【INTERVIEW✑】舞台「プロパガンダゲーム」脚本・演出: 春陽漁介

【INTERVIEW✑】舞台「プロパガンダゲーム」脚本・演出: 春陽漁介

2022年8月11日 (木・祝) ~2022年8月28日 (日)、サンモールスタジオにて上演する、舞台「プロパガンダゲーム」、脚本と演出を手掛ける春陽漁介に話を聞いた。

STORY

君たちには、この戦争を正しいと思わせてほしい
そのための手段は問わない

広告代理店の最終入社試験に訪れた8人の大学生。
最終課題は、国民を戦争に導けるかどうかを競うゲームだった。
【政府チーム】と【レジスタンスチーム】に分かれた学生たちは、国民に対して宣伝を使った情報戦を繰り広げていく。


ーー脚本・演出のお話がきた時のお気持ちはいかがでしたでしょうか?

小説が原作の作品に関わることが初めてなのでワクワクしましたし、その原作『プロパガンダゲーム』があまりにも面白かったので一層楽しみになりました。
プロデューサーさんが僕の過去作品も観てくれていることから、原作との相性も考えてオファーしてくださったのも光栄です。

ーー今作の舞台化にあたり、脚本で心掛けたところや、演出でこうしていこう、のような意識しているところはありますでしょうか?

脚本は、もちろん原作に忠実であることを心がけています。ただ、どこで幕を閉じようかは悩みました。本当は原作にある後日談まで見せたいところですが、舞台では最終面接(プロパガンダゲーム)の終わりと共に幕引きしたいな、と。その後起こるかも知れない出来事を見せるのではなく、想像してもらう。それが今作において重要なテーマなのだと思っています。

演出においては、だいぶ演劇手法に振り切って考えていきます。一番大きな挑戦としては、映像演出を使わないことです。原作を読むと、どう考えても映像で説明しなければならない部分がたくさんあるのですが、そのまま映像に頼ってしまうと、劇場の小ささも相まって説明を中心にした舞台になってしまうような気がして。じゃあどんな風にやるのかは観てのお楽しみです。少しネタバラシすると、政府チームの回では、レジスタンスチームに。レジスタンスチームの回では政府チームに活躍してもらいます。

ーー【政府チーム】と【レジスタンスチーム】sideに分かれて、それぞれの目線から進んでいく今作、2パターン上演することについて、難しさや期待しているところはありますでしょうか?

同時に創作していくことは作業量的に苦労も多いですが、原作が双方の視点で描かれている作品なので、特別難しいことはないですね。キャストはすごく大変だと思います。2パターンにキャスト全員が出演するので、台詞や段取りがゴチャゴチャになるわけで、本番期間中に次の回どっちだっけ!?と混乱するのは間違いないと思います。

期待しているのは、「共感“を”楽しんでもらう」ことです。

物語を見る上で、「共感して楽しむ」ことはよくあると思います。政府チームを見ていたら戦争も必要なんじゃないかと思えてしまったり、レジスタンスチームを見ていたらやっぱり戦争はよくないって思えたり。それは、テーマに対して向き合う登場人物たちの生きた言葉に影響されるからですよね。

だから、1つの出来事を2つの目線から見ることで観客それぞれが持つ正しさが揺らぐでしょうし、「共感」がどれほど曖昧で危険なものかを感じることも出来ると思います。
自分の中の「共感」という感覚そのものに向き合って楽しんでもらいたいです。

ーーもし実際ご自身が、この登場人物と同じ状況に置かれた場合、どちらのチームが良いですか?その理由もあればお聞かせください。

やっぱり戦争反対を掲げるレジスタンスチームがいいですね。それは、このゲームにおいて戦争をさせない方が実は難しいんじゃないかと感じるからです。

原作を読んで気づいたのは、戦争を始める為の大義っていくらでも作れちゃうってこと。それは今の世の中を見ていても感じます。悲惨で不幸な未来があると知識としては持っているけど、戦争を経験してない僕らは、国を守る為に必要と熱弁されたら「え、そうなの……?」と思ってしまうかもしれない。

例えば、好きな人がいるなら告白した方がいい、みたいな理論あるじゃないですか。気持ちを伝えて玉砕した方が立派で、気持ちを押し殺すのは逃げてるみたいな思想。告白しない方がいいよ、って助言するの難しいんですよね。本人を否定するみたいで。

戦争からだいぶ規模の小さい例え話になっちゃいましたけど、情報戦で大事なのはメリットの提示だと思うんです。戦争しないことのメリットを具体的に伝えていくことは難しいことだと感じるので、レジスタンスチームで挑戦したいです。

ーー今、この作品を上演することについて、いかがでしょうか?

