「憎しみを生み出すのも人であって、それを解きほぐしたのも人」実話を基にした心温まるストーリー、ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』製作発表レポート

3月より日生劇場にて、ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』が上演される。

第71回トニー賞で7部門ノミネート・ミュージカル演出賞を受賞、ローレンス・オリヴィエ賞、ニューヨーク・タイムズ紙の批評家賞をはじめ、様々な演劇賞を受賞した作品で待望の日本初演公演である。

2001年9月11日の同時多発テロ時、カナダのニューファンドランドで起きた実話を基にした作品
音楽と共にスピーディーに伝えられる5日間、人種、国、宗教を越えた人々が支え合う心温まる物語となっている。

先日、当作品の製作発表がカナダ大使館にて行われ、豪華12名のキャストが登壇、意気込みや心境などを語った。

本作ではテキサス人のダイアンのほかに様々な役を演じる安蘭けいは「ブロードウェイで観てとても感動して、日本で上演できる機会があったらぜひ出演させていただきたいと思っていたので嬉しく思っています。ダイアンをメインに、ニューファンドランド島の住民たち複数人の役を演じるのですが、それぞれ違いを出すために声色を変えたり色々と挑戦しています。「やりすぎ」と言われてしまうこともありますが、それだけ違いを出せるようにしていきたいと思います。」と複数名を演じることへの思いを語った。

石川禅は作品のセットについて「とてもシンプルなセットで【13脚の椅子と3卓のテーブル】のみで、転換(舞台上のセット移動)は役者が行います。椅子のデザインはどれをとっても違っており、まるで飛行機に乗り合わせた人々の人種や国籍の違いを表しているようでもあり、個性豊かなキャストを表しているようでもあります。そんなバラバラな椅子が舞台上に現れた瞬間、一機の飛行機が出現します。素晴らしいです。魔術です。このメンバーで一つの旅客機を作り上げて、無事テイクオフしていくことをどうぞ祈っていていただければと思います。」としっかりと伝えた。

浦井健治は稽古場の雰囲気にも触れ「豊かな稽古場で、個性も豊かで、差し入れも豊かで。各国で上演されてきた作品を日本で初めて上演させていただくのですが、我々の感覚や個性を尊重しながら作っていくこと、その一個一個の積み重ねが、試行錯誤する過程がなんて豊かなんだろうと思います。演劇は、人生もそうですが、答えそのものよりそこに向かう時間が尊いと感じます。この12人とスタンバイキャスト4人を含めた16人で一緒にやれていることが幸せだなと思います。」と語った。

加藤和樹も稽古場に関しての質問に対して「先日まで別の作品に参加していたので、皆さんほど稽古場のことを知らないのですが・・・「同じキャストでは再演できないんじゃないか」というくらい、活躍されている方ばかりで、一人一人の力が一つになった時にどのくらいのエネルギーが出るんだろうと思っています。作品が持っている力と、ここにいる日本を代表するようなキャストの皆さんのエネルギーが相乗効果となって、とんでもない爆発力を生み出すのではないかと思います。」と伝え、豪華なキャスト陣との共演に期待を高めた。

咲妃みゆは「9.11」の当時を思い出し「当時小学生でしたが、ニュースで知って抱いたショックを今でも鮮明に覚えています。大きな悲しみ、苦しみ、憎しみを生み出してしまったのは人であって、それを解きほぐしたのもまさしく人であったというのがこの物語のポイントだと思います。傷つき、戸惑い、そんな中でたくさんの人が寝る間を惜しんで手を差し伸べました。遠い国で起こった出来事ということではなく、どの場所もどの国も、ニューファンドランド島になり得るんだとうことを思ってご覧いただければと思います。」と作品の核となる部分とともに想いを伝えた。

シルビア・グラブもニューヨークで本作を観劇したことを交えながら「オープニングの曲を聴いた途端心臓の鼓動が高まってワクワクしました。また、作品のストーリーを知ると号泣で・・・これだけ愛のある舞台にしていることに感動して、もし日本で上演することがあったら絶対参加したいと思いました。キャストが椅子やセットを動かして、それが飛行機や、街のバーに見えたりしていく姿もすごくかっこよくて、客席から観ると簡単そうでしたが実際は四苦八苦しています。ニューファンドランド島の人々が手を差し伸べて助け合ったように私たちも舞台上で助け合って乗り切りたいと思います。」と伝えた。

