良い意味で小学生がたわむれているみたいな(笑)。」

屋良「褒められてますね。」

中川「褒められてますよ。」

実咲「心の若さがすごくみなぎっていて、この作品にパワーを与えてくださっていて。お稽古場も五朗さんは本当に自由にさせてくださり、でも個性を引き出してくださって楽しかったですよね。」

屋良「楽しかった、本当に楽しかった。」

実咲「だから楽しみで、頑張りたいなという思いでいっぱいです。」

武田「屋良さんが言った通り、僕も思ってるところなんですが、稽古場に通うのがこれほど楽しい作品ってあるかなと思うくらい楽しい時間で、学びも多く、充実した稽古期間をすごすことができました。最後は9年前ですね、9年前この作品を再演させていただいた時に『ソング・ライターズ』は自分自身はやりきったと思っていたんですけど、この雪之丞先生の綿密に書かれた脚本は、まだまだ自分が深堀りするべきところがたくさんありまして、歳を重ねて再結集したキャストでもう1回そういうところを膝付き合わせてさぐりあって、圧倒的なリーダーシップで五朗さんに演出していただいて、10年我々歳は取りましたけど、パワーアップした舞台、本当に素晴らしいものを明日から届けられるのではないかと思っています。ご期待ください!」

──屋良さんと中川さんはこの舞台で知り合ったと伺っています。

屋良「そうです。この舞台で知り合ってこの舞台でしか共演してないです。」

岸谷「そうなんだ」

屋良「そうなんです実は、」

──フォトセッションの時の感じから通じ合っているという雰囲気が伝わってきました。

中川「伝わりましたか?やっぱりこの作品で出会って僕たち結婚したみたいな感覚があるから。」

屋良「いやないないない(笑)1回もない!」

中川「あれ、ない?感覚的な話なんだけど」

屋良「いや疑われるぞ。ここだけ切り取られちゃうと(笑)」

中川「それくらいなんか運命の人と出会ったなみたいなのがあったんですよね。」

屋良「あ、それはね。」

──どういうところにそれを感じられたのですか?

中川「やっぱり同じ板の上に立たせていただく仲間として見つめていく先、そこには勿論自分に課せるものもあるし、でも1人だけでは生み出せない世界だし、やっぱりみんなと協力して何かを作っていく喜びもあるし。僕自身屋良さんを見ていて、自分にないもの、自分が探さなければいけない、手にしたいと思われるものをたくさん持っていた。そこが僕にとっては、こうやって同じ板の上に立たせていただける人とめぐりあえたんだと素直に思ったから、運命の人です。」

屋良「いや恥ずかしい。」

中川「すごい皆さんスミマセン、僕のなれそめを聞いてくださって。」

──自分にないもので屋良さんにあると感じられるものはなんですか?

中川「この、何にも臆さない感じですかね。」

屋良「そんなことはないよ。」

中川「舞台に立つ人間としての厳しさでしょうか。僕もかなり自分にストイックなところあるんですけど。どうですか屋良さん?」

屋良「立場が変わってるけど(笑)逆にってこと?いやでも本当、僕にないものを持ってるっていうのは同じで。僕からしたらある意味器用じゃないところがあるんですけど、ただ器用じゃないからこそすごく綿密に、台本のセリフひとつにしても紐解いていく。それで、わからないことは「わからない、なんだろう」て言うんです。俺はこれまでやってきた中で、わからなくてもとりあえず見せてしまえる、動けちゃうところがあったんです。そこはアッキーと真逆で。でもわからなかったらストップする。ちょっと動物的な感覚にすごく羨ましさを感じた部分があって。そこでまず、あ、面白いなって思ったところから、あとは元々歌、アーティストという部分からは俺も昔からアッキーのことは知っていたので、そこがこんなに絡むと面白くなるんだなっていう感じと、やっぱり同年代っていうのが大きいですね。」

──実咲さんは今回初参加で、皆さんもおっしゃっていますが稽古が楽しいということでしたが、どう楽しいのでしょうか?

実咲「みんな自由で。(岸谷に)もう個性がすごいですよね?」

岸谷「うんちょっと抑えてほしいよね(笑)。」

実咲「なんかやりながら笑っちゃうんです。役を通してだけでも笑っちゃうのも、みんな真剣にやっているから楽しい。あの空間がすごくプロでいいなという感覚もありましたし、とにかく(屋良を示し)ツッコミ(中川を示し)ボケですよね。いつもそんなやりとりが。」

屋良「表も裏もね」

実咲「そう(笑)このまんまという感じで、皆さんが自然体で。それもすごくあるのかな。」

──その中で武田さんの役割はどんな感じだったのですか?

