9月28日、ぽこぽこクラブ「不朽の名作シリーズ」第2弾『あの大鴉、さえも』の顔合わせと、初稽古となる読み合わせが行われた。本公演は、竹内銃一郎の傑作を西沢栄治の演出により、2026年10月21日(水)〜25日(日)、阿佐ヶ谷アルシェにて上演する。
出演は、三上陽永・杉浦一輝・渡辺芳博。2013年の旗揚げ以来、共に活動してきた3人だ。渡辺が本公演をもって退団するため、現在の3人体制で臨む最後の舞台となる。



読み合わせでは、戯曲に描かれた人物たちと、3人の関係性との重なりが浮かび上がった。セリフのやり取りのところどころに、普段の3人の関係がぴたりと当てはまる。それぞれが担う役も、まるで3人のために当て書きされたかのようだ。13年間、同じ舞台に立ち続けてきた俳優たちがこの作品に挑む面白さが、初稽古から感じられた。
『あの大鴉、さえも』に登場するのは、一枚の大きなガラスを運ぶ3人の男たち。仕事を終えようとしながらも、口論や脱線を繰り返し、思うように先へ進めない。言葉遊びと身体のせめぎ合いから、男たちの滑稽さや切実さ、そして「見えないものの重さ」が立ち上がる。
その言葉に向き合う稽古場では、多くのディスカッションが交わされた。一つひとつのセリフが持つ温度感や匂いを、ゆっくり、ゆっくり、丁寧に探っていく。西沢の演出のもと、話し合いを重ねながら、作品に含まれるさまざまな可能性に目を向ける時間となった。

読み合わせの途中で、突然「検証」の時間が始まる場面もあった。その場にあるものを使い、しゃがみ込んで支えたり、持ち上げたりしながら、実際に身体を動かして確かめていく。言葉を交わし、身体で試す。その行き来を通して、戯曲の世界を少しずつ立ち上げていく。

笑い、衝突し、それでも創作を続けてきた3人。その関係と名作の言葉が重なり合うところから、どのような舞台が生まれるのか。13年間を共にした三羽烏の一つの節目に向けて、可能性を探す稽古が始まった。ぽこぽこクラブ『あの大鴉、さえも』は、10月21日に幕を開ける。
演出家・西沢栄治コメント
『あの大鴉、さえも』は、以前から大好きな戯曲です。いろいろな俳優たちに「この作品をやってみたら?」と勧めてきましたが、ぽこぽこクラブの3人にも、純粋に「この3人でやるところを見てみたい」と思って提案しました。今回、彼らにとって大切な公演に、演出として声をかけてもらえたことを、本当にありがたく思っています。
実際に読み合わせをしてみると、「まるで当て書きじゃないか」と感じるところがたくさんあるんです。見えない大きなガラスを3人で運ぶという、シンプルな話なのですが、そのガラスとは何なのか、重いものを運び続けるとはどういうことなのか。続けることへの迷いや、重すぎるからもうやめようというやり取りが、今の3人に重なって、とてもリアルに聞こえてくる。期せずして、戯曲の面白さを超えた、3人の「セミドキュメンタリー」のような芝居になる気がして、非常にワクワクしています。日本には、面白くて、変で、上演するのが大変な戯曲がたくさんあります。この作品も、どうやればいいんだろうと、稽古場で探り続けています。そんな戯曲と、この3人が格闘する姿は見ものですよ。なかなか上演されない作品でもあるので、ぜひ劇場で見届けていただきたいです。
◆西沢栄治
演出家。1971年、東京生まれ。
2000年、プロデュース形式のJAM SESSIONにて演出活動を開始。ギリシャ劇や歌舞伎、シェイクスピアなどの古典から現代戯曲まで、幅広い作品の演出を手掛ける。2004年、日本演出者協会「若手演出家コンクール2003」にて最優秀賞を受賞。
椿組では、2010年、2016年、2023年に花園神社野外劇の構成・演出を担当。主な演出作品に『ハイライフ』『フランドン農学校の豚』『楽屋』『天保十二年のシェイクスピア』『わが町』『夏の夜の夢』『女の平和』などがある。
新国立劇場では「こつこつプロジェクト」第1期に参加し、2021年に別役実作『あーぶくたった、にいたった』を演出した。
公演情報
ぽこぽこクラブ 不朽の名作シリーズ第二弾
『あの大鴉、さえも』

会場:阿佐ヶ谷アルシェ(東京都杉並区阿佐谷南1丁目36-15 B1)
【脚本】竹内銃一郎
【演出】西沢栄治
【出演】 三上陽永、杉浦一輝、渡辺芳博
【公演スケジュール】
2026年10月21日(水)…①19:00
2026年10月22日(木)…②19:00
2026年10月23日(金)…③14:00/④19:00
2026年10月24日(土)…⑤14:00/⑥18:00
2026年10月25日(日)…⑦14:00
【チケット料金】 全席自由席(税込)
一般 5,000円/25歳以下 3,000円/18歳以下 1,500円
事前決済予約は特典ステッカーつき
公式HP
https://www.pocopoco.club/next-stage
お問い合わせ
pocopoco.club.seisaku@gmail.com
企画製作:NPO法人ぽこぽこクラブ
◆ぽこぽこクラブとは◆
2013年、涙を流しながら必死に卵をぽこぽこ産むカメの姿に心を動かされた3人が、「俺たちだって面白いものをぽこぽこ産み出したい!」と立ち上げた男3人の演劇ユニット。
近年では地域との出会いを創作の原動力とし、2019年には愛媛県内子町の重要文化財・内子座で約1か月のアーティスト・イン・レジデンス公演を実施。青森県ではりんご農家での生活や地域の人々との交流を経て『home〜りんごさんのうた〜』を創作し、座・高円寺での東京公演では延べ1,200人を動員した。
2020年若手演出家コンクールでは演出の三上陽永が最優秀賞を受賞。地域で育まれた物語から古典戯曲、現代社会を見つめる作品まで、多彩な演劇表現に挑戦し続けている。