浦井演じるケビンTの恋人で秘書を務めるケビンJを演じる田代万里生は「現在実在する方をモデルに実名で演じさせていただいております。演出補佐のダニエルさんから「この作品は9.11ではなく9.12を描いた作品だ」とおっしゃっていました。復興に繋がる作品で、全員ですぐに思い浮かんだのは、9.11はもちろん3.11の東北の地震であったり、先日の能登地震やその後の飛行機事故のことでした。僕たちもいつでもガンダーの人たちのような気持ちになれる作品だと思っています。」と年明けに日本で起こった震災等も交え話した。

本作ではニューファンランド島ガンダーの町長を演じる橋本さとしは「大変だとかはあまり言いたくないのですが、めっちゃ大変です(笑)。稽古場に本番さながらのセットが組まれているのですが、ステージ上に立ち位置を表す「バミリ」が満天の星空のように貼られていてちょっと引いてしまいました。いろんなキャリアを積んできたミュージカル界の、演劇界の超人たちですが意外とみんなパニックになったり迷子になったりしていてちょっと安心しました。みんなで素敵なガンダーの町を表現できたらと思います。」と本作の大変さを伝えた。

アメリカン航空の初女性機長でもあるビバリーを演じる濱田めぐみは「物語上の役割としては緊張感をもって切り込んでいく役でもあるのですが、カンパニー内では可愛らしい先輩方がたくさんいらして、幸せだなあと思ってやっています。この作品は9.11の被災地での状況が舞台上で描かれているのですが、3.11や能登の地震に対して私たちが抱える心の辛さや苦しみと一緒なんだと気づきました。日本の方が観ても誰もが共感できるものをちゃんと受け取って、持って帰ることができる作品だと思います。」と作品に対しての思いを語った。

マンハッタンで消防士の息子をもつハンナを演じる森公美子は「演じる役柄が複数あるので毎日「私、今誰?」「どこに行けばいいの?」という状況が続いて・・・「あのシーン私ハンナですか?」「島の人ですよね?」とそういう感じで進んでいるのですが、本当に面白いです。主役ばっかりやっている皆さんが集まっているのでギクシャクしちゃうかなと思ったのですが、すごく楽しい稽古場になっています。」と苦労を交えながら語った。

森が演じるハンナと同じ消防士の息子を持つビューラーを演じる柚希礼音は「地元代表のおばちゃんという感じの役をやらせていただくのですが、自分がこんなにすごいメンバーを仕切ったりできるんだろうかと稽古が始まる前も今もドキドキしています。皆さんが助けて下さり教えて下さったりしながら一歩ずつやっています。この出来事を取材したドキュメンタリーの中で町長さんが「人の優しさはどんな悲劇でも乗り越える」とおっしゃっていて、9.11は人が起こしてしまった事件ですが、やはり人の優しさで癒されることもあるんだということを大切に演じていきたいです。」と思いを伝えた。

吉原光夫は「先ほど(森)公美(子)さんが「私、誰?」とおっしゃっていましたが、実は、テロや地震が起きて自分の居場所がなくなってしまったり、帰れなくなってしまったりすることで自分が誰なのかわからなくなったり、誰かが亡くなったことで自分がなぜ生きているのかわからなくなることはあると思います。そんな時にガンダーの人々がその思いを引き受けて、寄り添ってくれたという実際の話があったことがすごいなと。最高のメンバーで無条件で何か繋がって命削ってやっている本当にイイ稽古場なので、是非楽しみにしてください。」と作品の本質、そしてこのキャストでの太鼓判を押した。

年3月7日 (木) より東京・日生劇場、4月4日(木)より大阪・SkyシアターMBS 他 全国6会場にて上演。チケット絶賛発売中。

ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』

■公演期間:2024年3月7日 (木) ~2024年3月29日 (金)
■会場:日生劇場

■脚本・音楽・歌詞:アイリーン・サンコフ/デイビット・ハイン
■演出:クリストファー・アシュリー

■出演:安蘭けい、石川 禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森 公美子、柚希礼音、吉原光夫(五十音順)
■スタンバイ:上條 駿、栗山絵美、湊 陽奈、安福 毅(五十音順)

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