あまりにもタイムリーな題材なので、正直ビビっています。だからこそ尚更誠実に創作しなければと思っています。ただ、今作は戦争の良い悪いを語りたいものではありません。目立つテーマとしては「戦争の賛否」「情報操作」がありますが、日常生活におけるコミュニティや敵意を考えられる作品だと思っています。

誰もが信じたい人の言葉を信じて生きていて、自分に都合の悪い人を敵視する。現代社会において重要なテーマが詰まっていて、今上演するのにピッタリな作品に思います。

ーー春陽さんが主宰を務める劇団5454の主なコンセプトは、<心理的な物語=サイコロジカルフィクション>ですが、今作でも【国民に対して宣伝を使った情報戦】がお話の要になってくるかと思います。心理を掘り上げた作品について、どのような想いがありますか?

「心理的な物語(サイコロジカルフィクション)」という言葉を使っていますが、簡単に言えば人間ドラマです。人間ドラマにおいて、僕が一番重要だと考えているのが、登場人物たちの思考がぶつかり合って変化していくことです。

今作の【国民に対して宣伝を使った情報戦】というのは、一見【国民=観客】に思えますが、【国民=就活生(登場人物)】のように感じます。
登場人物それぞれが持ってる思考が、物語の中で次々出させる情報によって振り回され、仲間たちとぶつかり合って成長する人間ドラマです。

そんな過程を観客にも体感してもらって、劇場を出た時に新しい思考や目線を持ってもらいたいと思っています。

ーー今作の見どころは?

物語の見どころとしては、「戦争の賛否」という題材が、登場人物それぞれの全く違う思考によって、多角的に掘り下げられていく思考実験的な面白さです。その魅力を最大限に生かせるような演出面にもご期待いただきたいです。

あとは、普段エンタメ性の高い作品に出演されている俳優たちの、閉鎖的な空間設定で行われるストイックな会話劇も間違いなく見どころになります。

ーー公演を心待ちにしている皆さんへ

インタビューをお読みくださりありがとうございます。
『プロパガンダゲーム』で扱うテーマは決して軽いものではありません。だからといって、戦争について考えて欲しいとか、皆さんにとって平和とは何かとか、そんな問いを詰めるような作品ではありません。

就活中の普通の学生たちの葛藤を楽しんでいただき、劇場を出た後の皆様の日常に新しい気づきが生まれる作品になると思っています。
劇場で心よりお待ちしております。

プロフィール

春陽 漁介(しゅんよう りょうすけ)

日本大学芸術学部出身。イキウメ前川知大氏に師事し劇作を学ぶ。
劇団5454の全作品の脚本と演出を担当。外部の活動では、アミューズ製作舞台『青春cm2』など多数の商業演劇他、映画やアプリゲーム、WebCMの脚本、またEvery Little Thingsの20周年アルバム豪華版にて、持田香織の歌詞を物語にする「リリックストーリーブック」を執筆するなど、舞台に限らない。
その他、芸能事務所の俳優養成所や高校演劇部の講師、俳優業やラジオ構成作家、FMヨコハマのラジオDJなど多岐にわたり活動中。

舞台「プロパガンダゲーム」

■公演期間
2022年8月11日 (木・祝) ~2022年8月28日 (日)

■会場
サンモールスタジオ

■出演
〈side:Government〉
松島勇之介 、松田昇大、宮崎理奈、及川詩乃
〈side:Resistance〉
白又敦 、白柏寿大、出口亜梨沙 、高嶋菜七
窪田道聡 / 榊木並 / 森島縁

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