ファッションブランド・KAPITALとのコラボレーション!吉祥寺シアターにて開幕! 串田和美、6度目の挑戦。串田が長年魅了されてきた作品を、是非劇場で!
20世紀初頭、アイルランド文芸復興運動の中で生まれたJ.M. シングの喜劇は、 ユーモアと皮肉を織り交ぜながら、アイルランド西部の小さな村に暮らす農民たちを 生き生きと描き出す。 都会的な英国演劇とは異なる独特のエネルギーに満ちたこの名作に、 串田は長年魅了され、1975年より、これまで5度にわたり手がけてきた。2025年、新たな脚色を施し、渾身の“狂詩曲(ラプソディ)”が10月20日、吉祥寺シアターにて開幕した。
衣裳スタイリングを担うのは、デニムを原点に、伝統的技術を大切にしながらも グローバルな視点で実験的かつアート性の高いデザインを展開するブランド〈KAPITAL〉。
公演は10月27日(月)まで上演。
『オレ、おとっちゃんを殺しちゃったぁ!』
常連ばかりが集まる田舎の酒場を父と二人で切り盛りする、 美人で勝気な娘ペギーン。 ある晩、「父ちゃんを殺しちまった」と語る謎の男が現れ、 なぜか村人たちの人気者に。 村はざわめき、恋も騒動も転がり出す―― ところが物語は思わぬ展開となり……
【コメント】
『西に黄色のラプソディ』初日の幕が開いた。過去に何度か上演した戯曲が、 まるで別物のように、とてもみずみずしく新しい芝居になった。嬉しい!
(串田和美)
REVIEW
西に黄色のラプソディ
豊かさを感じるシングの戯曲と串田演出
六回目となるフライングシアター自由劇場の舞台は、1907年ダブリンで初演のアイルランド生まれの劇作家ジョン・ミリトン・シングの戯曲“The Playboy of the Western World”を串田和美が潤色・演出・美術を手がける。直訳風にいうと、「西の国のプレイボーイ」、現に昭和2(1929)年、なんと96年前に発刊の「近代劇全集 第廿五巻愛蘭土篇」(第一書房刊)に『西の人氣男』(松村みね子訳)として掲載されているほどのアイルランドを代表する傑作戯曲だが、本作に串田が初めて出会ったのは50年前。1975年、六本木の地下に居を構えたアンダーグラウンドシアター自由劇場での自由劇場公演『プレイボーイ』。シングの原作を大胆に田槇道子が脚色・演出した舞台に〈ショーン〉役で串田が出演、これが気に入って2年後には串田自らが潤色・演出し、上演した。以後、81年、2009、21年と5回にわたって上演を繰り返してきた。
にもかかわらず、今回の舞台はこれまでとまったく違った“新版”といっていいほど瑞々しい『西に黄色のラプソディ』となった。この邦題も「ラプソディー」を「ラプソデイ」に変えるなど、潤色者(今回は脚色者)串田和美のこんなこだわりにもずっと見続けてきた筆者にはうれしい(『西に黄色のラプソディ(―)』ももちろん串田案)。
いささか前説が長すぎたが、でもそれもなんか理屈ではなくこの台本(原作)に似つかわしく思えるのだ。決して派手な凝った演劇的な仕掛けがある訳でもないし、ダブリン初演時に父親を殺した男を偶像視するなどけしからんと、アイルランドにおおい保守的で敬虔なカトリック教徒の時とたちが劇場内外で暴動を起こしたということも今思えば定型的で現在の感覚では穏当に感じられる。
さて舞台。開幕前(実際に幕はないが)の主役は放しがいの謎のニワトリ(本物!)。舞台を自在にヨチヨチ歩くさま(鶏跛=けいは)はこれからの物語を予感させるのか? とまれ、幕開きから舞台はランタンの明かりの中で進む。アイルランドの荒涼とした海岸沿いの村にある、とある居酒屋の風情。
荒地に見えた薄暗い舞台に、いつの間にか中央に大きなテーブルがセッティングされ、上手には大きな扉が浮かび上がってくる(こうした“装置が動く”自由劇場スタイルの転換もうれしい、以後も全編人力)。扉を開け戸口から現れるのがショーン、いいなづけの彼を迎え入れるのは居酒屋を一人で切り盛りするペギーン。そしてその父親マイケル、疑り深そうなフィリーや好色そうなジミーといった村の常連客が加わり、そこによそ者のクリスティが現れると、物語は急展開。「父親を殺してしまった」と告白するクリスティ。そして一人暮らしの後家・クイーンら常連客達はその話に食いつき、なぜかクリスティは英雄視されてすっかり人気者に。ペギーンもクリスティが気になり、彼をボーイとして雇うことにする。
その親殺しが日々退屈、平凡な毎日を送る村人たちの好奇な心を刺激するだけのインパクトを十分持ちうることは言うまでもない。まさに村中歓喜の狂騒曲。黄色のラプソディの大合唱でクリスティはたちまちヒーローに。
が、こうして物語を追うのはここでは正直あまり意味があるとも思えない。もちろんそれから孤独な青年クリスティが次第に自信を強めていくのだが、そこに突如鋤で殺したはずの父親老マフォンが〈頭が割れている狂人〉として居酒屋に現れ、父殺しとしてもてはやされた“プレイボーイ”の子と父は連れ立って村を出ていく。息子を温かく見守る父の眼差しにも注目。