武田「この場を借りてちょっと僕確認したいことがあるんですが。あの、僕のこと笑かそうとする傾向はあったよね?稽古場で。そうじゃない?」

屋良「ありましたっけ?」

中川「ありましたっけ?」

武田「あ、じゃあごめんなさい、今の件は勘違いでした(笑)。ぼくの役割はなんでしょうね……年上。それに尽きるんでしょう(笑)。なんとなくふわっと、年上くらいしか思いつきませんね(笑)。」

屋良「でも俺、真治さんで覚えてることがあって。初めて立ち稽古した時かな。五朗さんが「10年前とか忘れて1回好きにやって」と言われて3人で好きにやった時に、本当に好きにやりすぎて、五朗さんの感想が「精神年齢落ちたね」っていう(笑)、それが第一声の感想だったんです。その時に真治さんが新しいキャストに向かって「ね、みんなこれで安心したでしょ」って言って(笑)。みんなの心をふっとリラックスさせるような役割もあったんじゃないかなと。あれはすごく覚えてます。」

中川「あとやっぱりシーンごとに稽古を進めていく中で、冒頭におっしゃっていたように綿密に書かれている本の、深いところを読み解いていくというのを真治さんがすごくしてくださっていて、関係するシーンでもたくさん言葉をくださったり、真司さんがそういう側面で見ているんだという発見もたくさんあって。なのでもしかすると笑わせたいって思っているわけじゃなくて、真治さんのキャラクターと、役柄のニックのキャラクターに対する愛着みたいなものが、この再々演であふれている、MAXになっているのもあるかもしれない。笑かそうとしているって思うことがあったんですか?」

屋良「ずっと言ってた真治さん。」

武田「いや、笑っちゃうんですよね~(笑)」

──いいですね!そして屋良さんと中川さんは初演から11年、お互いの変わったところ変わらないところがあれば教えて下さい。

屋良「ダンスは上手くなりました、アッキー。普通にダンサーさんで。」

中川「それはちょっと、うまくなったなったとかそんな言葉を頂戴するのは…」

屋良「いや本当に。10年前は絶対にできないステップがあったんですけど、本番中も(笑)。でも振り付けを覚えるスピードも上がったし、技術的な、それこそお芝居の表現になるダンスもパワーアップしてるから。この作品でしか一緒に出ていないと言いましたけど、アッキーのライブにゲストで出たりはしていて、そういうところでは踊らせてもらう、僕の振り付けでやったりすることもあったので、なんかそれを重ねていって、今回……ちょっとダンスだけね、上からでごめんなさいですけど(笑)。すごくなんか上手になった。」

──どこのシーンですか?

屋良「全体的に踊ってるところです。」

中川「「ソングライターズ」の振付で、踊れないシーンが1箇所あったんです。」

屋良「前回ね。」

中川「(前回まで)出演もされていた藤林美沙さんが振り付けで、今回はしっかりと監督として振りを見守ってくださっているんですけど、一つひとつ教えていただいて、ようやくついていけてるなという、ようやくできるようになったなと、人の力を借りてなんとか。」

屋良「いやいや、見どころです。」

──森さんいかがでしょうこの形になって

森「僕、心配なことあるんですけど、クリエイターとして言えば、僕がこの世にいなくなっても作品は残り、そして代々違うキャストがそれを演じていってくれたら最高のことじゃないですか。ひとつの作品が受け継がれていく。だけど今回本当に思ったんですけど、このキャスト以外考えられないんですよ。なのでひょっとしたらもうこの作品はこれで終わってもいいのかなっていう。それくらい、みんなエディでありピーターでありニック、そしてマリーっていう、もう困ったもんですよ(笑)。」

屋良「嬉しい言葉!」

──では最後に代表して中川さん、屋良さんからメッセージをお願いします。

中川「こんなに歳を重ねていく喜びを味あわせてくれる役と出会えたのも本当に珍しいことじゃないかなと、宝物のようなそんな僕にとっての役、作品です。そして登場する全てのみんながキラキラ輝いています。これもまたこの作品が持っている力だなと思います。時が経って今新たに皆さんの目の前にお届けするこの作品の魅力、是非劇場に体感しに受け取りに、足をお運びいただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。」

屋良「本当に盛りだくさんっていう言葉がこんなに似合うエンターテインメントはないなと思っていて。勿論僕ら役者もそうですけども、照明さんだったり、スタッフさんの力もものすごく大きくて、みんなでこの作品を作り上げていってる感じがするんですよ。実はスタッフさんも金髪のカツラを被って登場しているんです、それも見どころです。だからみんな登場人物なんです。そこも含めてこの団結感ていうか。それがこの『SONG WRITERS』の世界を作っているという意味で、2024年最高に笑える作品を五朗さんと雪之丞さんが準備してくれたので、本当にたくさん笑って、たくさんストレスを飛ばしに来ていただけたらいいなと思っています。よろしくお願いします!」

【取材・文・撮影/橘涼香】

公演情報

ミュージカル『SONG WRITERS』

日程:11月6日(水)〜11月28日(木)
会場:日比谷シアタークリエ

■ツアー公演:
日程:12月7日(土)~12月8日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール(大阪)

日程:12月11日(水)
会場:Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知)

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