村人たちが共同して作り上げた父殺しの夢物語から、作者のそして演出・串田のシニカルな視線が見えてきて、まさに悲喜劇というか微妙な陰影が登場人物のセリフの断片や、役者の細かい表情や動き、そして舞台美術に、KAPITALの衣裳に見事に示唆されていることはいうまでもない。加えて串田語とも言える原作のゲール語訛りの民衆的英語の脚色も温かい「笑い」に大いに貢献していることはいうまでもない。幕切れに那須凜のペギーンと串田十二夜のクリスティがハンドマイクを使ったデュエットとダンスが楽しすぎる。
劇のキーワードとして「ノスタルジー」を公言してきた串田の思いは、懐かしさばかりではない、はじめて見る光景がこの舞台から感じられるのではないだろうか。
お人好しで、温かさの中にちょっぴり裏切りも秘めた村人たちが集う西の外れの村の、たった1日の出来事。吉祥寺シアターの演劇空間に生まれた軽やかなのに濃厚な新しい景色、黄色い狂騒曲(ラプソディ)に乾杯。
(文:佐藤優)
アフタートーク開催決定!
10月22日(水) GUEST:小日向文世(俳優) × 串田和美 × 串田十二夜(歴代の主人公クリスティ役が集合です!)
10月23日(木) ☆アフタートーク追加!串田十二夜 × 内田健司
10月24日(金) 那須凜 × 串田十二夜
是非、アフタートーク回も狙ってください!
【出演】
那須凜 / 串田十二夜 / 内田健司
井内ミワク / 竹口龍茶 / 反町鬼郎
さとうこうじ / 真那胡敬二 / 大森博史
串田和美 / 銀粉蝶
【スタッフ】
照明:齋藤茂男/音響:市來邦比古/舞台監督:横沢紅太郎/演出助手:河内哲二郎
衣裳:KAPITAL/衣裳進行:中野かおる/宣伝写真:MARCO/宣伝イラスト:串田和美/宣伝美術:八十島博明
広報補佐:臼田菜南/制作:三國谷花 /カンパニープロデューサー:串田明緒
企画製作:フライングシアター自由劇場
協力:公益財団法人武蔵野文化生涯学習事業団
主催:(有)自由劇場
【公演概要】
フライングシアター自由劇場 第6回公演
『西に黄色のラプソディ』
原作: J.M. シング『The Playboy of the Western World』
脚色・演出・美術:串田和美
<劇場>
吉祥寺シアター
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-33-22
0422-22-0911
https://www.musashino.or.jp/k_theatre/
<チケット料金>
一般:7800円 / ペアチケット:15000円
U-30:4500円(要身分証明書) / U-18:2000円 (要身分証明書)
平日夜割 ※23日[木]19:00のみ
●一般:7,200円 ●U-30:4,000円 ●U-18:2,000円
平日の夜も劇場に通っていたあの頃を思い出したい、という思いから設定いたしました。
※以下はフライングシアター自由劇場のみ取り扱い(団体受付)
エンジェルシート 12000円 (特典付き、座席エリアの選択可)
できる限り若い世代にもやさしい料金設定をと思いますが、昨今の物価高など演劇を取り巻く厳しい状況の中で年々難しくなってきております。そこで、一般料金とU-25・高校生以下の料金との差額に充てる「エンジェルシート」を設けました。購入を通して公演を応援して頂くシステムです。座席優遇・特典などもございます。公演を担う大切な一員としてご参加、ご観劇いただけますと幸いです。
<日程> 2025年10月20日(月) ~ 10月27日(月)
10/20 (月) | 10/21 (火) | 10/22 (水) | 10/23 (木) | 10/24 (金) | 10/25 (土) | 10/26 (日) | 10/27 (月) | |
13:00 | ○ | ○ | ||||||
14:00 | ◎AT | ◎AT | ○AT | ○ | ○AT | ○ | ||
17:00 | ○ | |||||||
19:00 | ☽ |
*受付開始は開演45分前、客席開場は開演30分前です。
◎=アーリーバードチケット対象ステージ
☽=平日夜割対象ステージ
AT=アフタートーク開催
<チケット取扱い>
電話予約:カンフェティチケットセンター(050-3092-0051 受付時間平日10時~17時)
その他のお取扱いについては、公式サイトからご確認ください。
▼公式サイト : https://www.k-jiyugekijo.com/
<SNS>
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